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第八章 2

 小川さんに協力してもらう約束をした翌日。

学校が終わり放課後、俺と鈴原さん、高子先輩、そしてふたばは南鳥神社に向かった。

 そこで宮司さんに今回の件を相談し、この神社を使わせてもらうよう頼んだ。

 魔塊のことなら我が神社は見過ごせないな! と了承を得て、俺たちは神社の片隅で峠剛士を待たせてもらうことになった。

 やつは気になっているだろう。俺が何故学校から真っ直ぐ南鳥神社に向かったのかを。

 警戒して現れないかもしれない。それならそれで、また別の日に同じように待ち伏せをする。

 峠が現れるまで、何度でもやってやる。

 境内では、巫女さんや権禰宜が参拝者一人一人に声を掛けていっている。

 何のためか。峠剛士を捕えるためにだ。

 人の数が少しずつ減っていき、境内はだいぶ静かになった。

 

 ──その時だ。


 気取ったジャケットにサングラス。

 慌てている様子はない。ゆっくりとした足取りで。

 峠剛士が、朱色の門を通って境内に入って来た。

 計画通り、峠は現れた。サングラスを外し、まだしつこく空に居座る太陽を睨みつけた。

 峠は拝殿に向かい、硬貨を賽銭箱に投げて鈴を鳴らし、手を合わせている。

 その間に──南鳥神社の門が閉じていく。

「本日は特別に早めに閉門させていただきます! ご参拝ありがとうございましたー!」

 という巫女さんの声が聞こえた。

 やった。やつを閉じ込めた。

 この神社コロシアムに。

 境内に他に人は居ない。巫女さんたちが参拝客に声を掛けていたのは、このためだ。

 峠が首を傾げながら振り返る。

 ……そこに、境内の中央に、鈴原さんが刀を抜いて立っているのを見て、全て理解したのかニィと笑って頭をガシガシと掻いた。

「なるほどね。この神社の結界は特別強力だ。俺たちは今、リングの中に居るというわけだ。俺はハメられたんだ」

 人をハメたやつが何言ってやがるんだ。

「君を追ってきたんだけどなあ、音無静也くーん!」

 峠が俺の名前を呼ぶ。俺はふたばと共に峠の前に出て行く。

「……峠剛士。お前と決着をつける」

 清零を持った俺とふたば。鈴原さん。そして薙刀を構えた高子先輩。小川さんはまだ姿を見せない。

 三人と一幽霊で峠剛士に立ち向かう。

 やつにとっても俺たちにとっても、逃げ場は無い。

「音無君、瑠璃、そして小さいお嬢ちゃん。幽霊の子。知りたいか? どうして俺が不動丸を奪ったか」

「そんなこと、後でじっくり聞いてやる。お前が動けなくなってからな」

 俺の新源氏清零が峠に反応したのか、青白く光っている。

「フフ、まあ焦るなよ。不動丸には、ある鬼を斬り殺した特別な力がある。その力を使えば、そら!」


 峠が右腕を横に向けると、手首から先が鈍く輝く刀に変わった。


「強烈な魔塊の臭いがします……!」

 ふたばがそう言う。

 ──やはり、峠はもう人間じゃない。

 魔塊になったというのは事実だろう。不動丸の力を取り込んで。


「やあああああああああああ!」


 鈴原さんが峠に向かって斬りかかって行く。

「だったらその腕、斬り落としてやるまで!」

 ガキンッ!

 鈴原さんが振り下ろした一撃はしかし、峠の右手の刀に弾き返されてしまう。

「良い太刀筋だがまだまだだな、瑠璃!」

 今度は左から高子先輩が薙刀を振るっていく。

 すると、峠の左手も刀に変わった。

「ぬるい!」

 足元を狙った高子先輩の薙刀を、掬い上げるような腕の振りで跳ね返した。

「さあ、君はどうする音無君!」

 ぐっ……これだけの化け物っぷりを見せられて、どうしろと⁉

 俺は毎日、木刀での素振りを欠かしていない。でも、さすがにこいつ相手には経験が圧倒的に足りないし、自信が無い!

