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恋の2度見  作者: 乃菜
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8/40

可笑しさ

舞台の拍手が、遠くで鳴った。


気づけば、周りのやつらは立ち上がっていた。


「……終わったのか」


内容、ほとんど覚えてない。


それでも、隣から小さな声が聞こえた。


「……よかったね」


つばきが、ぽつりと呟く。


「え」


「劇。普通に良かったじゃん」


そう言って、軽く伸びをする。


「……ああ」


適当に返す。


正直、それどころじゃなかった。


前の俺ってなんだよ……



考えれば考えるほど、引っかかる。


「ほら、行くよ」

つばきが立ち上がる。



その後ろを、無言でついていく。


体育館の外に出ると、明るさに一瞬目がくらんだ。

さっきまでの暗さが嘘みたいだ。


「次どうする?」


つばきが振り返る。


「……なんでもいい」


反射的に答えてしまう。


「なにそれ」


少しだけ呆れた顔。


でも、すぐに視線を外して、


「じゃあ、適当に回る?」


「ああ」


並んで歩き出す。


人混みの中、肩が軽くぶつかる。


そのたびに、現実に引き戻される感じがした。


……普通、なんだよな


文化祭、

本当のつばきと回って。


劇見て。


話して。


それだけのはずなのに。


なんで、こんなに——

落ち着かない。


「……なあ」


また、口を開いていた。


「なに」


「俺さ」


一歩、踏み込む。


「昔のこと、どんくらい覚えてる?」


つばきが足を止めた。


「急にどうしたの」


「いや、ちょっと気になって」



少しの沈黙。


周りのざわめきだけが、やけに大きく聞こえる。


「……普通に覚えてるけど」


つばきはそう言った。


「小学校も、中学も」


「じゃあさ」


喉が、少しだけ詰まる。


「俺って、どんなやつだった?」


…一瞬


本当に一瞬だけ、つばきの表情が揺れた。


「……は?」


「いいから、教えてくれよ」


逃げたくなかった。


ここで引いたら、多分——


何も分からなくなる気がした。


つばきは少しだけ考えるように視線を落として、


それから、口を開いた。


「……普通だよ」


「普通ってなんだよ」


「普通は普通でしょ」


少しだけイラついた声。


「でも」


続ける。


「今みたいに、変なこと聞くやつじゃなかった」


「……」


心臓が、ドクンと鳴る。


「もっとさ」


つばきは俺を見た。


「自分のこと、ちゃんと分かってる感じだった」


「……分かってる?」


「うん」


あっさりと言う。


「今のあんたさ」


少しだけ、言いにくそうにしてから——


「……なんか、中身が変わったみたい」


「——っ」


息が止まる。


それ、まさに。


俺が感じてること、そのままだった。




つばきはすぐに視線を逸らす。


「変な顔してるし」


軽く笑う。


でも——


さっきの言葉は、冗談に聞こえなかった。


(……やっぱり


おかしいのは、世界じゃない。


「……俺、なのか」


小さく呟いた言葉は、

誰にも届かない言葉だった。


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