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恋の2度見  作者: 乃菜
14/32

実像の再認

「……俺の方か」


口に出した瞬間、


胸の奥で何かが、すとんと落ちた気がした。


つばきは、まだ少しだけ不思議そうな顔をしている。


「さっきから、ほんと変だよ」


「……そうだな」


否定しなかった。


もう、できなかった。


「何があったの」


少しだけ真面目な声。


その問いに、

今までの俺なら適当に誤魔化していたはずなのに─


「……俺さ」

言葉が、自然と出てきた。


「お前のこと、ちゃんと見てなかったのかもしれない」



つばきが、ぴくっと反応する。


「は?」


「勝手にさ」

自分でも驚くくらい、言葉が出てくる。


「こういうやつだって、決めつけて」


「優しくて、いいやつで」


「……そういうとこしか、見れてなかった」


つばきは何も言わない。

ただ、じっとこっちを見ている。


「でもさ」


喉が、少しだけ詰まる。


「それって、“その人を見てる”って言わないよな」


やっと、分かった気がした。


「……ただ、都合よく見てただけだ」


風が、少しだけ吹いた。

中庭の木が揺れて、葉の音が小さく鳴る。


「……なにそれ」


つばきが、ぽつりと呟く。


「急にどうしたの」


「わかんねえ」


正直に言う。


「でも、なんか……」


言葉を探す。

うまく言えない。

でも、このまま黙るのは、違う気がした。


「今までの俺、ちょっとおかしかった気がする」


つばきは、少しだけ目を細める。


「……ちょっと、ね」


「いや、結構」


苦笑いが漏れる。


つばきも、小さく笑った。


その空気が、少しだけ軽くなる。


「……でもさ」


つばきが、ゆっくり口を開く。


「それ、今さらじゃない?」


「……え」


「別にさ」


肩をすくめる。


「最初から、そうだったじゃん」


「……」


「勝手に理想作って、勝手に納得して」


少しだけ、視線を逸らす。


「それでいいなら、別にいいと思ってたし」


その言い方は、


責めてるわけでもなくて、

でも、優しいわけでもなくて。


ただ、事実を言ってるだけで。


───それが、やけに刺さる。


「……悪い」


思わず、そう言っていた。


つばきは、少しだけ驚いた顔をして、


「なんで謝るの」


「いや……なんか」


自分でもよくわからない。


でも、

謝らないといけない気がした。


「……まあいいけど」


つばきはそれ以上何も言わなかった。


ただ、少しだけ空を見上げる。


「でもさ」


ぽつりと続ける。


「今の方が、ちゃんと見てる感じする」


「……え」


「前よりマシ」


軽く言う。


でも、その一言が、


胸の奥にじんわりと広がった。


「……そっか」


それしか言えなかった。


沈黙が落ちる。

でも、さっきまでの重さとは違う。

少しだけ、軽くて居心地がいい沈黙。


「なあ」


もう一度、口を開く。


「なんかさ」


つばきがこちらを見る。


「もう一回、ちゃんと見てもいいか」


「……は?」


「お前のこと」


真っ直ぐ、言う。

逃げずに。


「今度は、ちゃんと」


つばきは一瞬だけ固まって、


それから、


「……なにそれ」


少しだけ笑った。


でも、その笑い方は────


さっきまでとは少し違っていた。


「変なの」


「うるせえ」


言い返す。


「まあいいけど」


つばきは、少しだけ前を向く。


「勝手にすれば」


そっけない言い方。


でも、


「……ただし」


少しだけ振り返る。


「ちゃんと見てよね」


その目は、


どこまでもまっすぐだった。


「……ああ」


今度は、ちゃんと頷けた。


────やっと、


同じものを見始めた気がした。


────────────────────


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