 でも、行くしかない!

 ええい、俺の特技はこれだ、突き!

 俺は清零の切っ先を峠の胸に向けて、突っ込んで行く。

「無茶しちゃ駄目、音無君!」

 後ろから鈴原さんの声が聞こえる。でも、もう止まれない!

「ハハハハハハハハハッ‼」

 突然、峠のシャツが破れ、胸から蟹の足のように刃が何本も突き出てきた。

「音無君!」

 鈴原さんが俺の制服の背中を掴んで後ろに引っ張り、難を逃れる。

「危なかった……突っ込んでたらバラバラにされてたかも」

 何なんだあの胸の刃は……こいつ、どこを斬ればいいんだ⁉

「静也さん気を付けてください! やつはもう完全に魔塊です! 人間を相手にしていると思ってはいけません!」

 ふたばが声を掛けてくれる。

 ああ、分かってるよ!

「……峠先生!」

 突然そう言った鈴原さんの目が、涙で潤んでいる。

「何故! 何故なの峠先生! 何故細川君を!」

「今の俺の姿を見て分からないか瑠璃! これだけの力を手に入れるのに、理由なんてあるか⁉」

「ぐっ……!」

「まあ細川君には悪いことをしたかもしれない! 何も殺すことは無かったって言いたいんだろ⁉ でも彼があまりにも抵抗するから、殺るしか無かったんだ!」

「そんな力、化け物になってまで欲しいものなの⁉」

「だからいつまで経ってもお前は精神的に弱いんだよ瑠璃! こんな大事な決戦の時に涙を流すんだ! 不動丸には怨念が宿っている、次元童子じげんどうじという鬼の怨念がな! 俺が欲しかったのはそれさ!」

 峠の体から、さらに刃が飛び出す。

「そもそも不動丸は、常久様が不動の地に遠征した時、次元童子を斬るために作られた刀なのです! その次元童子の怨念が今でも不動丸に残っていたのです!」

 ふたばが峠を睨んでそう言う。

「えっ⁉ なに⁉ じゃあ俺のせいか──‼」

「俺のせいとか言わないでください! ちょっと最後まで始末しきれなかっただけです!」

「だって常久さんが転生したのが俺なんだろ⁉ じゃあ俺の責任だろ! っていうか何で今までお前そのこと黙ってたんだよー!」

「つ、常久様は英雄なんです! その方にやり残したことがあるなんて、歴史のしこりのようなものです! だからつい……」

「『だからつい……』じゃねえよ!」

「こんなことになるとは思わなかったんですぅ!」

 と、俺たちが言い争いをしている間にも、戦いは続いている!


「ええい、てやっ‼」


 高子先輩が峠と刃を合わせると、ぐるりと横回転して峠を吹っ飛ばした。小さいのになんて力!

