近すぎる距離
雨は、すぐには止まなかった。
屋根を叩く音が、
静かに響いている。
「……」
隣。
肩が触れてる。
ほんの少し。
でも、前なら絶対意識してた距離。
「……」
今は、
それが自然だった。
「……寒くない?」
つばきが小さく聞く。
「……まあ平気」
「嘘」
即答される。
「ちょっと鳥肌立ってるし」
「……見んな」
「見える」
少し笑う。
「……」
その笑い方が、
やけに柔らかい。
「……」
つばきが、
少しだけ近づく。
肩がちゃんと触れる。
「……」
今度は離れない。
「……あったかい方がいいでしょ」
ぶっきらぼうに言う。
「……」
なんか、
反則だろそれ。
「……」
顔を逸らす。
「……照れてる?」
「うるさい」
「図星だ」
「……」
つばきが少し笑う。
「……」
その顔見てると、
こっちまで笑いそうになる。
「……なあ」
「なに」
「今日さ」
少し考える。
「めちゃくちゃ普通なのに」
「……うん」
「なんか、楽しい」
「……」
つばきが静かにこっちを見る。
「……」
その目が、少しだけ優しい。
「……私も」
小さく言う。
「……こういうのでいいかも」
「……」
“こういうの”
特別な場所でもない。
大事件もない。
ただ、一緒に歩いて、
雨宿りしてるだけ。
「……」
でも、それがいい。
「……」
沈黙。
でも、それも全然苦しくない。
「……」
つばきが、
ふと呟く。
「……前さ」
「うん」
「付き合うとか、あんま想像してなかった」
「……俺も」
「……」
少しだけ笑い合う。
「……なんか」
つばきが言う。
「今でもちょっと変な感じ」
「……分かる」
「……」
また沈黙。
でも、
今度は少しだけ近い。
「……」
つばきの髪が、
少し濡れてる。
「……」
気づけば、
手が動いてた。
「……ん」
そっと、
髪についた雨を払う。
「……」
つばきが止まる。
「……」
近い。
思ったより、
ずっと。
「……」
目が合う。
逸らせない。
「……」
つばきが、
少しだけ困ったみたいに笑う。
「……急にそういうことする」
「……悪い」
「……別に」
小さく言う。
「嫌じゃないし」
「……」
心臓がうるさい。
「……」
つばきが、
少しだけ視線を落とす。
「……」
距離が、
近づく。
あと少し。
本当に、
あと少し。
「……」
でも、つばきはそこで止まる。
「……」
そして、
小さく笑った。
「……続きはまた今度」
「……は?」
「だって」
少しだけいたずらっぽく言う。
「簡単すぎるの、つまんない」
「……」
呆れる。
でも、その顔が楽しそうで。
「……」
結局、
こっちも笑ってしまう。
「……ほんとずるい」
「お互い様でしょ」
「……」
雨は、
まだ止まない。
でも、帰りたくないって思った。
その気持ちは、
たぶん——
同じだった。
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