476 タジタジです
約束の夕食の時間になると、優希達に連れられて、美沙も戻ってきた。
「美沙……っ」
母親が駆け寄りたそうにしながらも、そのまま立ち尽くす。すると、その両親達の方へと、優希達が背中を押した。
「ちゃんといわないと」
「しんぱいしてくれてたんだから」
「ニセモノじゃないんだから、こわくない!」
「っ……うん。えっと……お母さん、お父さん……ただいま」
「っ、お、お帰りなさいっ」
「お帰り、美沙っ」
やっと抱きしめ合って喜べたようだ。ただ、ぽつんと一人、槇が取り残されている。しかし、それも美沙が気付いて声をかけた。
「あ、おにいちゃん……?」
「……ああ……」
「そのかみがた……すずしい?」
「ああ……」
「なら、しょうがないよねっ」
「ああ」
どういう納得の仕方なのか、優希達の説得の仕方に問題があったのか分からないが、丸く収まったのなら良いのだろう。
周りは、良かったと涙ぐむ者も多い。
そんな中、優達は高耶の前に並んだ。
「お兄ちゃん。ちゃんとせつめいできたよ」
「にんむかんりょうです!」
「こんどはお兄さんも、おちゃかいにしょうたいしますね!」
「ああ……ありがとう」
「「「えへへ」」」
高耶が三人の頭を撫でてお礼を言えば、優希達は揃って嬉しそうに笑った。
そして、食事の用意されていくテーブルを見て目を輝かせた。
「うわ〜あ、長いつくえ!」
「エルさまのところにあったやつみたい!」
「あのおしろのねっ。きぞくのテーブル!」
「……」
「確かに、貴族のテーブルだな」
「うん。映画でみたことある」
俊哉と武雄がうんうんと頷く。
今回は大広間を使っている。美沙がまだ家族とだけのテーブルでは緊張するだろうとの配慮からだ。
白木一家は真ん中辺りに座ることになった。
「ミサちゃん。となりすわっていい?」
「あ、うんっ。ゆうきちゃんのとなりがいい」
すっかり優希に懐いたらしく、美沙は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、わたしは、反対側のミサちゃんのお兄さんのとなりかな。お兄さん、いいですか?」
そう言ったのは可奈だ。向かいの席に座ろうとしていた槇の隣りに向かう。
「ああ……いいのか? 怖くは……」
「はい。わたし、見た目より、なかみじゅうしなので」
「……そ、そうか……」
「はい」
槇が明らかに押されている。
「え〜、ならわたしも、はんたいがわにしようかな。お兄さんをはさんじゃおう」
「あ、いいね。きょうはお母さんたちいないし、ミサちゃんのお兄さんいいですか?」
「構わないが……」
「だいじょうぶですよ。わたしも、なかみだとおもってますから。もちろん、タカヤ先生みたいな、なかみも見た目もいいのがステキですけど」
「……そうだな……」
「あ、お兄さんは、ちょっと見た目がこわくなってますけど、ふくとかをととのえたら、かなりカッコよくなるとおもいます。あとは、おはだのお手入れはしてみるといいですよ」
「……そうか……わかった」
「お兄さんスナオなんですねっ。これはポイントたかいですっ。ミサちゃん、いいお兄さんだねっ」
「そう? かな?」
「「うんうん」」
「そっかあ」
「……」
槇が無心になろうとしている。やはり女の子パワーはすごい。
「やべえ。槇がおもろいことになってる」
「あの女の子達すごいよ……お母さんとか、ギャル?」
「元な。すげえ元気なお姉さん達だよ」
「なんかわかる……」
武雄も槇同様に押されそうだと、少し怯えていた。
「お兄ちゃんっ。お兄ちゃんはユウキのとなり! シュンヤお兄さんは、カナちゃんのとなりにする?」
「分かった」
「おっ。ユウキちゃん、俺のこと忘れてなかった!」
「シュンヤお兄さんみたいなうるさい人、わすれないよ?」
「うるさい人って言われた!?」
「確かにうるさいよね」
「武雄!?」
「あ、えっと、はじめまして? ユウキです」
武雄を見て、優希が小さく頭を下げる。
「え、あっ、うん。はじめまして。高耶や俊哉とは同じクラスだった武雄です。よろしく」
「よろしくおねがいします! じゃあ、お兄さんもシュンヤお兄さんのとなりで」
「ありがとう。そうするよ」
そうして、席が決まった。
料理はコース料理だ。
「ミサちゃん。こうやってもって。ナイフはこっち、フォークはこっちね」
「う、うん」
「なんこか小さくきってから、ナイフをおいて、こうやってフォークでたべるといいよ」
「これ……くらい? おいしそう……」
「うん。おいしそうだよね。ゆっくりでだいじょうぶ。たべおわったあいずが、こうやってナイフとフォークをならべておくんだけど、まだたべるってときは、こうしておけばいいの」
「つぎがきちゃうよ?」
「うん。でもあわてないでいいよ。ここは、大人の人のよりも、りょうをへらして、よういしてくれてるから、ぜんぶたべてもだいじょうぶだしね」
「へえ……」
優希が常に世話を焼いてくれるので、美沙も楽しそうだ。
「上手に食べるのね……」
「ありがとうございます。マナーのべんきょうもしてるので、しゅうになんどか、こういうコースりょうりをたべるんです」
「っ、すごいのね……」
「週に何度も……」
美沙の両親との会話も出来る優希に、向かい側に座る武雄と槇も唖然としている。
「……一年生……小学生……?」
「お嬢様だ……ホンモノのお嬢様だ」
「いやあ、見る度に優希ちゃんがホンモノになっていく。どんな大人になるの?」
「こっちも完璧なんだが……」
「「どうかしました?」」
「……いや……上手に食べるなと……」
「「ありがとうございます」」
「……うん……」
可奈と美由のお礼を言う時の微笑みも完璧だ。槇の方が緊張している。
「ちょっと、高耶。どんな教育してるの?」
「……やりたがるんだ。強制はしてない……」
「今時の子ってみんなそうなの? ちょっと分かんなくなってきた……」
色々と衝撃を受けたようだ。
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