 峠は神社の壁に大きな音を立ててぶつかり、その跡に凹みが出来た。同時に巻き上がる粉塵。倒れているのか休んでいるのか、やつの姿は見えない。

 しばらく様子を窺い、峠が起き上がって来るのを待った。

……徐々に土煙が晴れてきて、黒い影が動いたのを見た俺はギョッとする。

 そこに居たのは──。

「もはや悪鬼と言えるでしょう! 峠剛士、いえ次元童子なんでしょうか‼」

 これが、次元童子。

 その姿は人間ではなく……正に鬼だった。


 体長は二メートル、いや三メートルほどまでに達し、峠の体の肉は溶けてしまって、骨だけの体になっていた。刃の骨。あとは、内臓と顔が半分ほど残っているぐらいだ。


「くっ、やああああああああ‼」


 鈴原さんが刀を構え向かって行く。しかしその一撃の何倍もの刃が返ってきて、鈴原さんの体を斬り裂く。

「鈴原さああああん!」

 鈴原さんは後ろに倒れる。俺が駆け寄ると、鈴原さんのセーラー服は各所斬り裂かれ、その下の肌からは血が滲み出ている。

「……大丈夫よ、大袈裟ね」

 傷だらけの鈴原さんはそう言って立ち上がると、次元童子に向かって刀を構えた。

「まだまだ、始まったばかりよ!」

 その時だった。

 ボゥン‼ 

 と音がして、次元童子の右足のふくらはぎの部分が《爆発》した。

 そして、雪のように白いお札が降ってくる。

 何だ? 何が起こったんだ⁉


「ごめーん、遅れちゃったね! 道路が混んでてさあ。神社の裏口から入れてもらっちゃった!」


 爆煙の中に立っていたのは、眼鏡にスーツのお姉さん、小川勇美‼

「押されてるみたいだけど、何とかいけそう⁉ あ、高子ちゃーん! 久しぶり!」

「よ、寄るな! まだ戦いの最中だぞ!」

 高子先輩がシッシッと手を振る。

「あっ、そうだったね! いくよ、小川流法術、爆裂連華ばくれつれんか‼」

 小川さんがそう言って指をパチンッと鳴らすと、空中に散ったお札が次々と爆発していく。

「的が大きいとよく当たるものね! この連爆からは逃れられない!」

 す、凄い……。やれる、この化け物相手でも俺たちやれるぞ!

「ボーっとしてないでお前も行け、音無!」

 高子先輩に言われ、俺は峠剛士こと次元童子に向かって行く。

 刃の骨とか斬れそうにないから……残った肉の部分をやってやる!

 そうだ、心臓……!

 ここをやれば、いくら化け物でも生きてられないだろう!

「いっくぞ──‼」

 清零で真っ直ぐ左の胸を狙っていく。

 このまま真っ直ぐだ!

 真っ直ぐ行けば、やつの心臓を貫ける!


「どうだああああああああああああああ────‼」


 ドスッ。


 ──決まった。見たか! この軟弱魔塊狩りでも一撃食らわせてやれるんだぞ!

 ようし、ついでだ、内臓を一気にズタズタに……。


 カキンッ!


「あう!」


 ……しかし俺は一発で弾き飛ばされ、ズザアアアアアア、と境内の地面を滑って行った。

「音無君!」

「静也さん!」

 鈴原さんとふたばが俺を呼ぶが、打ちどころが悪かったのか、俺はうつ伏せになって立ち上がれない。

 ……クソッ、何なんだよ、何でこんな目に遭ってるんだよ俺……。

 俺は新しい家族と一緒に新しい家に住んで、新しく出来たかわいい妹とちょっとエッチなハプニングがあったりして、ああ、やっぱり家族っていいなあって思ったりして……。

 本当なら今頃そんな思いをしてる筈なんだよ!

 それが魔塊狩りとかいうおかしな仕事をしてるクラスメイトに引っ張られて俺まで魔塊狩りをするようになって……犬とか花の化け物と戦って……おまけに最後はこんな骸骨の怪物を倒せだあ⁉

 ザッと、俺は立ち上がる。


 ふざけるのもいい加減にしろよ! 出来ねえよ‼


「し、静也さん……」


 ふたばが俺の顔を見て驚いた顔をする。

 何だ?

 俺が右の頬に触れてみると、指に血が付いた。さっき地面を擦ったせいで、頬から思いっきり流血している!


 ああああああ!


 俺の、特別イケメンでもないけどまあまあの顔が──‼


 どうしてくれるんだよ! 傷でも残ったら!


 最近の男はお肌のケアには気を付けてるんだよ!


 畜生、やりやがったな!


 許せねえぞ、ぶっ飛ばして……。


 あ、あれ?


