351.外国は駄目?
シンってば組織を支配するというか配下にする気満々だ。
よくそんな面倒くさいことをする気になれると思う。
いや、レイナにも判ってはいる。
結局の所、それが一番面倒を避ける方法なのよね。
世間と自分の間に緩衝材を置くと。
面倒くさいことは全部グロリア様とかに丸投げする気だ。
「ならそうする」
『うん。
でも無理はしなくてもいいからね。
僕の方も情報が入り次第知らせる。
後、僕から直接アルバートさんに連絡することもあると思う』
そんなことは気にしなくてもいいのに。
レイナはシンをおそらく他の誰よりも信頼しているけど、シンからみたらレイナも駒のひとつに過ぎないことも判っている。
レイナは成人年齢に達したと言ってもまだ子供だし、未だにシンに頼りっきりだ。
こんな危なっかしい女をパートナーにするほどシンは甘くない。
レイナとしてもシンの指示で動く方が楽だし。
「それじゃ」
『何かあったら連絡して。
いつでもいいから』
ありがたや。
テーブルに戻るとレスリーとアルバートがスマホを弄りながら議論していた。
「あ、レイナ様。
明日からのスケジュールを検討していたところです」
「基本は観光でいいな?
何かやりたいことがあるなら優先するが」
そう言われてもね。
この季節に海水浴とかスキーとかは無理だろうし。
そもそもそんな目立つことはやらせて貰えるとは思えない。
ちょっと思いついて言ってみた。
「外国は駄目?」
前にヴェルサイユに行きたいと言ったら許可された気がするけど。
「……ふむ」
アルバートが黙る。
「ちょっと待ってくれ」
席を外してトイレに向かいながらスマホを取り出すアルバート。
「上司」に相談か。
「なるほど。
さすがはレイナ様です」
レスリーが胸の前で両手の平を組んで言った。
「突飛にして大胆。
常に意表をつく」
それって褒め言葉なの?
「襲ってくるんだったら逃げた方がいいと思って」
いちいち潰すのは面倒だ。
さっきシンからなるべく殺らないようにと言われたし。
手加減できるかどうか判らないものね。
「はい。
レイナ様が目の前にいたら突進してきそうですものね。
敵も味方も」
見分けがつかないのが面倒くさい。
「あと、英国を離れたらアウェーですから敵は組織外だけになりますよ。
対外的には協力するので」
なるほど。
いい案に思えてきた。
アルバートがスマホを仕舞いながら戻って来た。
「許可が出た。
好きにしていいそうだ。
そのための費用や手段は組織が提供する」
やった。
無料で観光し放題だ!
「どこでもいいの?」
「常識内でな。
さすがに南米とか北極とか言い出したら止められるだろうが」
「レイナ様を止められるとでも?」
不敵すぎるレスリーだった。
「いや私も別に無理にとは」
「だな。
欧州に留めてくれるとありがたい。
それにみんなもお嬢が目の前にいない方が落ち着くと思う」
「なら決まりね」
よし。
どこに行こうかなとウキウキのレイナだった。




