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第一章 3

「おはよー」

「オッス」

「おはー」

 みんなが登校してくる中、ぷかぷか浮いて俺の後に付いてくるふたば。

 誰もふたばに気が付かない。

 これだけ人がいれば気付くやつがいてもいいだろうに。

 テレビで霊感あるとか自称してるやつとか、インチキばっかりなんだろうな。

「斎藤、平安時代展観に行って来たぞ」

 教室で斎藤にそう言うと悔しがった悔しがった。

「何⁉ 先を越しやがったな畜生! 俺も今日の放課後行くぞ!」

 ふふん、やってやったぜ。

 おまけに俺は平安時代の魔塊狩りの転生者ときたもんだ。

 この特別感……最初は嫌だったけど、こうしてみると悪くないかも。

 そういえば、斎藤は知ってるんだろうか。魔塊という存在を。

 昼休み、教室で弁当を食べている時、斎藤に、「なあ、魔塊って知ってるか?」と尋ねてみると、急いで鞄の中から分厚い歴史本を取り出して語り始めた。

「魔塊……それは知る人ぞ知る、大昔から日本に存在する人食いの化け物さ」

 とおどろおどろしく言う。

「平安時代にもいたのか?」

「もちろん。京の都を中心に、日本中で人を襲っていた」

「そんなの根拠の無い昔話じゃないのか」

「ところがそうでもない。平安時代の文献には、魔塊とそれを退治する魔塊狩りと呼ばれる人々の活躍の記録が残っている」

「……マジかよ」

 俺がふたばの方を見ると、鼻を高くしてどうだと言わんばかりだ。

「平安時代だけじゃないぞ。鎌倉、室町、戦国、江戸。記録は残っている。マニアックでお化けの類の分野と思われてるから、学校では習わないけどな」

 そう言って、斎藤は本を開いて俺に見せてくる。

 そこには、人々が刀と弓を持って化け物と戦う絵巻物が載っていた。

「化け物退治といえば源頼光が有名だけど、他にもヒーローはたくさんいたんだ。例えば、源常久とか」

 そう言われて、どきんとした。

 本当にいたんだ……源常久。

「で、でもマイナーだよなそんな人物」

「歴史オタの間では好きな人結構いるぞ。まあ貢献度の割には報われてない感じだけど」

 斎藤は渋い顔をする。こいつも常久ファンか。

「その源常久は、どうやって死んだんだ?」

「どうだったかな……また調べておくよ」

 斎藤がそう言うと、ふたばが急にじわりと目に涙を溜め始めた。

「常久様は……魔塊と戦って討ち死にされました……」

 声を震わせてそう言った。

 討ち死に……立派な最後だと言えるのか単なるしくじりだったのか。

 まあ転生前の俺だし……でもあんまり想像したくないな、自分が死ぬところなんて。

 斎藤がパタンと本を閉じる。こんな重そうな本持ち歩くなよ。

「まあ一言二言では語れない人物だよ、源常久は」

 両目を閉じてそう言う。少しうるっときているようだが、お前まで泣くことはないだろう。

「それにしてもお前もようやく歴史に興味出てきたな。二回目行っちゃう? 平安時代展」

「行かねえよ」


 学校からの帰り道、俺はハアとため息をついてうーんと首を傾げる。

「討ち死にか……。まあ魔塊狩りなんかやってて畳の上で死ねるわけないとは思っていたけど……」

 とぼやいた。

「常久様の最後はご立派でしたよ! 魔塊との戦いの最中、逃げ損なった子どもを庇って……」

「そんな人が転生前の俺とは……何か申し訳ないんだけど」

「静也さんはまだドジで間抜けな人と決まったわけではありません! 魔塊と戦ったこともありませんし!」

「誰がドジで間抜けだよ。やっぱり戦うの? 何か常久さんのことを聞いてビビっちゃってるんだけど」

「安心してください、私がバッチリ支援しますので!」

「支援って? 幽霊に何が出来るんだ?」

「お、応援とか……」

「訊いた俺が馬鹿だった」

「そ、それ以外にももちろん出来ますよ! 私は常久様の愛刀だった新源氏清零しんげんじせいれいをお預かりしています! いざという時は、静也さんはそれを使って魔塊をバッタバッタと斬り倒して……」

「俺、刀なんか握ったこと無いんだけど」

「あっ……」

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