第四章 4
「……そういうわけなんだ。斎藤、どう思う?」
俺は学校で今の家庭状況を斎藤に話した。
「よく分かった。なかなか面白い……いや、興味深いな」
「この前は神社巡りに付き合ってくれてありがとうな」
「いやいや、俺の趣味も兼ねてるからな。気にするなよ、楽しかった」
「勉強になったよ」
それは本当だ。斎藤が友だちで良かったと思う。
「俺は歴友が出来て嬉しいよ。みんなゲームの話とかばっかりだしな……とと、そういえばお前の家の話だったな」
斎藤はポリポリとこめかみを掻いてうーんと考え込む。
「難しい時期だよな。お前は大学どこを狙ってるんだ?」
「そうだなあ、東京の、まあそれなりの……って考えていたけど、地元の国公立でも悪くないかなと思い始めてる」
「そうか。せっかく出来る新しい家族だもんな。離れるのはつらいな」
「かわいい妹も出来るしな、なんて」
「そうだ、お前、相手には高一の女の子が連れ子でいるんだよな⁉ しかも不動女子第一の! 畜生、羨ましすぎるぞ! ほとんど漫画の世界じゃねえか! 《親が再婚したら女子高生のかわいい妹が付いてきた件》っていうタイトルで漫画化されるぞ!」
しねえよ。お前の妄想の中だけで連載しろよ。
「いや……ところがこの妹がなかなか憎たらしいんだよ、顔はかわいいんだけどな」
そうぼやく。
「お前、ますます漫画じゃねえか」
「そうかあ? どこがだよ」
「《ツンデレ妹が家族になって家の中がもう大変》ってタイトルで漫画化だろ」
「ツンデレっていうか、ただの反抗期だよ」
「そういうのもかわいいに含まれるんだよ」
「そうかあ……かわいいんだアレ」
「アレだかオレだから分からないけど、受け入れるんだよ! 女子高生ってのはそういうものなんだよ!」
「そういうものねえ……」
ふと鈴原さんのことが頭に浮かんだ。
確かに鈴原さんも結構アレな感じだけどな……本人の前では絶対言えないけど。
「取り敢えず、お前はあんまり贅沢言わないで新しい家族に尽くせ。大体リアル妹までいるのに何なんだ、ニュー妹をかわいがってやれよ」
「リアル妹はまだ中一だぞ。高一のニュー妹と比べられるか」
「妹はみんな等しく妹なんだよ! お前はもう少し妹のいる環境の贅沢さをしっかり考えるんだな!」
「妹はそんなに重要な存在だったのか……」
「当たり前だろ! これが兄貴にボコられながらここまで育った俺のアドバイスだ!」
それはお前の家の問題だろと思いながら、うーん、妹、妹……と考えて授業を受けた。
「静也さん静也さん、妹というものはそんなに大事なんですか?」
昼休み、中庭の隅っこでソーセージパンを食べていた俺の隣にふたばが飛んで来て尋ねてくる。
「まあ……好きなやつは好きなんだろうな。ふたばにはきょうだいはいなかったのか?」
「弟がいましたけど、私が五歳の時に流行り病で死んでしまいました」
「そうか……それは悪いことを訊いたな」
「まあ、子どもはすぐに死んでしまうものでしたから、昔は」
「今まで訊いてこなかったけど……お前はどうやって死んだんだ?」
ふたばは少し俯いて、口を少しもごもごとさせる。
「……魔塊との戦闘中に呪いを受けて、九日後に死にました」
死の呪い……そんなことが出来る魔塊もいるのか。
「でも常久様に頂いた守り刀に魂を乗り移らせて、おかげで千年間幽体として過ごしてこられました。こうして健康にしていられるのも常久様のおかげです、はい」
死んでるから健康も何もないと思うけど……。
それは言わないでおこう。
「今はお前も妹みたいなもんだ」
俺がそう言うと、ふたばは喜ぶかと思ったら。
「妹ですか……常久様もそのように思っていたのでしょうか」
残念そうな感じでそう言った。
そうか、ふたばの常久さんへの気持ちはやっぱり……。
「お前は妹じゃない、相棒なんだよな。常久さんの右腕」
「は、はい! そして今は静也さんの相棒です!」
「頼んだぞ、相棒」
「はい!」
常久さんも罪作りな男だな。きっとふたばの気持ちを知って傍に置いていたんだろう。
今の俺は……常久さんと同じなんだろうか。




