355.侍女を置いてけぼりにして動かないで下さい
『それで?』
「ええと、何か放浪する話があるでしょう。
あっちこっち旅したり」
『ああ、家なき子とか』
だったっけ。
色々ありすぎてごちゃ混ぜになっているけど、ああいう話の舞台は別に有名な観光地でもないし、足跡を車で辿ったりするのは面白そうだ。
穏やかすぎて退屈しそうだけど。
でも観光旅行だもんね。
『なるほど。
いいかもしれませんね』
レスリーが頷いたようだった。
『もちろんアニメそのものじゃないし、そもそも観光地でも聖地でもないですけど、雰囲気は味わえそうです。
それでいいですか?』
「とりあえずは」
よく考えたら、飽きたらまた別の事をすればいいだけだ。
『判りました。
その方向で予定を立てます』
やはりレスリーってマネージャーなんじゃないの?
別にいいけど。
とりあえず人に投げて気が楽になったレイナはテレビをつけてアーカイヴサイトに繋いだ。
日本のアニメも観られるはず。
探していくとあった。
世界でも有名なシリーズらしい。
というよりは古いアニメだから契約料が安くてメニューに載せているだけかも。
コンテンツカタログを呼び出してみるとずらっと出てきた。
何十個もある。
こんなに凄かったとは。
しかも題名が英語だ(泣)。
ええと。
Anne of Green Gablesとかはいい。
Homeless ChildやHomeless Girlって違うでしょう!
それだと何かストリートギャングや半グレとかに見えてしまう。
スマホで検索してみたら、原作はフランスの児童作家の作品らしかった。
Sans familleってフランス語か。
孤児の男の子が旅芸人に引き取られてあっちこっちを旅しながら成長していく物語らしい。
当然舞台はフランスか。
ちょうどいい。
似たような話にEn familleがあって、こっちはインドからフランスに向かっていた母娘が途中で母親が死んで、孤児になった娘が一人で父親の故郷を目指すという物語だという。
ずいぶん逞しいのね。
そんなことレイナに出来るかどうか。
ちょっと考えてみたけど、レイナの場合ミルガンテの大聖殿を出ても実家? を目指すことなんかあり得ない。
そもそも実家がどこの何という家なのか不明だ。
まあいい。
レイナはレスリーに気になったいくつかのアニメをメッセージしてテレビに戻った。
昼食は同じ場所だった。
さらに豪華になったランチビッフェがレイナを迎えてくれた。
今度はレスリーに頼らず自力でたどり着いたレイナだったが誰も居ないので勝手に食べているとレスリーが来た。
「レイナ様。
呼んで下さいよ」
「メッセージが入っていたから勝手に行けといわれたのかと」
「侍女を置いてけぼりにして動かないで下さい」
レイナの向かい側に坐りながらプンプン怒るレスリー。
侍女ならメッセージなんか送らないで直接来るべきでは。
と思ったけど面倒くさいので無視する。
レスリーは担いできたバッグを隣の席に置いてからビッフェに突撃した。
そっち優先かよ。
しばらくは二人とも無言で食べていたが、レイナがやっと満足してコーヒーを取ってくるとレスリーが言った。
「結論から申し上げますと予定が決まりました」
「そうなの」
「はい。
出発は夕食後です」
さいですか。
みんな仕事が早いなあ。




