353.どこに行くか決めました?
今更気取ることもないのでジーンズにセーター、スニーカーという普段着で部屋を出る。
食堂にはレスリーしかいなかった。
既にテーブルの上にお皿が並んでいる。
「先に頂いてます」
「別にいいけど」
侍女や秘書じゃない気がする。
主人に対する態度じゃない。
マネジャー?
まあいい。
レスリーの向かいの席にスマホを置いて壁際に行くとビッフェの食べ物がずらっと並んでいた。
とても一人や二人用とは思えない。
「あ、それって私達の後はこの施設のスタッフ用になるそうなので」
なるほど。
これだけの施設なんだから従業員がいないはずないものね。
お盆に皿を並べてからミニステーキや魚のフライやらポテトサラダやらを盛り付ける。
一度テーブルに戻って獲物を置いてからオレンジジュースを持って戻るとレスリーが言った。
「コーヒーは自分で煎れるみたいです。
あとミルクなんかは冷蔵庫にあります。
アイスも」
それは嬉しい。
レスリーって意外と言っては何だけど役には立つのよね。
二人で黙々と食べている間も食堂には誰も来なかった。
「アルバートさんは?」
「知りません。
忙しいのでは」
関心なさそう。
いい性格している。
まあ朝食抜きということもないだろうから、どこかで食べているんだろうな。
レスリーが食べ終わって、お盆に空になったお皿を積んでカウンターの方に持っていった。
なるほど、そういう方式か。
コーヒーカップを持って戻って来たレスリーが席について一口。
美味しそう。
「ところでレイナ様」
「何?」
「どこに行くか決めました?」
え?
「それってみんなで検討するのでは」
「レイナ様が決めるんですよ。
私達は従います」
そうなの。
「でも、どこに行くのか判らないと移動手段も決まらないのでは」
「アルバートが手配してますよ。
欧州内だったらどこでも行けるそうです。
組織のプライベートジェットなら一度に飛べるのは三千キロ以内ですが、途中で給油すれば東欧もカバー出来ると」
さいですか。
「島に行きたいとか言ったら?」
「ギリシャやシチリアとかですか?
ちょっと時間かかりますけどヨットかクルーザーで」
いかん。
組織を舐めていた。
お金持ちどころじゃないのでは。
富豪?
個人で所有しているわけじゃないとは思うけど、グロリア様くらいになると船や飛行機を自由に使えるんだろうな。
タイロン氏やアルバートさんは無理かも。
だんだん力関係が見えてきたような。
「というわけで決めて下さい」
「そう言われてもね」
「ピンポイントじゃなくてもいいです。
どこら辺とかでも」
なるほど。
だったらフランスのヴェルサイユとかだけど、出来れば有名な観光地は避けてくれと言われてしまっている。
確かに人が大勢集まりそうな所は拙い。
しかも、とレイナは思った。
レスリーの話では移動手段は何でもありそう。
プライベートジェット機とかヨットとか車とか、つまり飛行機の定期航路や鉄道が通っていないような場所にも直接行けるということよね?
だったら観光ツアーでも行けそうな場所をわざわざ選ぶ必要ってなくない?
うーん。
スマホを弄りつつも順調に食べ続けるレイナだった。




