直談判
「お父様、お母様」
私にそう呼び止められた両親は、心底嫌そうな顔をした。
「なに?何か用?」
「ええ、我が家のしきたりについて」
私の言葉に不思議そうな顔をする両親。
我が家のしきたり…長子に家を継がせる、というもの。
それがあるから、両親は嫌いな私にそれでも家を継がせるつもりでいる。
あの侯爵家の次男と私をくっつけて。
でも。
「私は家督を継ぐことは出来ません、どうぞお二人の愛する妹に継がせてください。侯爵家の次男との縁談は、どうか妹に。代わりに、妹に持ち上がっている縁談を私に。どうか、お願いします」
両親は顔を見合わせた。
この両親が私を嫌う理由は、私の顔。
かつて母を虐げた祖母にそっくりな私を毛嫌いしていたのだ。
両親それぞれの特徴を受け継いだ可愛い妹。
キツい祖母そっくりの私。
愛が妹に傾いたのは、私のせいではない。
それでも、もういいのだ。
両親は、可愛い妹に家督を継がせられることに喜んだ。
それぞれに来ていた縁談はトレードされる。
妹が「後継者」として正式に認められた。
この日を境に、姉妹間格差は解消された。
別に愛されたわけじゃない。
ただ、両親が私に興味を無くして虐げられなくなっただけ。
それだけで、今の私には十分。
両親からの悪意が無くなれば、まだ妹を虐めていなかった時点の今の私は寛大な心で妹を許せた。
「お姉様、一緒にたべよう!」
「ええ、ありがとう。貴女は本当に可愛いわ」
許せたからだろうか、可愛がってるからだろうか。
前世と違い妹は私に懐いた。
前世の婚約者は、今回は最初から「妹の婚約者」になれたからか私に冷たくもないしお行儀がいい。
誰も傷つかない。
誰もにとって理想的な形。
だけれど。
私は、多分この選択が「仕返し」になってしまうことを知っている。
だって、誰にも愛されない私が「一番幸せになる」のだから。
「お姉様、どうしたの?」
「え、なあに?可愛い子」
「なんだか、とっても楽しそう」
「ああ、みんなで幸せになれる未来が見えたからね」
「そうなの?」
「ええ。でも、私が一番幸せになってしまうわ」
「よかった!お姉様が幸せなら私も幸せよ!」
「なんて可愛い子なの!…ごめんなさいね、本当に」
「…え?お姉様が謝ることなんて何もないわ」
「今の貴女には、ね。本当に、悪かったとは思っているのよ」
「…お姉様、だーいすき!だからさっきみたいに笑って?」
「…ふふ、ええそうね。私も貴女が大好きよ。きっと、愛しているわ」
「きっとなの?」
「ええ、でも本心よ」




