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第一章 2

「どうしたお化けに憑りつかれたみたいな暗い顔して。クマが出来てるぞ」

 翌日学校に行くと、朝一番に斎藤からそう言われた。

「なあ斎藤よ」

「どうした?」

「俺の後ろに何か見えるか?」

「お前の後ろ? ……いや、何も見えないけど」

 そうか、やっぱりふたばの姿は俺以外には見えていないんだな。

 ──今朝起きて、昨日の夜のことは夢だったんじゃないかと確かめるために押入れを開けた。

 すると中に白い着物姿の女の子が……居なくて、取り敢えずホッとした。

 のも束の間。

「おはようございます」

 といきなり耳元で言われたので、心臓が口から飛び出そうになるほど驚いて振り返ってみると……。

「おはようございます静也さん。学校へ行かれるんですよね? 私もご一緒してよろしいでしょうか?」

 と、俺とバッチリ目の合う高さでそう言われた。

 ふたばが浮いている。

 ぷかぷかと。

 ……そうだよな、幽霊だもんな、宙に浮くぐらいするよな。

「どうされました? 静也さん」

「あのー、君」

「お前、でいいですよ、静也さん。常久様には気軽にそう呼ばれていました」

「じゃあお前さあ……」

「はい」

「学校に付いて来る意味、何?」

「静也さんが普段どんな生活をしているか観察しようと思いまして」

 何故そんなストーカーのような真似を。

「これが静也さんの制服ですか? 素敵ですね」

 壁に掛けてある黒の詰襟をペタペタ触りながらふたばが言う。

「……俺今から顔洗って朝メシ食べるけど、お前はどうする? っていうかごはん食べられるのか?」

「食べようと思えば食べられます。食べないなら食べないで大丈夫です。触るのもそうです。触ろうと思って気合を入れれば触れます」

「そうか、便利だな」

「えへへ」

 頭を掻いて照れ笑いしている。

 別に褒めてないんだけどな。

「そうだ、俺の母親と妹に紹介しなきゃな。うちシングルマザーなんだけど……」

「それは結構です。私の姿は静也さんにしか見えません。もちろん声も聞こえません」

「えっ、そうなのか?」

「普通の人にはちょっと……。ただ静也さんは特別です。私がこの世に留まっていられるのは、あの守り刀のおかげですから。つまり常久様のおかげです」

「へえ……そうなんだ」

「あっ、でも……」

「でも?」

「静也さん以外の特別な人……魔塊狩りの人には見えるでしょう。普段から霊的なものと接していますから、鋭い感覚を持っているので」

「なるほどな」

 魔塊は化け物であり、霊的な存在……なんとなく分かってきた。

「申し訳ありません面倒臭くて」

「いや、それならそれで便利だし、他の人に気を遣わなくていいからオッケーだけど」

「そうですか。なるべくご迷惑をかけないようにします」

「迷惑ならもうかけられてるよ。じゃあメシを食ってくる」

 俺はふたばを残して部屋を出た。

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