謝道の結末
「うーん。どうしたら良いんだ? 私は?」
廊下を歩きながら、ルビーは悩んでいた。
一目惚れしたレインと、なんとしても、お近づきになりたい。
しかし、こんな経験は初めてで戸惑っているのも事実。
折角、レインが声をかけてくれたのも無視してしまった。
このままでは彼に嫌われてしまう。
その事は、なんとしても避けないと。
「よし。やはり、会って、きちんと前回の事は謝るべきだ。そうしよう」
ルビーは、そう決意して廊下を歩いて行く。
その目の前にレインが現れた。
「は、君は……」
「会長、お話があります」
お話、一体なんだろう?
戸惑うルビーの前に、レインは脚立を用意する。
そして、その脚立に素早く登る。
そして頂上に立ち。
そして素早くダイビング。
そのまま立ったまま、心は土下座を決めた。
「申し訳ございません。会長、僕が悪かったです。申し訳ございませんー!」
レインは渾身の謝道の土下座を決めた。
え? 一体、何?
突然の出来事に戸惑うルビー。
「いや、君は一体、何をしているんだ?」
「申し訳ございません。申し訳ございませーん!」
謝道の極意は、兎に角、相手が許してくれるまで謝る事だと教わった。
レインは土下座も決め、ルビーに謝罪する。
「いや、頭を上げてくれ。私は君に謝られるような事は何もしていないぞ」
ルビーは必死に、レインの頭を上げようとするが、レインは一向に上げようとはしなかった。
一方、その真横の教室では。
「うしゃー、今日は、植物を巨大化する呪文と、呪文を操る呪文かけちゃうぞー」
「良いねー」
教室の中で、二人の一年生が新しく習った魔法を試そうとしていた。
「プラントジャイアント」
そして植木鉢に入った植物を大きくする。
みるみるうちに巨大化していく植物。
「しまった! 大きくし過ぎた!」
その巨大化のスピードは、凄まじくコントロールする事が出来ない。
「お、おい、これ、どうするんだよ?」
「と、取り敢えず逃げろー!」
二人の学生は巨大化していく植物から、取り敢えず逃げる事にした。
「申し訳ございませんでしたー!」
「いや、兎に角、頭を上げてくれ。何故、謝罪するんだ?」
ルビーは戸惑っていた。
何故、彼は私に謝罪する?
私は何かしたのか?
過去の記憶を遡っても思い当たる節は無い。
それでも考えるルビー。
それ故、真横の巨大化する植物に気づくのが遅れてしまった。
凄まじい轟音と共に太い植物のツタが教室の窓を、ぶち破り、ルビーとレインに襲いかかる。
「! 危ない」
ルビーはとっさにレインを庇い前に立つ。
その植物のツタはルビーに命中。
彼女は、ふっ飛ばされてしまった。
更に、ふっ飛ばされた先は運悪く窓の外。
ここは実験棟の三階。
落ちればルビーでもタダでは済まないだろう。
浮遊魔法は間に合わないだろうな。
落下しながらルビーは、そんな事を考えていた。
このまま自分は、落ちて死ぬのだろうか?
出来れば、あの男の事をもっと知りたかった。
しかし、それは叶わぬ夢。自分は落ちて死ぬのだから。
「大丈夫ですか? 会長」
うん? 可笑しいな。あの男の声が聞こえる。
そして身体は何処も痛く無い。
というより、何か心地よいものに支えられている気がする。
それはレインだった。彼は浮遊魔法を使い、瞬時に飛んでルビーの事をお姫様抱っこで支えていたのだ。
「君は、私の事を助けてくれたのか?」
「えぇ、当然じゃないですか」
レインは、ゆっくりと降りて無事に着地した。
ルビーは助かったのだ。
「ありがとう。ええっと」
「レインです。僕の名前はレインです」
レイン。やっと名前を知る事が出来た。
そしてルビーは自覚する。
自分は、このレインの事が好きなのだと。
「レイン、生徒会に入ってくれないか?」
「はい?」
「実は、今、私は生徒会に入ってくれる人材を探しているんだ。君ならぴったりだと思うんだ」
「いえ、僕には務まりませんよ」
「いや、君なら出来る。私が言うのだから間違いは無い。是非とも生徒会に入ってくれ」
「は、はぁ」
ルビーの誘いを無下に断る訳にも行かずレインは半ば押し切られる形で生徒会入りを決意する。
その後、色々会ったが生徒会入りは一応後悔はしていない。
こうしてレインは生徒会に入ったのである。
「はっ」
生徒会室にて、今日も眠りから目を覚ましたレイン。
その姿をルビーは聖母のような笑顔で見守っていた。
「ん? どうしたんです。会長」
「いや、君の寝顔を見ながら、君と会った日の事を思い出していただけだが」
「はぁ、変な趣味ですね」
生徒会室では、今日もまた穏やかな月日が流れている。




