近くて遠い
翌日。
「……」
教室。
いつもと同じ。
ざわざわした朝。
「……」
なのに、
全然違う。
「……」
席についても、落ち着かない。
「……」
理由は分かってる。
昨日。
あれ。
「……」
無理。
思い出しただけで、
顔熱い。
「おはよー」
「……」
声。
すぐ後ろ。
「……っ」
振り向く。
つばき。
「……おはよ」
普通の顔。
普通の声。
「……」
いや無理だろ。
「……」
なんでそんな平気なんだよ。
「……」
目、合わせらんねえ。
「……」
つばきが少しだけ首をかしげる。
「……どうしたの」
「……別に」
「顔赤いけど」
「うるさい」
「……ふーん」
少し笑う。
「……」
その笑い方、
昨日と同じで
余計無理。
「……」
チャイムが鳴る。
授業が始まる。
「……」
でも、全然入ってこない。
「……」
気になるのは、
ずっと後ろ。
「……」
ふと、
シャーペン落とす。
コロッと転がって、
後ろへ。
「……最悪」
「……」
拾おうとして、
同時に手が伸びる。
「……」
触れる。
指。
一瞬。
「……っ」
反射で引っ込める。
「……」
つばきが小さく笑う。
「……避けすぎ」
「避けてねえし」
「いや避けてる」
「……」
図星。
「……」
つばきが、少しだけ身を乗り出す。
「……昨日はあんなだったのに」
「……っ」
やめろ。
「……」
声小さいのに、破壊力えぐい。
「……」
こっちが固まってると、
つばきが近づいてくる。
耳元。
「……ね」
「……っ」
「今もやってみる?」
「……は!?」
思わず声出る。
クラスの何人かがこっち見る。
「ちょ、静かに」
つばきが笑いながら言う。
「……」
絶対わざと。
「……」
睨む。
「……」
つばき、
めっちゃ楽しそう。
「……」
ほんと、性格悪い。
「……」
でも、嫌じゃない。
「……」
むしろ、
ちょっと嬉しいし楽しい。
「……」
授業終わり。
休み時間。
「……」
席立とうとした瞬間、
腕を軽く引かれる。
「……」
つばき。
「……なに」
「……逃げるから」
「逃げてねえし」
「じゃあこっち来て」
「……」
半ば強引に、
廊下へ。
「……」
人少ない場所。
窓際。
「……」
外はまだ、
少し曇ってる。
「……」
つばきが、
こっちを見る。
「……」
さっきまでの顔じゃない。
ちょっとだけ、
真面目。
「……ちゃんと見て」
「……」
無理。
でも、見る。
「……」
距離が、
少し近い。
「……」
つばきが、
小さく言う。
「……昨日の続き」
「……っ」
「今度は逃げないで」
「……」
ずるい。
「……」
でも、今度は
逃げなかった。
「……」
少しだけ、
目を閉じる。
「……」
廊下のざわめきが、
遠くなる。
「……」
近づいて——
「おーい」
「……っ!?」
一気に離れる。
「……」
クラスメイト。
普通に通りすぎる。
「……」
終わった。
「……」
つばき、
一瞬固まって、
そのあと
吹き出す。
「……タイミング悪すぎ」
「……」
こっちは心臓やばいのに。
「……」
つばきが、
少しだけ笑いながら言う。
「……ほんと、簡単にはさせてくれないね」
「……」
昨日と同じセリフ。
「……」
でも今度は、
ちょっと違う。
「……」
つばきが、
小さく続ける。
「……でも、嫌いじゃない」
「……」
その言葉に、
ちょっとだけ救われる。
「……」
結局、
また未遂。
「……」
でも、距離は昨日よりちゃんと近くなってた。
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