361.荷物は後ろだ
カウンターの前ではアルバートが受付の人と話していた。
「早いな」
「レイナ様ですから」
何のことやら。
「それじゃ行くか」
手ぶらで歩き出すアルバート。
「荷物は?」
「もう積んである」
そうか、アルバートって元軍人だった。
こういうことに慣れていそう。
ホールから出るのかと思ったら逆に奥の方に進んでエレベーターへ。
「駐車場は地下だ」
そうなの。
エレベーターから降りると割合狭い場所だった。
「こっちだ」
地下通路らしい。
廊下をかなり歩くと唐突に広い場所に出た。
あちこちに色々な車が停めてある。
柱が多くて天井が低い。
「ホテルの地下駐車場みたいね」
「その機能もあるからな。
地上に作ってもいいんだが、色々とな。
この上はテニスコートかなんかだったはずだ」
なるほど。
土地の有効利用という奴か。
アルバートはしばらく進んでからポケットから何かを取りだした。
途端に前方の車のライトがパッシングする。
リモートキーか。
車はかなり大きなワゴン車だった。
シンの会社のものに似ている。
機能を追求するとそうなってしまうのか。
「荷物は後ろだ」
アルバートの指示で後部座席に乗り込む。
席は広かった。
レイナ達がシートベルトをつけるのを確認してからアルバートは車を動かした。
運転が上手いな。
色々な車の周りをぐるぐる回ってからスロープを上ると暗かった。
もう夜中なのよね。
「これからどうするの?」
聞いてみたらアルバートがそっけなく言った。
「港までこの車で行く。
しばらくかかるから寝ていてもいいぞ」
「まだ眠くない」
「ならご自由に」
何か不機嫌?
「どうもレイナ様のお世話をグロリア様に押しつけられたみたいです」
レスリーがこっそり囁いた。
「私はアルバートの助手です」
「私の侍女じゃないの?」
「兼任です」
公的な役職とは違うらしい。
もともと侍女ってレスリーの自称だもんね。
「そんなに嫌かな」
アルバートに嫌われているような気配はなかったんだけど。
「レイナ様のお世話が嫌だというよりは組織の決定の場から外されたことが不満みたいで」
なるほど。
今までの様子からするとアルバートは歳の割には組織内での立場が結構高い。
グロリア様は最高幹部なんだろうけど、その直属くらい?
でも今回はレイナみたいなある意味どうでもいい奴のお守りとして放り出されてしまったと。
「悪いことしたかな」
レイナが観光したいとか言い出さなければこんなことにはなっていないわけで。
「そんなことないです。
後の事を考えたらレイナ様の側に侍るってこれ以上ない出世の道ですよ」
レスリーは呑気だなあ。
まあいいか。
アルバートはかなり車を飛ばしていたが運転は静かだった。
外は暗いしやることもない。
こないだも走ってる車で寝たもんね。
これからまだ色々あるみたいだし、ならばいいか。
レイナは眠った。




