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恋の2度見  作者: 乃菜
30/32

ふたりだけの時間

日曜。

駅前。


人の多さに、少しだけ圧倒される。


「……」


時計を見る。


約束の時間、ちょうど。


「……早すぎたか」


小さく呟いたとき——


「……来てるじゃん」


後ろから声。

振り向く。


「……」


つばきが立っていた。


私服。


いつもと違う雰囲気。


「……」


一瞬、言葉が出ない。


「なに」


つばきが少しだけ眉をひそめる。


「いや」


視線を逸らす。


「……なんでもない」


「……」


つばきがじっと見る。


「……変?」


「……いや」


即答する。


「……普通に、いい」


「……」


一拍おいて、


「……そ」


少しだけ顔を逸らす。


でも、耳が少し赤い。


「……」


なんか、


ちょっとだけ嬉しい。


「……行くか」


「……うん」


並んで歩き出す。


人混み。


少し距離が開く。


「……」


一瞬だけ迷って、


手を伸ばす。


「……」


つばきの手を軽く引く。


「……こっち」


「……」


少しだけ驚いた顔。


でも、


そのままついてくる。


「……」


気づけば、


自然に手を繋いでいた。


「……」


つばきは何も言わない。


でも、


握り返してくる。


「……」


少し歩いて、


店を見て回る。


服屋。


雑貨。


特に目的はない。


でも、


それがいい。


「……ねえ」


つばきが言う。


「なに」


「これ」


指差す先。


ペアっぽいキーホルダー。


「……」


分かりやすすぎる。


「……」


つばきも気づいてるはずなのに、


何も言わない。


「……どうする」


わざと聞く。


「……」


つばきが少し考えて、


「……いらない」


そう言う。


「……」


でも、少しだけ視線が残る。


「……」


軽く笑う。


「買うか」


「……は?」


「記念」


「……いらないって言ったじゃん」


「いいだろ別に」


「……」


少しだけ黙って、


「……半分出す」


「いいって」


「やだ」


即答。


「……」


結局、二人で買うことになった。


「……」


店を出る。


袋を持ちながら、


少しだけ照れる。


「……」


そのとき、


ポツ、と。


「……あ」


つばきが空を見る。


「……またかよ」


小さく笑う。


雨。


さっきよりは弱い。


でも、確実に降ってきている。


「……どうする」


「……」


つばきが少しだけ近づく。


「……走る?」


「……また?」


「……」


少しだけ笑う。


「……行くぞ」


手を引く。


今度は、


自然に。


「……」


走る。


笑いながら。


「ちょ、待って!」


「待たない」


「ほんとバカ!」


声が響く。


でも、


嫌そうじゃない。


「……」


屋根のある場所に入る。


「……はあ、」


息を整える。


「……まただね」


つばきが言う。


「……だな」


「……」


少しだけ沈黙。


でも、


前とは違う。


「……」


つばきが、


ポケットから小さな袋を取り出す。


さっきのキーホルダー。


「……はい」


差し出してくる。


「……今?」


「……ダメ?」


「……」


少しだけ笑う。


「……いや」


受け取る。


「……ありがと」


「……」


つばきが少しだけ目を逸らす。


「……なくすなよ」


「お前もな」


「……」


少しだけ笑う。


「……」


雨音が、


また二人を包む。


でも、今度は——


少しだけ近い。


「……」


自然に、


肩が触れる。


「……」


つばきは、


避けない。


「……」


何も言わない。


でも、


それで十分だった。


「……」


“ふたりだけの時間”が、


確かにここにあった。


────────────────────


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