475 小さなレディ
優希は、可奈と美由と共に、勉強部屋と言う小さな可愛らしい家で、統二を先生にして週明けのテスト勉強をしていたようだ。
そこに高耶が珍しく現れたものだから、弟妹達は喜んだ。
「お兄ちゃんっ! どうしたの!?」
「兄さん? 仕事は終わったんですか?」
統二は実の弟ではないが、兄と慕うならば弟だ。そう周りも納得している。
「終わったんだが……優希に頼みがあってな」
「わたしに?」
「ああ……よかったら可奈ちゃんや美由ちゃんも頼んでいいかな。神隠しって説明したよな?」
「うん! 『浦島太郎』!」
「タイムスリップ!」
「人間タイムカプセル!」
「「……」」
間違いない認識に、高耶と統二は目を丸くした。とりあえず、神隠しの説明の必要はなさそうだと判断しておく。
「あ、ああ……それでな? 助け出された子が、優希達の一つ下? の女の子なんだが、説明しても周りの違いに驚いてしまって、泣いてるんだけど……」
「お母さんやお父さんが年を取っちゃってるから?」
「なん年ねむってたの? 十年とかだと、やっぱりお母さんのおはだがちがうよね」
「お父さんとか、男の人って、一気にしらがになったりするってきいたよ? そっちの方が『浦島太郎』じょうたいだよね〜。ハゲてたらもっとイヤ〜」
「それはこわいよ」
「「「ね〜」」」
「「……」」
最近の子どもはどうなっているんだろうか。ちょっと不安になる。一年生はこれでいいのだろうか。
「ま、まあ、その……助けてあげてくれないかな。ここに連れてくるから」
「いいよ! ちゃんとせつめいしてあげる!」
「おともだちになりますね。おちゃかいしましょう」
「うんうん。まかせてください!」
「……お願いするよ……」
頼もし過ぎるレディ達だ。お茶会だと言って、キッチンに向かう可奈。片付けるのは美由。テーブルなどを出してくる優希。
統二も唖然としていた。
「兄さん……優希ちゃん達って、すごいですね……お茶会って……ケーキスタンド出て来ましたよ?」
「ああ……」
そこに現れたのは、メイドのエリーゼだった。
《あら。ご主人。お帰りなさい》
「エリーゼ?」
「リーゼ姉〜。ケーキ持ってきてくれた?」
《はいな。お嬢様方のご注文の、アフタヌーンティーセットです》
「「「すごぉい!!」」」
「「……」」
サンドイッチにスコーン、それと小さなサイズのケーキが幾つか。それをエリーゼがケーキスタンドに並べていく。
「お兄ちゃん! 早くよんできて! カサカサになっちゃう」
「紅茶もさめちゃいます」
「女子会になるので、男せいはごえんりょください」
「「……うん……」」
《ご主人。うちが居るさかい。安心してや》
「ああ……」
「あっ! 兄ちゃん! カセンちゃんとメノウちゃんもよんで!」
「……お皿が多いわけだ……分かった……」
そうして、果泉と瑪瑙も呼び、準備万端整える。
「おむかえにいくね」
「「よろしく〜」」
優希はお迎えにと言って付いてきた。お迎えは大事らしい。
自動操縦のカートに乗って、家族達と共に待つホテルの一つに向かう。女将達も来ている。
そこで、不安そうに両親に囲まれてロビーで待っていた少女に歩み寄った。
声をかけたのは、優希だ。
「はじめまして! ユウキです! おなまえは?」
「っ、ミサ……」
「ミサちゃんね! ユウキのいまのお母さん、ミサキっていうの! 一字ちがいだ!」
「っ……うん」
「ミサちゃん、大人の人たちからいろいろきいた?」
「うん……」
「でもよくわかんない?」
「……うん」
優希の明るい声に励まされるようにして、美沙はちゃんと答えていく。
「なら、わたしとわたしのおともだちがせつめいしてあげる! まずはわたしのおうちにいこう。おちゃかいのよういしたの。ケーキあるよ」
「ケーキ……」
「あ、アレルギーとかある? ミサちゃんのお母さん。ダメなたべものある?」
「え? あ、大丈夫よ」
「よかった。じゃあ、いこう。お兄ちゃん。ここまででいいからね? わたしたちでいけるから」
「分かった……困ったことがあったらエリーゼにな」
「うん。いこう! ミサちゃん!」
「っ、うん」
普通ならば、家族と離れるのが怖いはず。しかし、見た目に違和感しかない家族の方が怖いのだろう。
「夕方には一度みんなでここに来るんだぞ。夕飯はここで食べるからな」
「うん! いってきま〜す! はら、ミサちゃんも」
「あ、い、いってきます!」
「行ってらっしゃい」
いとも簡単に心を開かせた優希の力もあるだろうが、少し笑いながら優希と手を繋いで、外に飛び出して行った。
「美沙……っ」
「少し待ちましょう。大丈夫です。保護者も置いてきましたので」
「ありがとう……私たちだけでは、どうしたらいいのか……」
「いえ。本人が受け入れるしかありませんから。さあ、少しここでゆっくりしましょう。暗い顔ばかりでは、美沙さんも戸惑います。みなさんも待ってますよ」
「ああ……」
「そうですね……」
二人にも少し気持ちを変えてもらう必要がありそうだ。
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