まだ知らない君
「君の行きたいとこ考えときなよ」
つばきに言われた言葉が、心に留まっている
俺の行きたいところか…
────本当の君が知れるところに行きたい
「本当の君を、俺はまだ知らない気がする」
意識が朦朧とする前、最後に見た手紙に書いてあった言葉が今も胸に響く。
核心を突かれ、異世界に飛んだのではないかと自分に思い聞かせているんだと思った。
それでも、何度もそう思わずにはいられなかった。
「はぁ…」
こんなこと考えてないで文化祭で行きたいとこ決めなきゃ
友達と話しているつばきをまた見てみた。
やはり、俺が好きだった君との姿が自然に重なる。
友達思いで、優しくて、リーダーシップのある。
けれど、今目の前にいるのは、少し口が悪くて、冷たく見える異世界のつばきだ。
それでも、どこか魅力的で、目が離せない。
つばきを見ていたら、不思議そうな顔で俺を見つめてきた。
友達と話しているとこを抜け出してきて俺のとこへやってきた。
「ん?行きたいとこ決まった?」
考え中だったが、焦って口に出してしまった。
「あ…美女と野獣!」
思わず口に出した言葉に、つばきは軽く笑った。
「劇のこと?じゃあそれを見よう。」
文化祭まで残り2日
ここは多分異世界じゃない。
でもつばきはどうして俺の思う君じゃないんだろう。
───昨日の地震も、頭を打ったことも、全部遠い出来事のように思える。
でも、手紙に書かれた言葉は、まだ胸の奥で生きていた。




