反撃の狼煙
リゾート型特大医療施設―…通称「白亜の巨塔」。
わずか数年で、その口コミから国内外の王侯貴族がこぞってその医療を受けにくる「患者の最後の砦」となっていた。
かつての荒地は、今や世界の富豪の「富」と「権力」の象徴とすら言える「世界で最も輝かしい施設」となっていた。
ティノの神がかった医術と私の「現代日本の知識」の融合。
それはこの世界では「不治の病」と恐れられる難病の数々すら、寛解に向かわせる。
命を救われた王侯貴族たちは、こぞってこのリゾート型特大医療施設に支援金を送ってくれるので運営費など心配要らない…むしろ余ったお金をさらなる医術の発展につぎ込むほどである。
今やユニヴェール辺境伯家の財力と権力は、我が実家の公爵家や元婚約者の侯爵家など足元にも及ばない、雲の上の存在となっている。
そんなある日。
どうしてもと妹が言うので、両親と妹とその今の婚約者を視察に招くことになった。
相変わらず純真で、わがままな子だ。
そして、それすら許される子。
とりあえず、普段は王族しか入れない「特別応接室」にて四人を出迎える。
「ベアトリス…ここを本当に貴女が…?」
母が特別応接室のその調度品を見て、完全に気圧されてしまっている。
「ええ。お父様とお母様からのお小遣いをつぎ込みましたの。ありがとう、お父様お母様」
ニコニコとそう告げれば、返ってくるのは引きつった笑み。
やはり、私は愛されてはいないようだ。
そんな中、今世も婚約者と幸せなはずの妹が言った。
「お姉様…いいなぁ。こんなに素敵でお金持ちな人に嫁げるなんて、ずるいです。私もここで暮らしたいなぁ」
妹の発言に妹の婚約者がギョッとするが、妹は意に介していないらしい。
正直私としても、前世ならはっ倒していた発言ではある。
だが推しの愛を勝ち得た私にとっては、今はもうどうでもいい。
だって私は愛されているという自信があるから。
取られるわけがないと、確信しているから。
「おや、その物言いは困りますね」
白衣を靡かせ部屋に入ってきたのはティノだ。
前はコンスタン様と呼んでいたが、今は心の中だけでなく大っぴらにティノと呼んでいい仲になっている。
ティノも私をベアと呼ぶ。
「私はベアを愛していますから」
「ちょっとティノ!家族の前でそんな」
「いいじゃないですか。本心ですから」
「もう…困るわ…」
「ふふ、それにしては頬が赤いですよ」
「もう!」
大人びた佇まい、甘い言葉。
その推しの姿に、私は胸が爆発しそうになる。
妹の婚約者は、ティノの威厳ある佇まいに気圧されて妹の陰に隠れた。
なんて小さい男なの。
ティノと比べてしまうと、どうしても見劣りしてしまう。
けれど本番はきっとここからなのだ。




