隠せきれない距離
次の日。
教室に入った瞬間、
少しだけ、空気が違った。
「……」
いや違うのは空気じゃない。
自分だ。
「……」
席に向かう。
いつもと同じ景色。
でも、一つだけ違う。
——つばきがいる。
当たり前なのに、
当たり前じゃない。
「……」
視線が、自然とそっちに向く。
窓際。
スマホを見てる。
昨日と同じ姿。
でも——
「……」
“彼女”になった。
その事実が、
頭から離れない。
「……おはよ」
いつも通り声をかける。
「……おはよ」
つばきが顔を上げる。
一瞬だけ目が合う。
「……」
すぐに逸らされる。
「……」
でも、ほんの少しだけ、
口元が緩んでた。
「……」
席につく。
距離はいつも通り。
けどなんか変だ。
「……」
落ち着かない。
「ねえ」
後ろから声。
振り向くと、
クラスのやつ。
「お前らさ」
「……なに」
「なんか距離近くね?」
「……は?」
心臓が一瞬跳ねる。
「別に」
即答する。
「いやいや」
ニヤニヤしながら言う。
「昨日なんかあっただろ」
「ねーよ」
「ほんとか〜?」
「……」
めんどくさい。
「つばきもさ」
そっちに話を振る。
「なんか今日機嫌よくね?」
「……は?」
つばきが顔を上げる。
「別に普通だけど」
いつも通りのトーン。
でも、ほんの少しだけ声が硬い。
「怪し〜」
「うるさい」
即終了。
「……」
助かった。
けど——
「……」
バレるの、時間の問題じゃね?
「……」
横を見る。
つばきと目が合う。
「……」
すぐ逸らす。
でも、同時だった。
「……」
ちょっとだけ、
笑いそうになる。
「……」
授業中。
前を向いてるはずなのに、
気になる。
「……」
視線を感じる。
横を見る。
「……」
つばきも、
こっち見てた。
「……」
一瞬止まる。
目が合う。
「……」
すぐ前に戻る。
「……」
でも、
数秒後。
また見る。
「……」
また目が合う。
「……なに」
小さく口を動かされる。
「……別に」
同じように返す。
「……」
そのやり取りだけで、
ちょっと楽しい。
「……」
放課後。
教室に人が減る。
「……」
鞄をまとめる。
立ち上がる。
「……」
つばきも立つ。
タイミング、一緒。
「……」
目が合う。
「……帰る?」
小さく聞く。
「……うん」
頷く。
「……」
教室を出る。
廊下。
人はまだいる。
「……」
少しだけ距離を取る。
さっきまでとは逆。
「……」
つばきが小さく言う。
「……こういうの、めんどいね」
「……だな」
「……」
少しだけ沈黙。
「……でも」
つばきが続ける。
「ちょっと楽しい」
「……」
思わず笑う。
「同じこと思ってた」
「……」
つばきも少しだけ笑う。
「……」
階段を降りる。
人が減る。
「……」
外に出る。
人気が少ない道。
「……」
その瞬間、
つばきが少しだけ近づく。
「……」
距離が戻る。
「……」
自然に、
手が触れる。
「……」
一瞬止まる。
でも——
今度は、
迷わない。
「……」
そっと、
指を絡める。
「……」
つばきが小さく言う。
「……バレるよ」
「……」
少しだけ笑う。
「ここなら大丈夫だろ」
「……」
少しだけ黙って、
「……ばか」
でも、手は離さない。
「……」
夕方の風。
昨日と同じ帰り道。
でも、全部が違う。
「……」
隠してるのに、
隠しきれてない。
そんな距離が、
少しだけ嬉しかった。
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