放課後の寄り道
コンビニの自動ドアが開く。
涼しい空気が、一気に流れてくる。
「さむ」
つばきが小さく言う。
「さっきまで暑いって言ってただろ」
「それとこれとは別」
「意味わからん」
「いいから入って」
軽く背中を押される。
「……はいはい」
店内に入る。
蛍光灯の光。
並んだ商品。
いつもと同じ景色なのに、
今日は妙に意識してしまう。
「アイスどれにする?」
つばきが冷凍コーナーの前でしゃがむ。
「なんでもいい」
「一番めんどくさいやつ」
「お前が食いたいって言ったんだろ」
「そうだけど」
ケースを開けながら、
「じゃあ、これ」
一本取り出す。
「それでいい」
「じゃあ同じでいいじゃん」
「別に」
「……」
つばきが少しだけ笑う。
「ほんと適当」
「うるさい」
適当にもう一本取る。
レジに向かう。
「別々で」
つばきが先に言う。
「……そこは奢れよ」
「なんで」
「アイスぐらい」
「やだ」
即答。
「ケチ」
「普通」
「……」
結局それぞれ払う。
袋を受け取って、
店を出る。
外は少しだけ暗くなっていた。
「はい」
つばきが一本渡してくる。
「サンキュ」
袋を開ける。
「……」
並んで歩きながら、
同時に開ける。
「……」
一口食べる。
冷たい。
「……うま」
「でしょ」
少しだけ得意そうに言う。
「……」
また沈黙。
でも、さっきまでとは違う。
どこか、
落ち着く沈黙。
「……なあ」
つばきが言う。
「なに」
「さっきさ」
アイスを見ながら、
「ちゃんとしてるって言ったじゃん」
「ああ」
「……あれ、本音だから」
「……」
少しだけ、驚く。
「別にお世辞とかじゃないし」
「……珍しいな」
思わず言う。
「なにそれ」
「いや、お前がそういうこと言うの」
「失礼」
「事実だろ」
「……」
つばきは少しだけ黙って、
「……まあ」
小さく言う。
「前よりは、ね」
「……」
また、
少しだけ距離が縮まる。
「……じゃあさ」
今度はこっちから言う。
「なに」
「お前も変わったよな」
「……は?」
すぐに反応する。
「どこが」
「……」
少し考える。
「前より」
言葉を選ぶ。
「ちゃんと喋る」
「……」
つばきが止まる。
「それ、どういう意味」
「そのまま」
「前は喋ってなかったみたいじゃん」
「そうじゃなくて」
少しだけ笑う。
「ちゃんと本音で話してる感じ」
「……」
つばきは少しだけ視線を逸らして、
「……別に」
小さく言う。
「気分」
「嘘だろ」
「うるさい」
軽く肘でつつかれる。
「……」
また歩き出す。
「……」
少しだけ、
間が空く。
「……ねえ」
つばきが言う。
「なに」
「もしさ」
少しだけ声が小さくなる。
「前のままだったら」
「……」
「今日みたいに、なってたと思う?」
「……」
足が、少しだけゆっくりになる。
「……なってないな」
正直に言う。
「……そっか」
つばきは小さく頷く。
「……」
沈黙。
でも、さっきより少しだけ重い。
「……でも」
続ける。
「今だから、なってるんだろ」
「……」
つばきがこっちを見る。
「……」
少しだけ目が合う。
逸らさない。
「……そうだね」
つばきが小さく笑う。
その笑い方は、
今までで一番、
自然だった。
「……」
アイスが、少し溶けてきている。
「……早く食えよ」
「そっちも」
「……」
同時に笑う。
その瞬間、
ほんの少しだけ、
距離が近づいた気がした。
「……」
でも────
まだ触れない。
まだ言わない。
「……」
それでも、
確実に——
前より、
近いところにいた。
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