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秘伝賜ります  作者: 紫南
474/480

474 混乱はしますから

やって来た怨霊は酷い数だった。


「なにこれ! こんな数聞いてない!」

「蓮次郎さん! もうすぐです!」

「だって、気持ち悪いよ!? 数も酷いし! もっと広い範囲確保するよ!」

「え? ありがとうございます」


戦う場所を広く取ってくれるらしい。有り難くお願いする。


「ほら! 修行の成果見せてね? 合同結界! 二十メートルまで広げちゃって! もう閉じるよ!」

「「「「「はい!」」」」」


強さを均等にして何人かで一つの結界を張る技術は、高耶から教わったものだ。教えてもらってから、蓮次郎も鍛錬を続けてきたらしい。


「高耶くん。一時間くらいが限度だからね?」

「そんなに時間は掛けませんよ。勇一、稽古の相手だ。三十分でけりをつける」

「はい! 当主に続け!!」

「「「「「おうっ!」」」」」


いつの間にか、充雪も来ていた。


《おい。高耶。将也も忘れずに呼んでやれよ》

「ああ、なるほど」


高耶は珀豪達だけでなく、父の将也も喚び出した。


《これは! 祭りか!?》

「父さん……好きにして良い」

《おう!》


高耶も参戦するが、勇一達一族の者達と将也達で十分そうだ。


「え? なに? 本当に普通に怨霊を殴るとか、秘伝の人たち、やっぱりおかしくない?」


実際に怨霊を殴り飛ばし、そのまま消す様を見て、蓮次郎達は引いていた。


「何で物理が通用するんや?」

「「「気合いです!」」」

「さよか……」


焔泉の問いかけに、明確に答えを知らない秘伝の者達は、笑顔で言い切った。焔泉も、確かな答えは期待していなかったはずだ。


「あれ……浄化できてる?」

「なんや、陽の気で弾け飛んで……浄化されとるなあ」

「術とか使ってないじゃん!」

「闘気術なんで、術ですよ」

「高耶くん出番なくない?」

「……ちょっと人呼び過ぎました」

「いやいや、怨霊の数からしたら圧倒的に少ないからね? ってか、親玉来た!!」


明らかにヤバそうなのが一体、ようやく近付いてきた。


「当主! お任せします!」

「おう……」


勇一達が、揃って『他は任せてください』という顔をする。なんだか見ている方が照れ臭くなる。


「高耶くん、がんばれ〜」


蓮次郎達はガッチリと自分たちを守って固まっていた。


この際だと、高耶は楽しむことにした。


そんな様子を、蓮次郎達は手を叩いて応援し、歓声を上げ、目一杯楽しんだのだ。


「何あれ! シュンって! 瞬間移動!?」

「空飛びましたよね!? やべえ、秘伝の御当主やべえ!」

「手刀でスパって! 手が光ってた!!」

「気功波みたいなの出た!! え!? 見間違い!? 今見えたよね!?」


始終、ヒーローショーでも見に来たような様子だった。


全ての戦闘が終わったのは、きっちり三十分後。片付けなどはここに残る者達に任せ、高耶は扉で旅館に帰ってきた。


「おっ! お帰り!」


俊哉が扉の前で、女将とお茶をしながら待っていた。他の駆けつけてくれた同じ境遇の家族達も、ヤキモキしながらすぐそこの談話室で待っているようだ。


「白木達は?」

「先ほどお嬢さんがお目覚めになりまして、軽いお食事を食べながらご説明しているようです」

「知らん俺が入ると緊張しそうだったし、俺もここで待機。なんか困ったことあったら槇が呼びに来るだろうからさ」


家族水入らずではないが、混乱するだろう妹さんに配慮した形だ。


「あら? 泣いていますわ」

「ほんとだ。あ、槇」

「あ、その……」

「泣いてるじゃん。説明はどうよ」

「俺が怖いらしくて……」

「その髪型が悪いんじゃね?」

「……」


俊哉は軽く言うが、分からなくもない。子ども時代の六年は変化がすごい。兄が完全に大人になっていれば、ただでさえ強面な部類に入る槇は、小学生の少女には怖いかもしれない。


それも、そんな人が兄だと言ってくるのだ。恐怖だろう。


「ん〜、優希ちゃん呼ぶ? 果泉ちゃんも」

「そうだな……多分、今瑶迦さんの所の勉強部屋にいる時間だ。そっちに連れて行くか」

「いいんじゃね? 不思議な現実知るにもあそこが良さそうだし。女将さん達も来る? あっちの家族の人たちも」

「「「「「え?」」」」」

「どちらに?」


心配そうに顔を出していた家族達も不思議そうに首を傾げる。これに、俊哉は得意げに答えた。


「魔女様の作った異世界だ!」

「「「「「…………え?」」」」」


不思議な存在も知って、免疫もついてきた人たちでも、意味不明だったようだ。






読んでくださりありがとうございます◎

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