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助けに来たのは

「な、お前は……」

 イジメっ子が驚く。レインの登場は予想外だったみたいだ。


「会長、今、助けます」

 レインは静かに告げる。しかし、その声には確かな怒りが灯っている。

「クソッ、何で、お前が、ここに?」


「生徒会室を出てから、なんか人の気配がしたからつけてたんだよ」

「ちっ、つけられてたか。でも、まだだ!」

 イジメっ子は鎖で縛られているルビーの背後へとまわり、杖を彼女に突きつけた。


「良いか。そこを動くなよ。動いたら、この女に電流を流す。これは、そういう魔法だ!」

 イジメっ子はルビーを人質に取った。

 レインが一歩でも動けば彼女に電流が流れてしまう。


 しかし、レインは冷静で。

「ファルフィアンティア」

 レインは呪文を唱える。

 するとルビーの真上、体育倉庫の魔法陣が消え、ルビーを縛っていた鎖がバラバラになって散った。

「な、何故?」


「その魔法は呪文さえ知っていれば、誰でも解ける。初歩のトラップ魔法だよ」

「違う! そうじゃない。何故、お前は、この魔法を解くことの出来る呪文を知っている?」

 イジメっ子は、かなり動揺しているようだ。

 それもそのはず、この魔法は王家の人間と警察の人間しか知らない魔法。

 一般人であるレインが、その解き方を知っているはずが無い。


「何故かって? 確かに、この魔法は王家の人間と警察にしか解く事は出来ない」

「そうだ! 何故、お前は、この魔法を解く事が出来る?」

「僕は警察の人間ではない。たから答えは一つだけだよ」

「一つだけ? ……はっ、まさか!?」

 イジメっ子は一つの結論に、たどり着いた様子。

 そう、僕は──。


「僕の名前はレイン・ヴィシュタルト。マッセール王国、現国王、クロス・ヴィシュタルトの弟だ」

 レインがイジメっ子とルビーに真実を告げる。

 レインはマッセール王国の現国王の弟。 

 兄に万が一の事があった際、王位継承権を持つ。


「ななな、そんな馬鹿なクロス国王陛下の弟は死んだはずじゃ!?」

「死体は見つかっていないよ。僕は生きている」

「……お前じゃあ、あの噂は本当なのか?」

「あの噂?」


「レイン王子は、とてつもない変わった思想を持っている。だからクロス国王陛下に排除された。それは本当なのか?」

「……あぁ、僕は、変わっているなんて思っていないけど、兄から見たら、そうらしいね」

「やっぱり、そうなのか。噂は本当だったのか……」


「所で話は変わるけど、君は、この後、どうするんだい?」

 レインは杖を構えた。

「僕と、やり合うのか?」

「ひ、ひぃ〜、滅相もございません。お許し下さい〜」


 イジメっ子は土下座をして謝罪する。

 流石に王子が相手では勝ち目は無いと悟ったらしい。

 レインが生きている事は絶対口外しないと約束し去って行った。


「大丈夫ですか? 会長」

「あぁ、縛られていただけだ。問題は無い」

 イジメっ子は去り、会長を救出したレイン。

 彼女に傷は無く無事のようだ。


「しかし、驚いたな。まさか君が、この国の王子だったなんて」

「まだ、隠しておくつもりだったんですが……」

「なんで公表しないんだ?」


「僕は、兄に命を狙われています。世間に生きている事がバレれると色々と厄介なんです」

「なるほど、……ちなみに私の喋り方は変えた方が良いのか?」

「いえ、変えないで下さい。変えられると困ります」

「そうか。なら良かった」


「では、怪我は無いようなので、僕は、これで」

「あぁ、レイン、最後に一つ聞いても良いか?」

「なんです?」

「さっき、あの男が言っていた。思想というのが気になる」

「思想? ですか?」


「あぁ、君は一体、何を考えているんだ?」

「……」

「知りたい。もしよかったらで良いから聞かせてくれないか?」


「……分かりました。僕の考えている事は、”思想”というより”夢”に近いのかもしれません」

「”夢”か……」

「会長、何故、人はマッセールだとか、ゾロールだとか言って争うのでしょう?」

「……複雑過ぎて分からないな」


「えぇ、それも一つの答えかもしれません。しかし、僕は領域国民国民こそが諸悪の根源だと考えています」

「領域国民国家?」

「えぇ、人間を国境で分断し、争い憎しみあわせ、戦争まで起こす。領域国民国家は人間の真の自由を奪う。良くないシステムなんです」

「……」

「僕は、世界中から、この領域国民国家を無くす事を人生の目的にしています。領域国民国家を無くし人の移動が自由になれば問題も起きるでしょう。しかし、それでも生まれた国で人生が決まるなんて、あってはならない事だと思うんです」


「じゃあ、君は……」

「えぇ、僕は、いずれ兄を倒して、この国の王になる予定です。そして、この世界から国境を無くします」



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