 何か意識が……。


 っていうかさっきからずっと飛び飛びで……。


 なんか俺じゃないみたいな感覚が……。


「静也さん、静也さん!」


「音無君、音無君!」


 あ……意識が遠くなって……。


 バタンッ。


 俺は……前のめりに倒れた。


 何だどうなってんだ俺の体動け、じゃないとあの刃の怪物に串刺しにされるぞ、寝てる場合じゃないんだ。

 俺が立たないと、俺が仲間を守らないと、みんな殺されるかもしれないんだ!

 そうだ、俺は男だろ、さあ、刀を手に取れ!

 新源氏清零。

 俺の愛刀。

 いや、源常久の愛刀。

 そうだ、俺は常久さんの転生した人間。

 やれるだろ? まだ。

 そうだ、立て、俺!

 

 ……立った。

 立ったぞ俺。


 どうだ、まだやれるぞ、いつでもかかって……。


「静也さ──ん、逃げて!」


 馬鹿野郎、逃げられるかよ。


 そんな格好悪い真似なんて……やつにもう一撃食らわせて……!


 ぐふっ‼


 え?


 ……何だよこれ、また血?

 俺、血を吐いてる?

 そんで、腹からもボタボタと血が流れていて……。

 何なんだよ、これ⁉

 ──刺された?

 俺刺されちまったのか?

 ヤバい、内臓をやられちゃったらさすがに命の危険が……顔どころじゃないし。

 ねえ、今どういう状況なの俺? 

 ふたば、鈴原さん、高子先輩、小川さん。

 誰か教えてくれよ!


「このっ!」


 キンッ!


 鈴原さんの声がする。

 戦ってくれてるんだ、あの怪物と。俺の内臓を破壊したやつと。

 鈴原さんだけじゃない、高子先輩と小川さんの声も聞こえる。


 何とかしようとしてくれている。


 俺の腹に刺さった刃を何とかしてくれようと……。


 でも、俺の体はいうことを聞かなくて……。


 もう動けないっていうか……。


 俺、殺されるっていうか……。


 だからもういいよ、自分の命を大事にしてくれ。


 そんな怪物と戦わなくていい。


 最初から、この作戦は失敗だったんだ。


 峠剛士め。次元童子とかいう鬼の力を取り込んでいるなんて……。


 そりゃ勝てないよ、そんな大昔の怪物……。


《大昔の怪物?》


《次元童子?》


 ちょっと待てよ、それなら俺、戦ったことあるじゃん。


 俺が退治したんじゃん。


 だって俺は…………源常久なんだろ‼


「あああああああああああああああああああああああああああああ‼」

 俺の体が燃えそうだ。熱い。凄い熱量だ。

 どうなってんだ俺。まだ戦えるっていうのか?

 さっきまで死にかけてたんだぞ!

 でも、体が……体が、動く!

 腹の傷が塞がっていく! 頬の痛みが消えていく! 凄え! 俺、意識も戻っていく!

 やった、やったぞ!

「静也さん……いえ、あなたは……」

 おお、ふたば! 俺なんだか復活したぞ!

「あなたは、源常久様ご本人‼」

 えっ?

 これが? 俺が今、源常久になってるっていうのか────?

 言われてみれば、平安時代展で見たような装束を着ている。何だこりゃ。

「常久様、常久様! ふたばはお会いしとうございました!」

 ふたばが抱きついて来る。

「ふたば、ご苦労だったな。よく頑張った」

 え? なに俺イケメンなこと言ってんの?

 なにふたばの頭撫で撫でしてんの?


