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恋の2度見  作者: 乃菜
22/32

試験 2

放課後。

チャイムが鳴って、


教室の空気が一気に緩む。


「……」


荷物をまとめながら、


少しだけ意識する。

窓の方。


つばきは、まだ席に座ったまま、

      スマホをいじっている。


「……」


行くか、


待つか。


一瞬迷って——


「行くぞ」


声をかける。


つばきが顔を上げる。


「……なに、その言い方」


少しだけ笑う。


「別に」


「はいはい」


立ち上がる。

鞄を肩にかけて、

こっちに歩いてくる。


「で?」


隣に並びながら言う。


「どこ行くの」


「お前が決めたんじゃないのかよ」


「付き合ってって言っただけじゃん」


「……はあ」

ため息をつく。


「じゃあ適当に歩くか」


「それでいい」


あっさり頷く。


「……」


並んで歩く。


廊下を抜けて、


校舎を出る。


夕方の空気。


少しだけ涼しい。


「……で?」


つばきが口を開く。


「なに」


「ちゃんと見てる?」


「……急だな」


「だって、それ目的でしょ」


「まあな」


苦笑する。


「で、どうなの」


「……」


少し考える。


“ちゃんと見る”って、


具体的に何だよって思いながら。


でも、


今のつばきを見る。


歩幅。

歩く速さ。

声のトーン。

視線。


「……昨日よりは」


口を開く。


「ちゃんと見てると思う」


「ふーん」


つばきは前を見たまま、


「具体的には?」


「……」


試されてる。


分かりやすく。


「……お前」


少しだけ横を見る。


「歩くの、ちょっと速い」


「は?」


つばきがこっちを見る。


「なにそれ」


「いや、なんか」


言葉を探す。


「合わせてくれてるときと、そうじゃないときあるだろ」


「……」


一瞬、つばきが黙る。


「……細か」


小さく言う。


でも、


少しだけ、


口元が緩んでる。


「他は?」


「……他?」


「一個じゃ弱い」


「厳しいな」


「試験だから」


「……」


息を吐く。


「笑うとき」


「……は?」


「完全に笑ってないときあるだろ」


「なにそれ」


「さっきのとか」


指摘する。


「ちょっとだけ、作ってる」


「……」


つばきが止まる。


「……」


つられて、足を止める。


「……」


少しの沈黙。


夕焼けが、二人の間に落ちる。


「……なにそれ」


つばきが小さく言う。


「そんな分かる?」


「昨日よりはな」


正直に答える。


「……」


つばきは少しだけ下を向いて、


「……へえ」


小さく呟く。

その声は、

さっきまでと少し違った。


「……」


また歩き出す。


今度は、


少しだけ距離が近い。


「……じゃあさ」


つばきが言う。


「もう一個」


「まだあるのかよ」


「当たり前じゃん」


少しだけ笑う。


「……あたしのこと」


一瞬だけ、間を置く。


「どう思ってる?」


「……」


足が止まりそうになる。


でも、


止まらない。


「……どうって」


「そのまま」


つばきは前を向いたまま言う。


「前と同じ?」


「……」


言葉が詰まる。


でも、逃げたくはなかった。


「……違う」

はっきり言う。


「どう違うの」


「……」


少しだけ、息を吸う。


「ちゃんと見たら」


言葉を選ぶ。


「思ってたより、めんどくさい」


「は?」


即座に返ってくる。


「なんだそれ」


「でも」


続ける。


「思ってたより、ちゃんと考えてるし」


「……」


「思ってたより、分かりにくい」


「……」


「でも」


少しだけ笑う。


「前よりは、分かりたいって思ってる」


「……」


つばきが止まる。


今度は、


完全に足を止める。


「……なにそれ」


小さく言う。


でも、


その声は、


さっきよりもずっと静かだった。


「……そのまま」


答える。


「……」


沈黙。


風が吹く。


「……合格」


ぽつりと、

つばきが言う。


「……え」


思わず聞き返す。


つばきは少しだけこっちを見て、



「一応ね」


少しだけ笑う。


今度は、


さっきよりも、


ちゃんとしている笑いだった。


「……」


胸の奥が、


少しだけ軽くなる。


「……まだ終わりじゃないけど」


つばきが続ける。


「分かってるよ」


「ならいい」


また歩き出す。


その横顔は、


昨日より少しだけ、


近く感じた。


「……」


夕焼けの中、


並んで歩く。


昨日より、

少しだけ、

距離が縮まっていた。


────────────────────


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