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ルビーのピンチ

「ううん。これで全ての仕事は終わりだな」

 レインが帰った後。ルビーは全ての仕事を終えて伸びをした。


 しかし今日はレインが居てくれて助かった。

 自分一人なら予算が圧迫されて大変だっただろう。


 レインは普段寝ているが、やはりこういう時役に立つ。

 ルビーはレインが来るまでの間、誰も生徒会に入れようとはしなかった。

 自分一人で完璧に仕事をこなせるし、誰かに負担をかけるのは苦手だったからだ。

 しかし、やはり人手はあった方が良い。

 彼を生徒会に入れて本当に良かったとルビーは思う。


 しかしレインには少し謎がある。

 彼は時々、上級生が使うような魔法を使い、その使い方も、素晴しいものがある。

 魔法の才能も筆記の才能も本気を出せば余裕で学年一位を取れるのに、何故取ろうとしない?

 彼は一体何の為にこの学園に来たのだろう?


 キンコーン。カンコーン

 そんな考え事をしている間に下校時間を告げるチャイムが鳴った。

 早く帰らないと。ルビーは鞄を手に取り帰路に着こうとする。

 その時、コンコンと生徒会室の扉がノックされた。

 ん? こんな時間に誰だろう?


「ん? 誰だ?」

 ルビーはノックに反応する。

「いやはや、会長、もうお帰りですか?」

 扉を開けて生徒会室に入って来たのは昨日、ゾロール人の教科書を奪いイジメをしていた生徒の一人だ。


「君か、一体何の用だ」

「会長、少し手伝ってくれませんか?」

「手伝う、何を?」


「実は友達が体育倉庫で怪我をしてしまいまして、保健室に運ぶをのを手伝って欲しいんです」

「何!? それは大変だ。向かうとしよう」

 怪我をしている生徒が居るなら早く助けないと。

 ルビーは椅子から立ち上がり体育倉庫へと向かった。


 ミラリス魔法学校の体育倉庫は、マットやサッカーボールが置かれているカゴなど、体育で使うものは一通り揃っている。

 そろそろ日暮れとあって少々暗い。

 倉庫にたどり着いたルビーは、怪我をしている生徒を探して、倉庫の中を探しまわる、しかし──。


「ん? 怪我をしている生徒など居ないぞ」

 ルビーは倉庫の中を探しまわるが怪我をしている生徒は居そうに無かった。

 それどころかイジメっ子の生徒、ルビーを除いて人の姿が一人も見えない。


「怪我をしている生徒は何処にい……」

 バタン。

 ルビーが怪我をしている生徒の居場所を訪ねようとした時。イジメっ子の生徒は体育倉庫の扉を閉めた。

「いやはや会長、やっと二人きりになれたね」

「……何の真似だ?」

 ルビーは警戒心を強め杖を構えた。

「そう警戒しないで下さい。俺は只、話合いをしたかっただけです」

「話し合い? 人を閉じ込めておいて話し合いとは笑わせる」


 相手は明らかな悪意を持っている。

 しかも昨日、人をイジメていたばかり。

 一体、何をするつもりだ?


「いやはや、会長、俺は只、公平を求めているだけなんです」

「公平? 私は出来る限り公平に務めているが?」

「昨日、ゾロール人を贔屓していたでしょう? あれを辞めて欲しいんです」

「あれを贔屓というのなら君の目と心は腐っているな」


「ちっ、うるせーな。俺達はゾロールが、この国から出て行ってもらわねーと困るんだよ。その邪魔をすんじゃねーよ!」

 急に声を荒げるイジメっ子。不快な声がルビーの耳に響く。


「昨日言ったように私もゾロール人だが?」

「あぁそうだ。あんたにも最終的には出ていって貰う。そうしないと、この国は腐ったままだ!」

「まるで、この国が腐ったのはゾロール人がいけないみたいな言い方だな。この国は、ほとんどマッセール人しか居ないんだぞ。ならば、この国が腐った原因はマッセール人に……」


