350.そんな話はもういいから
決まっているらしい。
「どうするの?」
「内部対立は許されているというか止められないが、外敵に対しては無条件で協力する。
外患誘致などあり得ん」
さようで。
多分始祖とやらの基本方針なんだろう。
内部対立というか派閥が許されているのは、タイロン氏たちの組織の成り立ちに関係しているからだ。
そもそも中央集権組織じゃない。
始祖は独裁者というよりは調整者、君臨する人だったんだろう。
アメリカ大統領よりは日本の天皇陛下や英国の国王陛下に近い。
俺についてこいとかは言わない。
配下を指導や示唆はしても支配や命令はしないし権利がない。
「グロリアやタイロンが根回ししているんだが」
アルバートがため息をついた。
「何せ組織はでかくなりすぎた。
末端まではなかなか情報が伝わらなかったり、変に歪んで伝わったりしていてな。
そもそも組織の方針に反対している連中もいるし」
「方針って……ああ、王や貴族にはならないとか」
「そうだ。
国際社会に出て行くと、どうしてもある程度の権威や支配力が必要になる。
それはすなわち王や貴族への道だ」
そうなのか。
「でももう封建制って否定されているのでは」
「昔の貴族じゃなくてな。
例えばアメリカには未だに『王様』がいるとされている」
アルバートが言うには、ある業界で絶大な影響力を行使できるほどの存在にまでのし上がると「王」と呼ばれるそうだ。
「昔は『鉄道王』とか『新聞王』とか『鉄鋼王』とかがゴロゴロいた。
今はそこまで一極集中はしていないが」
「確かに」
レスリーが頷いた。
「21世紀はデジタルとネットですね。
確かに王様はいます」
レイナもすぐに思い当たったくらいに有名な人はいる。
この組織にもそんな人が。
「いや、組織はグループ指導制だから突出して有名な家や個人はない。
昔の王様はむしろ一族だからな。
個人になったのは21世紀になってからだ」
この時点でレイナは既に飽きていた。
元々あまり面倒くさいことは考えたくない性質なのだ。
レイナの性格は容姿とかけ離れていて、むしろがさつで話し合いよりは暴力で解決しようとするタイプである。
「そんな話はもういいから」
「そうだな。
すまん。
ということでしばらくは待機で」
「判った。
シンに聞いてみる」
アルバートはまだ信頼されていない。
情けなさそうな表情で両手を広げるアルバート。
レスリーは平然としていた。
確かにバラバラね。
レイナはお花畑に行くついでにシンに連絡した。
まずはメッセージで電話していいか聞いたらすぐに電話がかかってきた。
『何?』
単刀直入というか」
「今アルバートさんと話したんだけど」
ドンパチの話をする。
シンはレイナが襲われた事を含めて全部知っていた。
『グロリア様の部下の人から報告は受けているよ。
レイナにしては穏便にやったらしいじゃない』
あれで穏便なのか。
シンって日本のサラリーマンだったはずでは。
いや、その後でミルガンテの神官見習いやっていたんだった。
それは過激にもなるか。
「まだ人を殺したら拙いでしょう」
『まだというか、出来れば組織内部の人はなるべく殺らないようにして。
不必要に感情的な敵を作りたくないから』
やっぱり。




