第二章 3
「昨日から気になってるんだけどさ、お前のその手どうしたの?」
昼休み、皮が剥けた俺の手のひらを見て斎藤が首を傾げる。
たった二日の素振りで、俺の手はボロボロだ。
最初だけの我慢だと自分に言い聞かせているが、ヒリヒリして痛むので早くも挫折しかけている。おまけに肩も腕もだるいこと。
「まあ……ちょっと素振りを始めて」
「素振り? お前野球部に入るの?」
そっちの素振りじゃない。
「木刀を振ってるんだよ。鍛錬のために」
「鍛錬? へえ、お前がねえ」
「やっぱおかしいか? おかしいよな」
「いや、良い心がけだと思うぞ。最近不動市とその近辺でも人が襲われたとか神隠しにあったとかそういうニュース結構あるだろ。自分の身は自分で守らないとな」
斎藤の言うことは全てが魔塊のせいではないだろうが、そのうちのいくつかは可能性があるだろう。魔塊の動きが活発化しているというのはやはり本当なのか。
今まで意識してニュースを見たりしてなかったけど、これからは注意しなくては……と思いながら購買部までパンを買いに行っていると、向こうから鈴原さんが歩いて来た。犬魔塊の件以来、何も話していない。
「俺そんなに鈴原さんに嫌われるようなこと言ったっけ?」
と思うぐらい無視されている。
ここは俺の方から声を掛けて──みようとすると、鈴原さんが俺の肩にポン、と包帯を巻いた左手を置いた。
「今日の放課後、時間ある?」
そう尋ねてくる。
俺は吃驚して思わず肩を跳ねさせてしまった。
「あ、あるけど……」
子猫のようなか弱い声で返事した。
「そう。実はちょっと音無君に来て欲しいところがあるんだけど」
「俺に? 来て欲しいところって……」
「私の家なんだけど、いい?」
え──⁉
「そ、それはその……」
「いい?」
強めの声で、ギュッと俺の肩を握るようにしてくる。
これは……逃げられない。
「分か、りました……」
俺がそう言うと、ようやく鈴原さんは手を放してくれた。
「じゃあ放課後、校門で待ってるから」
と言って、廊下の向こうへ行ってしまった。
何? 鈴原家みんなにフルボッコにされるの? 俺。