「うるせー! ゾロール人がいけないんだ。ゾロールさえ居なければ、ゾロールさえ居なければ……」

 最早、この男に話は通じない。ルビーは、そう思った。

「で、こん所に閉じ込めて、私をどうするつもりだ?」


「勿論、納得して貰うまで、ここで話を付ける」

「納得しなかったら、どうする?」

「力づくでも納得して貰うさ! レ・ファイアブル!(炎よ、放て!)」

 イジメっ子は呪文を唱えた。杖の先から炎が放たれる。


「レ・ファイアブル!(炎よ、放て!)」

 ルビーも対抗するように炎の呪文を唱えた。

 拮抗する炎と炎。しかしルビーの方が強い。

 ルビーの炎が押し切り、イジメっ子に命中した。


「ぐわぁああ!」

 炎に焼かれ、悶絶するイジメっ子。

 ルビーの魔法の実力は学年トップ。

 正直言って男一人では彼女を止められるはずはない。


「馬鹿な真似は辞めるんだ。私には勝て無いぞ」

 ルビーが優しく問いかける。

 しかし何故かイジメっ子は不適な笑みを浮かべていた。

「チェーンフロアサイド!」

 イジメっ子が謎の呪文を唱える。

 ルビーでさえも聞いた事のない呪文だ。

 一体何が来る?


 ルビーが構えた、次の瞬間。

 彼女の真上天井に魔法陣が出現。

 その魔法陣から巨大な鎖が出現し彼女の両手を縛り上げた。


「くっ、これは何だ?」

 見たことのない魔法の鎖に縛り上げられるルビー。

 彼女は必死に鎖を解こうとするが、鎖が頑丈で人の力では無理だ。


「ははは。トラップ魔法チェーンフロアサイドだ! この魔法は魔法陣を構築するのに半日はかかるが、真下にいる人間を鎖で縛り上げる。これでお前も動けないだろう!」


「チェーンフロアサイド。聞いた事のない魔法だ……」

「この魔法は王家の人間と警察位しか知る事の出来ない魔法なんだよ!」

「王家の人間と警察しか知り得ない魔法? なんで、そんなものを君が?」

「俺の父親は警察だ! 棚にあった魔法書を、こっそり盗んだ。だから俺も使えるんだよ!」

 そういう事か。しかし──。

「明らかな違法行為だぞ」


「お前を捕まえるのは至難の技だからな。捕まえる事が出来れば何でも良いんだよ!」

 トラップ魔法により形成逆転。ルビーはピンチに陥った。

「さて、ルビー会長、流石のあんたも、この鎖から抜け出す事は不可能のはず。その意味、分かるよな〜?」


 イジメっ子は脅迫する。この体育倉庫は、この時間帯、人は来ない。

 助けを呼ぶ事は不可能だった。

「ちなみに、この鎖、俺の合図で強力な電流が流れる仕様になっている。果たしてあんたに耐えられるかな?」


 このままでは彼の言い分を飲み込まないといけなくなる。

 そんな事は絶対に嫌だ。

「俺達がゾロール人に手出しをしていても見逃せ。先公にもちくんじゃね〜ぞ。後、今日からお前は俺の奴隷な」

 イジメっ子はイジメを見逃せと言って来る。

 それに対してルビーの返答は……。


「ふっ、私がイジメを見逃す訳ないだろう。笑わせるな」

 答えは勿論Noだ。

「あぁ、そうか。なら痛い目にあってもらう! 一生、マッセール人に逆らえないようにな!」

 イジメっ子は杖を構えた。流石のルビーも電流は耐えられないだろう。

 助けを呼ぶ事は不可能。鎖も解けない。

 一体、どうすれば良い?

 ルビーは考えるが答えが出ずにいる。


 もう無理かと諦めかけた、その時。

「ファイアーボール!」

 炎の弾が体育倉庫の扉を破壊した。

 そこに居たのはレインだった。



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