リゾート型特大医療施設
「リゾート型特大医療施設化企画」は見事閣下の承認を得た。
荒地は整備されて、建設予定地として次々に資材を運ばれて段々と形を造られていく。
これほど大規模な事業だ、本来ならユニヴェール家にとって財政を圧迫しかねない。
けれど、ユニヴェール辺境伯家から出る出費は一円たりともない。
数年前、記憶を取り戻し「こうする」と決めていた時から「このためだけに」実家である公爵家からのお小遣いを貯め続けていた。
今はそれを全額全ツッパしている。
つまり建設費や設備費は全額私持ちだ。
「ベアトリスさん、本当にこれだけのお金を貴女一人に賄わせていいのですか?」
ティノは建設費の領収書と睨めっこした後、私に恐々と尋ねる。
「はい、私が全て賄いますから心配なさらないで」
私はただ貯めた貯金を使っているだけ、痛手はない。
そもそもこの巨額なお小遣いは、愛のない両親が「これだけくれてやれば満足だろう」と愛の代わりに差し出したモノ。
それを推しへの愛に使って何が悪い。
「でもこれは、公爵家から貴女に与えられた…言わば将来への保証でしょう?それを私のために使ってしまうなんて…」
「あら、コンスタン様のために使うとはつまり、国のため世界のため医学会のため使うということでしょう?それこそ私の将来のためですわ」
「ベアトリスさん…」
「ただ、その代わり…」
私は悪戯っぽく笑ってからティノに告げる。
「これから世界中から集める医師や薬師の選抜、施設の運営費などに関しては…ごめんなさい、コンスタン様にお願いしますわ。私は医療の知識がありませんから」
ごめんね、と手を合わせて見せればティノは呆気にとられたような表情をして…そして、愛おしいものを見るような優しい瞳で言った。
「なるほど、それくらいお安い御用です。むしろ、ここまでよく尽くしてくれました」
合わせていた両手をティノの手でぎゅっと包み込まれる。
その指には日頃から薬を調合する彼の努力の証のタコが出来ていて、推しへの愛おしさがカンストしてしまう。
「資金の心配をせずに、医療に打ち込めるなんて…医師として、これほどの幸福はありません。ありがとう、貴女の信頼と献身に絶対応えてみせます。絶対、このプロジェクトを成功させますからね」
その瞳に灯るのは絶対の意志。
私への情熱と、深い信頼の炎。
推し活のつもりだったが、結果的に推しからの愛を勝ち得てしまったらしい。
思わぬ幸福に私は思わず、はしたなくもティノに抱きついてしまった。
ティノは嫌がるそぶりなく、私を受け止めてくれた。




