372.それは判ってるけど、だから?
そうか。
映画館に行ったり有料放送を契約するのにはお金がかかる。
でもテレビはいくら観ても無料だ。
実際には日本放送協会がお金を取っていると聞いたことがあるけど、そういうのは全部シンがやってくれているのでレイナはよく知らない。
「それで私にも見覚えがあったと」
「でしょうね。
レイナ様、テレビでアニメが放送されると観ますよね」
見透かされていた。
とはいえ、あまりにも放映されているアニメが多すぎて、レイナも大部分はスルーしている。
特に毎週とか毎日とかテレビで放映されているアニメはほとんど観ない。
むしろ単発で放映される2時間くらいのアニメは逃さない。
後腐れがないし、一時期のことだ。
つまらなかったらすぐに切ってしまうけど。
ちなみにテレビで放映されるアニメも有料放送に出てくるので、観たくなったらそっちを一気観する。
「大体判った。
でもこれ、そんなにつまらないというほどではなかったと思うけど」
スマホに映っているアニメはそれなりに面白かった気がする。
「爆死したからといってつまらなかったとかくだらないとかとは限らないたみたいですよ」
レスリーが教えてくれた。
「この動画でも言ってますが内容や演出が変だとか絵やストーリーが駄目だとか、アニメ自体の問題の他でも公開タイミングや時節、掛かった映画館が少なかったり宣伝が下手だったりなかったりといった理由でも爆死することがあるそうです。
むしろ何でこれがウケないんだ、と思うような良いアニメが話題にもならな事も多いとか」
そうなのか。
まあ、確かにそういう話はアニメに限らないと聞いた事はある。
逆に何でそんなつまらないものが売れるのかとか、どうしてこれは駄目なのかとか、人間社会には不思議なことがたくさんあるらしい。
人類の心の深淵というか闇に迫るような世界には近寄りたくない。
レイナは聖女だが信心深いわけでもないからだ。
どっちかというと享楽的なタイプで。
まあいい。
「ええと、何の話だったっけ」
「爆死したアニメの話です」
「それは判ってるけど、だから?」
レスリーが詰まった。
もともとあまり深くものを考えてなかったらしい。
アルバートをチラ見するけど運転に集中していて反応がない。
いや、敢えて無視しているんだろうな。
よく判らないのかもしれない。
これでアルバートがアニメヲタクだったりしたら救われない。
カレー好きというだけでもあんまりなのに。
レスリーが黙ってしまったのでレイナは窓の外を眺めることにした。
車は順調に走っている。
さっきまで海が見えていたのに今は山の中だ。
「どこに向かってるの?」
つい聞いてしまった。
「心配するな。
道が内陸を通っているだけだ」
アルバートが答えてくれた。
レイナたちの会話を聞いてはいたらしい。
馬鹿馬鹿しくて無視していただけか。
「ならいいけど」
「暇なら寝てていいぞ。
まだ1時間くらいかかりそうだ」
そうでしょうね。
レイナはスマホで最初の目的地の紹介サイトを観てみた。
モン・サン・ミッシェルだったっけ。
海の上のお城ってかっこいいけど、実際には修道院だとか。
そういえばアニメで観たことがないような気がする。
こんなにかっこいいのに。
検索してみたら出てきた。
ズバリそこじゃないけど、モデルになったアニメはあるみたい。
「ねえレスリー」
「何です?」
「モン・サン・ミッシェルって○ピュタのモデルなんだって」




