表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋の2度見  作者: 乃菜
10/32

露見

テントの中は、外よりも少し暗かった。


薄い布越しに光が差し込んで、ぼんやりとした影を作っている。


「いらっしゃい」


奥から声がした。


低くも高くもない、妙に落ち着いた声。


中には、同じ学校の生徒らしい男子生徒が一人だけ座っていた。黒い布を肩にかけて、それっぽい雰囲気を出している。


「二人で入っていい?」


つばきが軽く聞く。


「どちらでも」

そいつは淡々と答えた。


「じゃあ、わたし先いい?」


「どうぞ」


つばきが椅子に座る。


俺は少し後ろに立ったまま、その様子を見る。


占いなんて、どうせ適当だ。


そう思っていたはずなのに────

胸の奥が、妙にざわつく。

さっきから図星をつかれているからだろうか。


「名前は?」


「つばき」


「ふむ」


紙に何かを書きながら、少しだけ目を細める。


数秒の沈黙。

それから、


「あなたは、そのままですね」


「は?」

つばきが眉をひそめる。


「どういう意味?」


「言葉通りです。なにも変わっていない」


あっさりと言い切る。


「……それだけ?」


「はい」


少し間を置いてから、


「強いて言うなら、外と内が一致している人です」


つばきは、きょとんとした顔をしたあと、


「なにそれ、普通じゃん」

つばきは小さく笑った。


「そうですね。普通です」


淡々と返す。

そのやり取りを見ながら、


胸のざわつきが、少し強くなる。


────外と内が一致している。

じゃあ、俺は?


「はい、次」


視線が、こちらに向けられた。


「……ああ」

気づけば、椅子に座っていた。

距離が近くなる。


その目と、真正面から合う。



「名前」


「……」


一瞬、言葉に詰まる。


「………とおる」


「はい。」

軽く流された。


ペンが紙の上を走る音だけが、やけに大きく響く。


「───あなたは」

その手が止まる。


「珍しいですね」


「は?」


思わず聞き返す。


「普通は、多少のズレで済むものですが」


ゆっくりと顔を上げる。

その目は、さっきまでより少しだけ鋭かった。


「あなたの場合、ほとんど一致していない」


「……なに言って」


「外と内が、別人のように乖離している」


ドクンドクン

心臓が、強く鳴っている。


つばきの言葉と、重なる。


「中身が違う人みたい」


「……違う」


反射的に否定する。


でも、


「どこが?」


静かに返される。

逃げ場のない問い。


「あなたは、あなたである自覚が薄い」


「は……?」


意味が、わからない。




いや、わかりたくない。


「記憶と認識が、噛み合っていない」


その一言で、


頭の奥が、強く痛んだ。


「っ……!」


思わず額を押さえる。


視界が、ぐらりと揺れる。



────「なにも見てないくせに。」


一瞬、つばきの声が蘇る。


「……まさか」


占いのやつが、小さく呟いた。


「心当たりがあるのですか」


「……ない」


即答した。

でも、その声は震えていた。


「そうですか」


それ以上は追及してこなかった。


ただ、最後に一言だけ。


「気をつけてください」


「……なにを」


「このままだと」


一拍置いて、目の前の男は言う。


「本来のあなたに、戻れなくなる」


────その言葉が、


妙に現実味を持って、胸に沈んだ。


────────────────────


感想、ブクマ、リアクションよろしくお願いします!!

モチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