「さあ、待たせたな次元童子!」


 俺が、俺の体が清零の切っ先を怪物に向けている。

「性懲りもなく甦ってきおって! 貴様はもう一度成敗して二度と悪さが出来ぬようにしてやる!」

 ──俺は跳んだ。それこそ、何メートルも。

 そして、刃の怪物の脳天にきつい一撃を食らわせる。

「良いですよ! 常久様の得意技、《春雷》です!」

 俺の放った一撃が、いや、常久さんの一撃が、ああ! もうどっちでもいい、刃の怪物の頭に決まった。

「むんっ!」

 今度は横薙ぎ。

「たあっ!」

 そして縦の一閃。

 清零が次元童子をバラバラにしていく。


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼


 次元童子が叫び声を上げる。

 もはや、こいつは俺の敵じゃない。

「何なのこれ!」

「どうなっておるのだ!」

「やばっ! すごっ!」

 鈴原さんと高子先輩、小川さんが驚愕の眼差しで俺の大活躍を見ている。

 どうだ! って、ナルシストぶってる場合じゃねえ!

 次元童子を倒さないと!

 そりゃ!

 せい!

 むおうっ!

 凄い凄い、俺っていうか常久さんっていうか俺、マジで強い! 圧倒的だ!


「秘技、《冬海(とうかい!》」


 渾身の一撃で、次元童子を袈裟斬りにする。

 次元童子はもはや俺の、常久さんの振るう刀の単なる的になっている。

「娘!」

 俺こと常久さんは振り返って鈴原さんの方を見ると。

「そなたの仇であろう! 今が好機だ! さあ、やれ!」

「えっ、あっ、でも……」

「さあ、早く!」

 そう言われて鈴原さんは。


「……やあああああああああああああ‼」


 と次元童子に斬りかかって行った。

 正確には、次元童子じゃなくて、峠剛士が仇だけど!


 ズバアアアアアアアアアアアアアアアン‼


 鈴原さんの刀が次元童子に食い込み、刃の体を切断した。


「どうだ、娘、まだやり足りないか!」

「はい! 何回斬っても……足りない相手です!」

「そうか、ならばやるがいい! さあ!」

 常久さんにそう言われ、鈴原さんは何度も次元童子に斬りかかった。

 

 ズバッ! ギンッ! ゴキッ! ザンッ!

 

 次元童子がどんどんバラバラになっていく。

 鈴原さんの細川君への想いは……俺が考えていたよりずっと重かった。

 女の子は怒らせると怖い。


 俺たちの剣を何度も受け、次元童子は動かなくなった。

 しかしその体にはまだ精気があり、残った肉片は僅かに動いている。

「さすが魔塊を操り、不動を騒がせた鬼よ! だがそこまで! 貴様はここで倒されるべきなのだ!」

 いつの間にか馬に乗っていた俺は、次元童子に向かって駆けて行った。


「奥義、青閃せいせん‼」


 俺は清零を振るい、次元童子を狙って、一閃した。


 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼


 甲高い悲鳴と共に、次元童子の首が飛んだ。そして鈴原さんの方へ向かって転がっていく。

 鈴原さんは刀を振り上げ、次元童子の大きな頭に突き刺した。それでまた悲鳴が上がる。


「このまま消え去るがいい、魔の者よ……!」


 すげえダンディなこと言って、俺は何だか髭が生えてきそうな気分だった。

「さすが、お見事! これぞ常久様の剣!」

 ふたばは両手を上げてはしゃいでいる。

 ──やった。やったぞ。

 峠剛士を捕まえることは出来なかったけど、細川君の仇は討てた。

 次元童子は煙を噴きながら溶け始め、そのていをなさなくなっていった。

「後は場を清めるだけだが……ここは神社だ、任せてもよいだろう」

 常久さんはそう言うとふたばの元へ行き、襟元を掴んで持ち上げ馬に乗せ、走り出した。

 その時、俺の体と常久さんの体はバチンと音を立てて分裂した。俺は元の学生服の音無静也に戻る。そして常久さんとふたばは、次元童子の死骸の上に出来た光り輝く穴の中に飛び込んで行った。

 残った俺の手には……清零に代わって、一振りの刀があった。


 その刀の鞘には《不動丸》と刻まれていて、俺は落とさないようにしっかりと握った。


「それじゃあな。常久さん、ふたば」

 俺がそう言うのと同時に、光の穴は閉じていった。

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