474 混乱はしますから
やって来た怨霊は酷い数だった。
「なにこれ! こんな数聞いてない!」
「蓮次郎さん! もうすぐです!」
「だって、気持ち悪いよ!? 数も酷いし! もっと広い範囲確保するよ!」
「え? ありがとうございます」
戦う場所を広く取ってくれるらしい。有り難くお願いする。
「ほら! 修行の成果見せてね? 合同結界! 二十メートルまで広げちゃって! もう閉じるよ!」
「「「「「はい!」」」」」
強さを均等にして何人かで一つの結界を張る技術は、高耶から教わったものだ。教えてもらってから、蓮次郎も鍛錬を続けてきたらしい。
「高耶くん。一時間くらいが限度だからね?」
「そんなに時間は掛けませんよ。勇一、稽古の相手だ。三十分でけりをつける」
「はい! 当主に続け!!」
「「「「「おうっ!」」」」」
いつの間にか、充雪も来ていた。
《おい。高耶。将也も忘れずに呼んでやれよ》
「ああ、なるほど」
高耶は珀豪達だけでなく、父の将也も喚び出した。
《これは! 祭りか!?》
「父さん……好きにして良い」
《おう!》
高耶も参戦するが、勇一達一族の者達と将也達で十分そうだ。
「え? なに? 本当に普通に怨霊を殴るとか、秘伝の人たち、やっぱりおかしくない?」
実際に怨霊を殴り飛ばし、そのまま消す様を見て、蓮次郎達は引いていた。
「何で物理が通用するんや?」
「「「気合いです!」」」
「さよか……」
焔泉の問いかけに、明確に答えを知らない秘伝の者達は、笑顔で言い切った。焔泉も、確かな答えは期待していなかったはずだ。
「あれ……浄化できてる?」
「なんや、陽の気で弾け飛んで……浄化されとるなあ」
「術とか使ってないじゃん!」
「闘気術なんで、術ですよ」
「高耶くん出番なくない?」
「……ちょっと人呼び過ぎました」
「いやいや、怨霊の数からしたら圧倒的に少ないからね? ってか、親玉来た!!」
明らかにヤバそうなのが一体、ようやく近付いてきた。
「当主! お任せします!」
「おう……」
勇一達が、揃って『他は任せてください』という顔をする。なんだか見ている方が照れ臭くなる。
「高耶くん、がんばれ〜」
蓮次郎達はガッチリと自分たちを守って固まっていた。
この際だと、高耶は楽しむことにした。
そんな様子を、蓮次郎達は手を叩いて応援し、歓声を上げ、目一杯楽しんだのだ。
「何あれ! シュンって! 瞬間移動!?」
「空飛びましたよね!? やべえ、秘伝の御当主やべえ!」
「手刀でスパって! 手が光ってた!!」
「気功波みたいなの出た!! え!? 見間違い!? 今見えたよね!?」
始終、ヒーローショーでも見に来たような様子だった。
全ての戦闘が終わったのは、きっちり三十分後。片付けなどはここに残る者達に任せ、高耶は扉で旅館に帰ってきた。
「おっ! お帰り!」
俊哉が扉の前で、女将とお茶をしながら待っていた。他の駆けつけてくれた同じ境遇の家族達も、ヤキモキしながらすぐそこの談話室で待っているようだ。
「白木達は?」
「先ほどお嬢さんがお目覚めになりまして、軽いお食事を食べながらご説明しているようです」
「知らん俺が入ると緊張しそうだったし、俺もここで待機。なんか困ったことあったら槇が呼びに来るだろうからさ」
家族水入らずではないが、混乱するだろう妹さんに配慮した形だ。
「あら? 泣いていますわ」
「ほんとだ。あ、槇」
「あ、その……」
「泣いてるじゃん。説明はどうよ」
「俺が怖いらしくて……」
「その髪型が悪いんじゃね?」
「……」
俊哉は軽く言うが、分からなくもない。子ども時代の六年は変化がすごい。兄が完全に大人になっていれば、ただでさえ強面な部類に入る槇は、小学生の少女には怖いかもしれない。
それも、そんな人が兄だと言ってくるのだ。恐怖だろう。
「ん〜、優希ちゃん呼ぶ? 果泉ちゃんも」
「そうだな……多分、今瑶迦さんの所の勉強部屋にいる時間だ。そっちに連れて行くか」
「いいんじゃね? 不思議な現実知るにもあそこが良さそうだし。女将さん達も来る? あっちの家族の人たちも」
「「「「「え?」」」」」
「どちらに?」
心配そうに顔を出していた家族達も不思議そうに首を傾げる。これに、俊哉は得意げに答えた。
「魔女様の作った異世界だ!」
「「「「「…………え?」」」」」
不思議な存在も知って、免疫もついてきた人たちでも、意味不明だったようだ。
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