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恋の2度見  作者: 乃菜
9/31

不一致

「……俺、なのか」


自分で言った言葉のはずなのに、やけに遠く感じた。

つばきは何も聞こえなかったみたいに、歩き出す。



「ちょっと、止まってると邪魔」


「あ、ああ……」


慌てて後を追う。


さっきまでと同じ景色。 人混み。

同じ、文化祭。


───なのに


「……なあ、つばき」



「ん?」

つばきは少し笑いながら振り返る。


その顔は、いつも通りで。


……だから余計に、聞くのが怖い。


「さっきのさ、“中身変わった”ってやつ」


「あー……それ?」


少し笑ったように言う。

でも、目は少しだけ逸らされていた。


「別に、深い意味ないよ」


「ほんと?」


「ほんとほんと」


即答。


だけど――


「なんかさ」


つばきは、前を向いたまま続ける。


「前のあんたって、もっと“迷いなかった”じゃん」


「……迷い?」


「うん。なんていうか、ちゃんとしてた」


ちゃんとしてた。


その言葉が、胸の奥に引っかかる。


「今は?」


思わず聞いていた。


つばきは少しだけ考えてから、


「……なんか、外見、見た目は同じで」


つばきは首を傾げながら話す。

言葉を選ぶみたいに、慎重に。


「中だけ、違う人みたい」


──やっぱり。


足元が、少しぐらついた気がした。


「……そっか」


それしか言えなかった。


否定もできないし、肯定もできない。

だって俺自身が、今一番そう思ってるから。


「まあでも」


つばきがふっと笑う。


「別に嫌ってわけじゃないよ」


「え?」


「ちょっと変だけどさ」


肩をすくめる。


「それはそれで、面白いし」


軽い言い方だった。


でも────

ほんの少しだけ、安心した自分がいた。


「……なんだよ、それ」


「なにその顔」


つばきが笑う。


その笑顔は、やっぱり知ってるつばきで。


でも、どこか────

悲しい顔をしているように見えた。



「……っ」


一瞬、頭の奥に鈍い痛みが走る。


視界が、ぐらりと揺れた。


「ちょっと、大丈夫?」


つばきの声が、少し近づく。


「いや……なんか」


こめかみを押さえる。


さっきの言葉。


中身が違う


その感覚が、頭の奥で反響する。


────本当に?


俺は、俺なのか?


「……ねえ」


つばきが、少しだけ真剣な声で言った。


「無理してない?」


「してねえよ」


反射的に答える。


でも、その言葉はやけに軽かった。


「……ならいいけど」


つばきはそれ以上何も言わなかった。


ただ、少しだけ歩く速度を落とす。

そのさりげなさが、逆に刺さる。


……前の俺は

こんなとき、どうしてたんだろう。


もっと自然に、

もっとちゃんと────

つばきと楽しく

考えなくても、話すことができてたのか?


「あ」


不意に、つばきが立ち止まった。


「なに」


「これ、行きたかったやつ」


指さした先には、小さな展示スペース。

クラスごとの出し物らしい。


手作りの看板に、少し歪んだ文字。


『あなたの本性、見抜きます』


「……は?」


思わず声が漏れる。


「占いみたいなやつだって」


つばきが楽しそうに言う。


「行ってみる?」


冗談みたいな出し物。


でも────


胸の奥が、ざわついた。


本性。


見抜く。


まるで、今の自分を試されているみたいで。


「……どうするの」


つばきが振り返る。


その目に映るのは、


俺なのか、

それとも────


「……行く」


気づけば、そう答えていた。


この違和感の正体を、


少しでも知りたかった。


────────────────────


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