あんたの裏側
正直、あいつのことは、ずっと分かってるつもりだった。
中学の頃から、変わってない。
——いや、
変わってないと思ってた。
「……はあ」
一人で歩きながら、小さく息を吐く。
さっきのやりとりが、頭から離れない。
“ちゃんと見てる”
“これから見ていく”
あんなこと
あいつが言うとは思ってなかった。
「……ほんと、変」
ぽつりと呟く。
文化祭のざわめきが、遠くに聞こえる。
さっきまで一緒にいたのに、
今は少しだけ離れてるだけで、
妙に静かに感じた。
あいつは、
昔から分かりやすいやつだった。
優しくて、
でもちょっと適当で、
誰にでもいい顔して、
——で、
勝手に人を決めつける。
「……」
思い出す。
中学のとき。
あいつは、よく言ってた。
『つばきってさ、いいやつだよな』
『しっかりしてるし』
『頼れるし』
——そのたびに、
なんとなく、引っかかってた。
「……別に」
小さく呟く。
悪い意味じゃない。
でも、
それって、なんか違う気がしてた。
見られてるっていうより、
“決められてる”感じ。
だから、
少しだけ距離を置いた。
それでも、
完全に離れることはなかった。
「……なんでだろ」
自分でもよく分からない。
嫌いだったわけじゃない。
むしろ、
一緒にいると楽だったし、
変に気を使わなくていいし。
——ただ、
ちゃんと見られてない感じが、
少しだけ、嫌だった。
「……」
足を止める。
さっきの顔が浮かぶ。
手紙を渡してきたときの顔。
あんな顔、
見たことなかった。
「……」
少しだけ、胸がざわつく。
あいつは、
あんな風に言った。
“ちゃんと見たやつ”
“前とは違う”
「……ほんとに?」
疑うように呟く。
簡単には信じられない。
今までがあるから。
でも——
「……」
思い出す。
たこ焼きのとき。
変な質問してきたとき。
中庭でのやりとり。
あれは、
確かに、
今までのあいつじゃなかった。
「……」
小さく、息を吐く。
「……ずる」
ぽつりと漏れる。
今さら、
そんな風に変わるなんて。
「……」
でも、
少しだけ。
ほんの少しだけ。
「……悪くないかも」
自分でも驚くくらい、
自然にそう思っていた。
風が吹く。
髪が揺れる。
文化祭の音が、また少し近づいてくる。
「……ちゃんと見てよね」
小さく呟く。
さっき言った言葉を、
もう一度なぞるみたいに。
「今度は」
続けて、
少しだけ笑う。
「ちゃんと、見るからさ」
その言葉は、
誰にも聞こえない。
でも、
確かに、
自分の中で何かが変わった気がした。
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