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恋の2度見  作者: 乃菜
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32/40

あと1歩

雨は、少しだけ弱くなっていた。


それでも、止む気配はない。


「……」


並んで座る距離は、


さっきより少しだけ近いまま。


「……」


帰ろうと思えば帰れるのに、


どっちも動かない。


「……なあ」


「ん?」


「さっきの、“また今度”ってやつ」


「……」


つばきが、


わざとらしく視線を逸らす。


「なに?」


「……逃げた?」


「逃げてない」


即答。


「じゃあ今やれよ」


「……」


一瞬、間が空く。


「……」


つばきが、


こっちを見る。


少しだけ、


真面目な顔。


「……ほんとに?」


「……」


その声が、


さっきより低い。


「……」


冗談で言ったつもりだったのに、

引けなくなる。


「……別に」


「……後悔しない?」


「……しねえよ」


「……」


つばきが、


少しだけ息を吐く。


「……」


距離が、

縮まる。


さっきと違って、


今度は止まらない。


「……」


心臓の音、


絶対聞こえてる。


「……」


目を閉じるタイミング、


わかんねえ。


「……」


つばきが小さく笑う。


「……顔、固い」


「うるさい」


「ふふ」


そのまま、


ふっと近づいて——


「……」


触れる。


ほんの一瞬。


でも、ちゃんと分かるくらいに。


「……」


離れる。


「……」


思考、


止まる。


「……」


つばきが、


少しだけ照れた顔で笑う。


「……ほら、簡単じゃん」


「……」


いや、


全然簡単じゃねえ。


「……」


何も言えなくて、


黙ってると


つばきが首をかしげる。


「……どうしたの」


「……いや」


少し間を置いて、


「……もう一回」


「……」


今度は、


つばきが固まる。


「……え」


「ダメ?」


「……」


少しだけ赤くなる。


「……ずる」


「さっき言っただろ」


「……お互い様」


「……」


つばきが、


小さく笑って


「……一回だけね」


「……」


今度は、


こっちから近づく。


さっきより、


少しだけゆっくり。


「……」


逃げない。


「……」


ちゃんと、


重なる。


さっきより、


少し長く。


「……」


離れたあと、


どっちも何も言わない。


「……」


でも、


さっきより


ずっと近い。


「……」


つばきが、


ぽつりと呟く。


「……帰りたくないね」


「……ああ」


「……」


雨はまだ、


やんでない。


でも、もうそれでよかった。



────────────────────


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