第八章 3
それからのこと。
小川さんの法術には回復効果を持つものもあり、そのおかげでみんなの体力はある程度まで戻り、なんとか動けるようになった。その後、小川さんが乗って来た車で病院へ向かい、一番酷い傷を受けていた鈴原さんは、真っ先に治療してもらえることが出来た。
「魔塊退治とはいえ、こんなになるまで戦うなんて、一体どんな相手だったんです?」
と医者に尋ねられた。この人も魔塊狩りの仲間か……。
俺の体は常久さんに治してもらったけど、他の三人は傷だらけ。
鈴原さんは全身包帯姿。ああ……鈴原さんの綺麗な体が……。
──結局鈴原さんは二週間学校を休み、それから登校してきた。
クラスのみんなは、体中に包帯を巻いた彼女を見て、一体何があったんだといろいろ噂していたけれど、本人は気にせずノートにペンを走らせていた。
峠は鈴原さんを精神的に弱いと言っていたけれど、そんなことはない。こんなにも強い女の子だ。
「なあなあ何があったんだ? お前最近鈴原さんと仲良いだろ?」
と斎藤がマジな顔で尋ねてくる。
「さあ、知らないね」
魔塊狩りの約束ごと。
余計なことは喋らない。
俺たちは戦いの代償として、体も制服もボロボロになった。まあ命があっただけ良しとするべきか。
新しい制服は、本部からミヤコーの制服を作っている会社を通して一日で届いた。さすがやることが速い。
「なあ、俺たち親友じゃないか、何があったんだ? ほれ、言ってみろ、楽になるぞ」
「だから知らないって」
「何なんだよー、怪獣とでも戦ったのか?」
俺は斎藤にしつこく責められながら、鈴原さんの方をチラ見した。
──バラしたら、分かってるでしょうね?
そういう目をしている。
体中に包帯を巻いた姿、もうそれだけで恐ろしいのに、さらにギロッとこちらを睨んでくる。
──まあ、俺が次元童子との戦いのことを言うわけないけど。
「俺は放課後、壁が崩れたっていう南鳥神社を見に行くんだ。お前も来るか?」
あそこには……しばらくの間近寄りたくないな。まだ恐ろしさが完全に消えてないし、心の整理がついていない。もう少し落ち着いたら、参拝にでも行こうかと思う。
それにしても峠剛士は……ミイラ取りがミイラになった。そう表現するのが的確なのか。
あんな化け物になってまで──峠が追い求めた強さというのはあんなものなのか。
だったら、俺は鈴原さんに言われた心の強さを追い求める。上辺の強さだけなら、いらない。
「わああー、やっぱりひろーい!」
新しい家で優が走り回っている。
「それにしても、別居って言ってたのにどうして家を買うことにしたの?」
俺が母さんに尋ねると、苦笑いをして言った。
「何かね、一緒に住むのは嫌だって言ってた茜ちゃんの気が変わって、家欲しい! って言い出したんですって」
「ははあ、なるほどね」
「でも苗字はまだ変えなくていいって。気を遣ってくれてるのね」
「あの子が……」
「高い買い物だったけど、買って良かったかもね。家族はやっぱりみんな一緒が良いもの」
「ああ、そうだね」
新しい家族に新しい家か。白石さんも母さんも頑張ってくれたな。でも本当に大変なのは、きっとこれからだろう。
「今年の四神獣祭りは気合入ってるんだってよ! 何でも失われていた不動丸が見つかったっていう話だ! 無事に西王神社に納められたらしい!」
と斎藤は喜んでいた。こいつのためにも、不動丸を取り返せて良かった。
「よし、ここは奮発して新しいカメラ買わないとな!」
カメラって……良いやつは何十万もするんだろ? 凄い情熱だな。




