石部へ行こう
「ふわ~、今日も眠いな」
翌日の放課後。授業中眠り放しだったレインは生徒会室の扉の前に来ていた。
「なんで生徒会って毎日あるんだろう。めんどくさいなぁ~」
しかし役員を任されたい以上、サボるわけにも行かない。
今日もルビーと二人きりの生徒会活動をするため、レインは扉を開く。
「む、待っていたぞ。レイン。今日はちょっと着いてきてくれないか?」
「え、書類仕事はどうしたんですか? 会長」
「そんなものは、とっくのとうに終わったよ」
「相変わらず仕事が早い……、で、どこに向かうんです?」
「今日はとある部活が予算アップして欲しいという要望があってな、実際見て予算を上げるべきか判断したいんだ」
「部活の予算アップですか……、で、どの部活が、そんな事を考えているんです?」
「それは来てもらえれば分かる。行くぞ、レイン!」
レインとルビー、二人は予算を上げるべきか検討するため部室へと向かった。
「一つめの部活は、ここだな」
レインとルビー二人は『石部』と書かれている部室の前に立っていた。
「い、石部ってなんですか?」
サッカー部や野球部なら分かる。しかし石部なんて聞いた事が無い。
「なんでも美しい石、美石を見つける為に発足された部活らしい」
「いや、聞いても分からないんですが……」
え、こんな訳の分からない部活の為に時間割くの?
「会長、石拾ってくるだけの部活でしょう? 予算アップなんてしなくても大丈夫なんじゃ……」
「いや、実際の活動内容を見てみないと。それは分からない。行くぞ。レイン」
ルビーが率先して部室の扉を開いた。
「生徒会だ。君達の部活の予算を上げていいか。審査しに来たぞ」
石部とあって部室には棚のようなものが置かれ様々な形の石が置かれている。
部員は五人程。全員男子部員で坊主頭だった。
「あ、会長、お待ちしておりました~」
部長? らしき人物がルビーにすり寄る。
「石部の部長か?」
「えぇ、そうです。石部部長、ミッケルです。宜しくお願いします~」
「ミッケル、ミラリス魔法学校の予算が残念ながら厳しいんだ。余程の事がないと、予算は上げられないぞ」
「ご安心下さい。会長もきっと石の魅力が分かります。まずはこちらの石をご覧下さい」
そう言って部長は棚の中から、石を一つ取り出す。
薄いような、厚いような、丸い石だった。
「見て下さい、この完璧な丸み! この丸みのある石はそうそう見つかりませんよ」
「いや、普通の石でしょ。河原とかで拾えるでしょ」
思わず割って入るレイン。
「貴方、この石の素晴らしさが分からないのですか! この石は将来一億ルーク(ルークとはマッセール王国の通貨単位)で取引されても可笑しくはないのですよ!」
「こんな、どこでも拾えそうな石が一億いくわけないでしょ! ていうか本当に一億いくんだったら、もっと大事な所にしまえ!」
「ええい、貴方は芸術というものを分かっていないのです。会長どうですか?」
「ううむ、確かにレインの言う通り、河原で拾えそうな石に見えるが……実際は何処で拾ったんだ?」
「近所の河原です」
河原じゃねーか!
「ミッケル、残念だが、この石では予算アップは難し……」
「待って下さい! この石はいわば前座です。本当に素晴らしい石は他にもあるんです」
「いや、石の時点で駄目だと思うんですが……」
「モールス、あの石を、この人達にあの石を見せてやりなさい!」
モールスと呼ばれた一人の青年が、すっと奥の椅子から立ち上がった。
「うちのエース、モールスです。彼は石の為にアッシル合衆国に留学した男です。その実力は確かなものですよ!」
石の為に留学? どういう事?
「部長、そこを退いて下さい。俺の石で、予算アップを実現してみせます」
そう言ってモールスが鞄の中から石を取り出そうとする。
外国に留学してまで見つけてきた石。ちょっと気になるな。
一体どんな石が出てくるんだ?
「こちらになります」
モールスが取り出した石は薄くも厚くもない丸い石だった。
「いや、さっきと一緒じゃないか! さっきの河原で拾っただろ。これ!」
姿形は、さっきの石とまるで一緒。これのどこがエースの石なんだ。
「いやはや、この丸み、やはりモールスの石はやはり丸みが違いますな~、この石なら将来二億はいきますぞ」
「いくか! ていゆーかさっきから、あんた丸みしか褒めてねーじゃねーか!」
どう考えても、この部活の予算アップは無理だろう。
「なるほど、確かに、さっきの石より、幾分か丸い気がするな」
え? 会長、まさかの乗り気? この石の違いが分かるの?
「おお、やはりルビー会長は芸術というものが分かっておられる」
「因みに予算を上げたら何に使う気なんだ?」
え? まさかの交渉に進展あり? 大丈夫か、この人。
「石を掘り起こすための重機を買う予定です」
「却下です!」




