カスタネット部とは
「ううむ、でもレイン、あの石、ちょっと丸かったぞ」
「会長、しっかりして下さい。先行きが不安です……」
ちょっと石部に興味が出てきたルビーをなんとか引き剥がし、レインは予算アップを掲げる次の部活を探して廊下を進んでいく。
「会長、次の部活は何処ですか?」
「あぁ、ここになるな」
レインとルビー、二人は『カスタネット部』と書かれた部室の前に立っていた。
「カスタネット部? なんですか、ここは?」
「どうやらカスタネットの音色を極める部活らしい。私も詳しくは知らないな」
カスタネットの音色を極める? 変な部活しかないな。この学校。
「よし、では入ってみるとしよう」
ルビーが部室の扉を開いた。
カスタネット部の部室は部室の中央に四つの机があり、その机の真ん中にカスタネットが一つ置かれていた。
他にカスタネットらしきものは一つも無い。部員の数はさっきと同じ五人だった。
「いや、なんでカスタネット部なのに、カスタネットが一つなんですか……」
「さぁ、なんでだろうな?」
首をかしげる二人。部長らしき人物が声をかけてきた。
「いらっしゃ~い。この部活に何のよう?」
「あぁ、生徒会だ。君達の予算を上げるべきか調査しにきた」
「あぁ、ルビー会長。良く来て下さいました。さささ、こちらへ」
レインとルビー二人はカスタネット部、部長に促され椅子に座る。
「私、カスタネット部、部長のキャサリンです。で、こっちが、うちのエース、エリザベスよ」
部長に言われてエリザベスがペコリとお辞儀をする。
「キャサリンさん、なんで、この部活カスタネット部なのに、カスタネットが一つしかないんですか?」
「くくく、そこの君」
「レインです」
「レイン君、うちにはカスタネットが一つで十分なのよ。私達は、このカスタネットで素晴らしい音色を奏でる事が出来るの」
「は、はぁ」
「その音色は聞くものを魅了し狂われる。その実力、しかと見て頂戴!」
狂わせちゃ駄目だろう。と思いつつ。
キャサリン部長に促されてエリザベスがカスタネットを持った。
正直言ってカスタネットの音色の違いなんてレインには分からない。
一体どんな音色を聞けるのだろうか?
ちょっとばかり期待しているレイン。そして次の瞬間。
ドコドコドコドコドコ!
別の部員達がエリザベスを挟むようにして太鼓を鳴らし始めた。
何か曲を奏でている訳ではない、只大音量で太鼓を鳴らしているだけである。
え? 何これ? 何かの儀式?
演奏というより何かの儀式を行っているかのように見えるカスタネット部員達に戸惑うレイン。
「カスタネット、参ります!」
エリザベスがカスタネットを顔の近くまで持ち上げる。
ドコドコドコドコドコ!
尚も鳴り響く太鼓の音。部室全体に緊張感が走った。
ドドン!
太鼓の音が終わる。皆の視線が一気にエリザベスに注がれた。
カチン!
エリザベスはカスタネットを鳴らした。その音色は可もなく不可もなくといった感じだ。
「素晴らしいわ〜、今日の演奏も百点満点よ。エリザベスさん」
「え? 終わり!? もっとなんかあるんじゃないですか?」
「カスタネットを鳴らすのは一回きり、それがカスタネット道というものよ。レイン君」
「なんですか? カスタネット道って太鼓鳴らしている時間の方が長かったですよね?」
あまりのカスタネットの時間の短さに戸惑うレイン。それでもキャサリンは話を続ける。
「それで会長、予算アップの件なんだけどね」
「いや、カスタネット、一回鳴らしただけじゃん! 予算上げる必要あります!?」
「私達、カスタネットマスターのジョーを呼んで、カスタネット指導をしてもらいたいのよ」
「カスタネットマスターのジョー? 誰ですか? それ」
「カスタネットマスターのジョーは、まさにカスタネット道の頂点に君臨する人、そのカスタネットは一度鳴らすだけで戦争が止まり、病気の人間を完治させると言われているわ」
「そんな人居る訳ないでしょ!」
「会長、お願い~、私達、どうしてもカスタネットマスターのジョーに会いたいのよ。その為の予算アップお願い出来ないかしら?」
こんなお願いを受け入れては予算が持たない。ここは会長、鉄の意思で断って下さい。
「ううむ。さっきのカスタネット、確かに良い音色を放っていたな~」
「何、ちょっと揺らいでるんですか!? 断って下さい!」
「いや、しかしレイン、あのカスタネットの音色は中々のものだったぞ」
レインとルビー二人はカスタネット部の部室を出て廊下を歩いている。
「いや、あんな音、誰でも出せますよ。会長、しっかりして下さい……」
放っておけば安々と予算を上げてしまいそうなルビーを静止してレインは次の目的地へと向かっていた。
「で? 会長、次の目的地は何処なんです?」
「うむ、次の部活が最後になるな」




