謝道との出会い
「ううう、僕は、どうすれば良いんだ」
教室に戻ったレインは、かなり悩んでいた。
自分は会長に完全に嫌われている。
その事は目立たないを信条にしている彼の学校生活に支障をきたすだろう。
一体、どうすれば良いんだ。
「しゃしゃしゃ、お困りのようですね」
悩んでいるレインの元に一人の男子生徒が声をかけて来た。
「うん、君は?」
「私の名前は、ハロルド、謝道を極めしもの」
「謝道って何?」
「謝道とは、文字通り、謝る、謝罪の道を極めし者の名。君は今、謝罪したい人がいるんだろう?」
「は、何故、分かったんですか!」
「謝道を極めた私には、そのくらい造作もない事です」
「まさか、貴方について行けば会長に謝罪出来るんですか?」
「あのルビー会長に謝罪するのは簡単な道ではありません。しかし私についてくれば道は開けるでしょう」
「しかし、僕には貴方の実力が、どんなものか分かりません」
「ついてきなさい。謝道の素晴らしさ、とくと、ご覧に入れましょう」
この男について行けば、会長に謝る事が出来るかも知れない。
レインは謝道を極めし男、ハロルドについて行く事にした。
「ハロルド、謝道とは、何をするんです?」
「先ずは、私の謝罪を、ご覧になって下さい」
「ハロルドの謝罪ですか?」
しかし、謝罪するには相手が必要だ。
そう簡単に謝罪する相手など見つかるだろうか?
「ちょっとハロルド!」
一人のギャルっぽい生徒がハロルドに声をかけて来た。
「貴方、二股してたでしょ! 私をおいて、どういうつもり!」
どうやら、このギャルはハロルドの彼女で、ハロルドが浮気をしていた事に、かなり怒っているようだ。
この状況、ハロルドはどう切り抜ける。
「大変、申し訳ございませんでしたー!」
ハロルドは流れるような土下座を決めた。
その姿は美しく、まるでバレリーナのダンスを見ているかのようである。
「私はクズです。大変申し訳ございませんでしたー!」
ハロルドは一切の非を認め、ギャルに謝罪している。
さて、相手の反応はどうだ?
「ふん、分かれば良いのよ。もうしない事ね」
なんと、ギャルがハロルドを、すんなりと許した。
これは凄い。これが謝道!
ギャルは去って行く。そしてハロルドが、すっと立ち上がった。
「これが、謝道の入門編のようなものです。お分かり頂けましたか?」
「はい。素晴らしいです。謝道」
これなら会長に謝罪出来るかも知れない。
レインに希望の光が芽生えてきた。
「しかし、相手はルビー会長、入門編だけでは、もの足りないかもしれません」
「え、まだ足りないんですか?」
その時、向こうの方からチンピラらしき人物が歩いてくる。
「丁度良い、謝道の中級編、ご覧に入れましょう」
ハロルドはチンピラと向かい合った。
「おい、ハロルド、てめぇ、俺から借りた五十万ルーク、返せや!」
威圧的な態度で、ハロルドに金を返せと脅しをかけるチンピラ。
てゆーか、ハロルド、お金借りてたんだ。クズだな。
一体、ハロルドが、どうやって謝るのか、見守るレイン。
そしてハロルドは脚立を用意した。
そして、その上に登るハロルド。
そして彼は、そこから勢い良く飛び降り、頭を地面にこすりつけた。
「大変、申し訳ございませんでしたー!」
な、脚立のてっぺんからダイビング土下座!
見た事ない土下座にレインは驚く。
「私が全て悪いんです。大変申し訳ございませんでしたー!」
お金は返す気の無さそうな。ハロルドのダイビング土下座が決まった。
果たして相手の反応は?
「ふん、もう、こんな真似すんなよ」
なんと許してくれた!
お金返してないのにチンピラが去って行く。
凄い、凄いぞ。謝道。
「まぁ、こんなものですかね」
「凄いじゃないですか。謝道。お金返してないのにチンピラが去っていきましたよ」
「いえ、謝道の道は、こんなものではありません。この上、上級者編が存在するのです」
「上級者編……」
そんな話しをしていると向こうの方から、ブチギレた三十代くらいの男がやって来た。
「丁度良いでしょう。謝道上級者編、貴方には、お見せ致します」
三十代の男と向き合うハロルド。
「てめぇ、俺ん家、燃やしやがったな。住む所無くなったじゃねーか。どうしてくれんだ、あぁん!」
三十代の男は、かなりブチギレている。
てゆーかハロルド人の家燃やしたのか、犯罪者じゃん。
レインはハロルドが、どうするのか見守る。
そしてハロルドは立ったまま。
男に謝罪した。
「大変申し訳ございません! 大変申し訳ございませんー!」
敢えてハロルドは土下座をしない。
立ったまま、男に謝罪している。
こんな謝罪で良いのか。
しかしハロルドの謝罪の勢いは凄まじい。
果たして相手の反応は?
「ふん、分かりゃ良いんだ。二度とするなよ」
なんとハロルドの事を許した。
普通、こんな謝罪では許しはしないだろう。
最早、相手の懐のデカさが凄いだけじゃねと思わせるかのような謝道の素晴らしさに感動するレイン。
「まぁ、こんな所だね」
男が去った後、襟を正すハロルド。
「凄いです。ハロルド。どうやったら、こんな謝罪が出来るんですか?」
「君も謝道の道を極めれば出来る。一緒に特訓だ」
こうしてレインは、謝道を極める為、ハロルドとの特訓を開始した。




