言葉になる瞬間
帰り道。
雨はもう、完全に止んでいた。
空気が、少しだけ冷たい。
「……」
隣を歩くつばき。
さっきまでと同じ距離。
でも、
このまま終わらせたくないって、
はっきり思った。
「……つばき」
呼ぶ。
「なに」
いつも通りの返事。
でも、少しだけ柔らかい。
「……さっきの続き」
足を止める。
「……」
つばきも、少し遅れて止まる。
振り返る。
「……」
目が合う。
逃げない。
もう、逃げない。
「……あのさ」
一歩、近づく。
「ちゃんと見てからって言ったけど」
「……うん」
つばきは静かに頷く。
「……もう、分かった」
「……」
その一言で、
空気が変わる。
「……なにが」
少しだけ小さな声。
「……お前のこと」
はっきり言う。
「ちゃんと見た」
「……」
つばきの目が揺れる。
「……それで?」
「……」
深く息を吸う。
心臓がうるさい。
でも、
今なら言える。
「……俺さ」
一瞬だけ、
言葉を選んで——
やめる。
「……好きだわ」
そのまま出した。
「……」
静かになる。
風の音だけが通る。
「……」
つばきは、
何も言わない。
でも、
目は逸らさない。
「……適当じゃない」
続ける。
「一緒にいたいって思ってる」
「……」
「前みたいにじゃなくて」
「……ちゃんと」
「……」
少しだけ沈黙。
長く感じる時間。
「……」
つばきが、
ゆっくり息を吐く。
「……ずるい」
ぽつりと言う。
「……なんで」
「今それ言うの」
「……」
少しだけ笑う。
「タイミングだろ」
「……バカ」
でも、
その声は震えてた。
「……」
つばきが、
一歩近づく。
さっきより、
はっきり分かる距離。
「……」
視線が、少し下がる。
「……」
そして、
小さく言う。
「……私も」
「……」
一瞬、息が止まる。
「……前から」
つばきが続ける。
「ちょっとは、思ってたし」
「……」
「今は」
少しだけ顔を上げて、
目が合う。
「……ちゃんと、好き」
「……」
言葉が、遅れてくる。
理解が、追いつく。
「……」
つばきが、少しだけ照れた顔で言う。
「……これでいい?」
「……」
思わず笑う。
「……いいに決まってんだろ」
「……そ」
短く返す。
けど、その顔は、
隠しきれてなかった。
「……」
少しだけ沈黙。
でも、
さっきまでの沈黙とは違う。
「……」
つばきが、
少しだけ手を動かす。
迷うみたいに。
「……」
それを見て、
自然に手を伸ばす。
「……」
指が触れる。
一瞬だけ止まる。
でも、
今度は逃げない。
「……」
そっと、
手を握る。
「……」
つばきは、
少しだけ驚いた顔をして、
でも——
握り返した。
「……」
何も言わない。
でも、
それで全部伝わる。
「……帰るか」
「……うん」
歩き出す。
さっきと同じ道。
でも、
もう“同じ”じゃない。
「……」
手は、
繋いだまま。
離す理由は、
どこにもなかった。
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