試験 2
放課後。
チャイムが鳴って、
教室の空気が一気に緩む。
「……」
荷物をまとめながら、
少しだけ意識する。
窓の方。
つばきは、まだ席に座ったまま、
スマホをいじっている。
「……」
行くか、
待つか。
一瞬迷って——
「行くぞ」
声をかける。
つばきが顔を上げる。
「……なに、その言い方」
少しだけ笑う。
「別に」
「はいはい」
立ち上がる。
鞄を肩にかけて、
こっちに歩いてくる。
「で?」
隣に並びながら言う。
「どこ行くの」
「お前が決めたんじゃないのかよ」
「付き合ってって言っただけじゃん」
「……はあ」
ため息をつく。
「じゃあ適当に歩くか」
「それでいい」
あっさり頷く。
「……」
並んで歩く。
廊下を抜けて、
校舎を出る。
夕方の空気。
少しだけ涼しい。
「……で?」
つばきが口を開く。
「なに」
「ちゃんと見てる?」
「……急だな」
「だって、それ目的でしょ」
「まあな」
苦笑する。
「で、どうなの」
「……」
少し考える。
“ちゃんと見る”って、
具体的に何だよって思いながら。
でも、
今のつばきを見る。
歩幅。
歩く速さ。
声のトーン。
視線。
「……昨日よりは」
口を開く。
「ちゃんと見てると思う」
「ふーん」
つばきは前を見たまま、
「具体的には?」
「……」
試されてる。
分かりやすく。
「……お前」
少しだけ横を見る。
「歩くの、ちょっと速い」
「は?」
つばきがこっちを見る。
「なにそれ」
「いや、なんか」
言葉を探す。
「合わせてくれてるときと、そうじゃないときあるだろ」
「……」
一瞬、つばきが黙る。
「……細か」
小さく言う。
でも、
少しだけ、
口元が緩んでる。
「他は?」
「……他?」
「一個じゃ弱い」
「厳しいな」
「試験だから」
「……」
息を吐く。
「笑うとき」
「……は?」
「完全に笑ってないときあるだろ」
「なにそれ」
「さっきのとか」
指摘する。
「ちょっとだけ、作ってる」
「……」
つばきが止まる。
「……」
つられて、足を止める。
「……」
少しの沈黙。
夕焼けが、二人の間に落ちる。
「……なにそれ」
つばきが小さく言う。
「そんな分かる?」
「昨日よりはな」
正直に答える。
「……」
つばきは少しだけ下を向いて、
「……へえ」
小さく呟く。
その声は、
さっきまでと少し違った。
「……」
また歩き出す。
今度は、
少しだけ距離が近い。
「……じゃあさ」
つばきが言う。
「もう一個」
「まだあるのかよ」
「当たり前じゃん」
少しだけ笑う。
「……あたしのこと」
一瞬だけ、間を置く。
「どう思ってる?」
「……」
足が止まりそうになる。
でも、
止まらない。
「……どうって」
「そのまま」
つばきは前を向いたまま言う。
「前と同じ?」
「……」
言葉が詰まる。
でも、逃げたくはなかった。
「……違う」
はっきり言う。
「どう違うの」
「……」
少しだけ、息を吸う。
「ちゃんと見たら」
言葉を選ぶ。
「思ってたより、めんどくさい」
「は?」
即座に返ってくる。
「なんだそれ」
「でも」
続ける。
「思ってたより、ちゃんと考えてるし」
「……」
「思ってたより、分かりにくい」
「……」
「でも」
少しだけ笑う。
「前よりは、分かりたいって思ってる」
「……」
つばきが止まる。
今度は、
完全に足を止める。
「……なにそれ」
小さく言う。
でも、
その声は、
さっきよりもずっと静かだった。
「……そのまま」
答える。
「……」
沈黙。
風が吹く。
「……合格」
ぽつりと、
つばきが言う。
「……え」
思わず聞き返す。
つばきは少しだけこっちを見て、
「一応ね」
少しだけ笑う。
今度は、
さっきよりも、
ちゃんとしている笑いだった。
「……」
胸の奥が、
少しだけ軽くなる。
「……まだ終わりじゃないけど」
つばきが続ける。
「分かってるよ」
「ならいい」
また歩き出す。
その横顔は、
昨日より少しだけ、
近く感じた。
「……」
夕焼けの中、
並んで歩く。
昨日より、
少しだけ、
距離が縮まっていた。
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