348.よく知りませんが色々とあるみたいです
泊まりだと知らなかったのはレイナだけだったらしい。
アルバートが席に着くとすぐに食事が運ばれてきた。
「メニューはお任せだが食えないものとかあるか?」
「ない。
何でも美味しい」
「それは良かった」
食事を出す前に聞けよ!
プリプリしながら食べ始めたレイナだったがすぐに忘れた。
凄く美味しい。
なぜかというとレイナ好みのステーキだった。
ミルガンテで節制を強いられていた記憶が抜けないレイナは基本的にガッツリな食事を好む。
特に大きな肉の塊には目がない。
肉さえ出しておけばレイナは満足する。
どうやらそんなレイナの性癖を看破した人がいたようだ。
レイナが夢中でパクついている間、アルバートとレスリーも静かに食事していた。
二人とも食事中にしゃべりまくるタイプではないし、それぞれ何か考えているようだ。
レイナには関係ないからいいけど。
メニューは欧米式だった。
ステーキは惣菜というよりは主食で、あとはスープにサラダやポテトにパンといったところだ。
魚はなかった。
ステーキを平らげてからお代わりを頼もうかと思ったけど止めた。
聖力でどうにでもなるので際限なく食べ続けられるけど、贅沢もやり過ぎると毒だ。
この場合はレイナが飽きてしまうだけだが。
ふと見るとアルバートは健啖ぶりを発揮していたし、レイリーも黙々と食べ続けていてお皿が空になっていた。
日本ではレスリーって小食という設定だったはずなのに。
色々な意味で猫を被っていたらしい。
考えてみたら組織の命令で日本の夜間中学に転入してきてレイナとお友達になれるような奴がまともなわけはなかった。
「何でしょうか?」
レスリーがレイナの視線に反応する。
「いや。
何でもない」
「そうですか」
肝が据わっているなあ。
いきなり襲われたのにまったく気にしていないみたい。
アルバートが「ちょっと失礼」と言って席を立った。
スマホを取り出しながら歩いて行く。
連絡が来たのか。
「何かあったのかな」
「よく知りませんが色々とあるみたいです」
そうなんだろうなあ。
つい忘れがちだけど、今のレイナたちは逃避行じゃなくて避難中だ。
つまりどこかでドンパチやっているわけか。
シンは大丈夫かな。
電話しようと思ったけどスマホがない。
イカンイカン。
現代人として必須のツールを置き忘れるとは。
まあいいけど。
空になったお皿が下げられてデザートが出てきた。
チョコレートアイスに紅茶か。
これはレイナやレスリーに配慮した奴だな。
アルバートの好みとか?
そのアルバートがスマホを胸ポケットに仕舞いながら戻って来た。
「何かあったの?」
「いや。
定期連絡だ」
言うつもりはないと。
ならば。
「今日はもう終わり?」
「そうだな。
ここは観光地だから、あんまりナイトライフは充実していない。
どうしてもというのならナイトクラブくらいならありそうだが」
「いらない」
レイナは設定上は成人しているのでお酒は飲んでもいいはずだけど、実のところ何が美味しいのかさっぱりだった。
何せレイナは酔えない。
というよりは聖力で酔わないように訓練されている。
これはミルガンテ大聖殿の聖女教育の要のようなものだ。
実を言えば大聖殿全体がそうなんだけど。




