358.それを一人でやれるの?
荷物を詰めたキャリーケースをドアの横に置いて、それからすることもないのでテレビを観る。
配信を探してみたらオカルト系のコンテンツがたくさんあった。
ていうか多すぎない?
UFOとか謎の古代文明の遺跡だとか、世界の7不思議とか三大がっかりとか。
地球って本当に面白い。
見始めたらハマッてしまった。
こんな番組もテレビでやっているんだ。
でも何かあまりにもヲタク的な構成なので調べたら、そういうコンテンツはテレビのプログラムじゃなくて配信だった。
YouTuberというものらしい。
調べたけどよく判らないのでレスリーに電話して聞いてみる。
いきなり聞かれてもレスリーは慌てなかった。
ていうか仕事してるんじゃないの?
『レイナ様のご用が最優先ですから……って、それはいいとして質問の答えですが。
インターネットで個人的に好きな動画を発表出来るんですよ』
レスリーの話によれば、技術の発達で今や個人でも動画を撮って編集して効果音や解説などもつけられるようになったそうだ。
そういうコンテンツを発信する場があって、好きな人は勝手に発信しているらしい。
「趣味ってこと?」
『実益にもなります。
視聴者が多くなるとお金が入るんです。
トップクラスは大金持ちですよ』
へー。
そんな商売もあるのか。
「つまり個人でテレビ局をやっていると」
『局というよりはチャンネルですね。
同時に複数本出来ない事もありませんが、大抵の人は一人か二人でやっているので余裕がないみたいで』
それはそうだろう。
レイナが観た限りでは、そういった動画はただ単に撮影しているだけじゃなくて結構編集が入っている。
テレビの番組ってそれこそ何十人、いや下手すると3桁の専門家が関わっていると聞いた。
「それを一人でやれるの?」
『スマホってもの凄く高性能ですからね。
カメラで記憶媒体で編集装置で記録装置で発信装置でもあります。
もちろん受信も可能です』
つまりスマホが一台あればテレビのチャンネルを作ってしまえると。
「知らなかった」
『レイナ様は撮られる側ですから、そんなことは知らないでいいです。
ていうかレイナ様なら黙って立っているだけの映像でも登録者が殺到しますよ。
たちまち高額納税者です。
チャンネル開設の際は是非』
余計なお世話だ。
面倒になってスマホを切る。
本来の目的を忘れてはいけない。
ていうか別にオカルトを見たいわけじゃなくて。
調べていく内にオカルト配信にも色々あることが判った。
未確認飛行物体にもそそられるが、やはり謎の古代遺跡が良い。
とはいえ、そういったコンテンツは比較的少なかった。
多いのは「廃墟に行って見ました」とか「話題の心霊スポットに突撃」とかいうドシロウトらしい若者が暗くて汚い崩れ掛けの建物や夜中のお墓などをウロウロするたぐいの動画だ。
多いのは多分、あまり手間を掛けずに作れるからだろうな。
何せやってることは単にカメラを持った人が「立ち入り禁止」と書いてある看板を無視して敷地や建物に入っていって歩き回るだけだ。
それでも中にはレイナですらぞっとするような配信もあった。
いや目的をはき違えるな。
別に私は心霊スポットに行きたいわけではなく。
ていうかこういうのって私が選ばなくてもいいのでは。
アルバートやレスリーは詳しくなさそうだけど、誰か知っている人に聞けばいい。
どうせ最初の目的地は大体決まっているんだから、次に行くところは観光しながら決めるか。
面倒な事は放り出すレイナだった。
それからは行きたい場所を選ぶんじゃなくて興味を引く物を観た。
番組は本当に何でもあった。
もの凄い断崖絶壁とかどこまでも続く海岸とか、観光に行きたくなるような風景を延々と映し続けているものもあるし、不気味なお城が次々に出てくるだけというものもある。
かと思うと複雑な交差のハイウェイとか橋とか、現代の人間が作った巨大建造物もあった。
科学って凄い。
マジで聖力なんかない方が人類にとっては有益かもしれない。




