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出会い

 出会い

 それは、まだレインがミラリス魔法学校に入学して一ヶ月ばかりの頃だった。

 レインは、いつものように授業中、眠っていた。

 しかし彼はイビキを立てたりしない。    

 あくまで、周りに迷惑のかけないよう細心の注意を払って眠るのである。


「ほほほ。レインさん、起きて下さい」

 机に突っ伏したまま寝ているレインに声がかかる。

 この声はトール先生だろう。  

 レインは、まだ眠たい眼をこすりながら目を開いた。


「うん、トール先生、お早うございます」

 周りを見渡すと人が一人もいない。     

 クラスの皆は一体どうしたのだろうか。


「皆さん、次の授業の為に教室を移動しましたよ。レインさんも移動しないと」  

 なんと、皆、クラス移動をしていたのか。  

 それは自分も移動しないと欠席になる。

 早く移動しないと。   


「いやはや、教えて頂きありがとうございます」  

「しかし、レインさん、貴方は授業中、いつも眠っていますね」

「いや〜、すいません。そういう性分なもので」

「他の先生の時は、どうしているのですか」

「皆、もう半分諦めてますね」

「少しは起きないと、怒られますよ」

「肝に命じて起きます」

 実際、教師の中には、レインの授業態度を少し問題視している先生もいる。 

 レインは、なんとしても目立つ事は避けたい。

 そのためには授業が分かっていても多少は起きる必要がありそうだ。


「それに、この学校にはルビーさんもいますから、彼女に目をつけられたら大変ですよ」

 生徒会長、ルビー会長。彼女の事はレインも耳にした事があった。

 というよりミラリス魔法学校に居ながら彼女の事を耳にしないというのは不可能である。

 完全無欠の生徒会長で文武両道を体現したかのうような女性。

 レインは、彼女の事を警戒していた。

 別に嫌っている訳では無い。単に目立つ事を嫌うレインにとって彼女とお近づきになる事は目立つ事に繋がる。

 その事は、なんとしても避けたかった。


「そうですね。気を付けないと」

「ほほほ、彼女は良い人ですからね。一度会ってみるのも良いかもしれませんよ」

「辞めて下さいよ。噂によると、カツアゲしてた不良をボコボコにして全治二ヶ月にしたとか、聞いてます」

「ほほほ、それは噂に尾ひれが付きすぎです。彼女は優しい女性ですよ」

「本当ですか?」

「本当です」

 イマイチ怪しいが、今は怪しんでいる場合ではない。

 そろそろ次の授業に向かわないと。


「では、トール先生、僕は、これで」

「はい」

    

 ミラリス魔法学園の廊下を一人の女子生徒が歩いていた。

「きゃあ!」

 大変だ。彼女は廊下に落ちていたバナナの皮に滑って体勢を崩してしまった。

 このまま彼女が倒れれば、彼女は頭に大怪我を負ってしまう可能性がある。

 しかし、大丈夫だ。この学園には彼女がいる。


「大丈夫か?」

 ルビーは、素早く女子生徒の後ろに立ち彼女が倒れないように支える。

 女子生徒は倒れずに済んだ。

「あ、ありがとうございます。会長」 

「廊下は危ないからな、気をつけて歩いた方が良いぞ」

「はい!」   

 ルビーは、またもや生徒を救った。


 彼女は完全無欠の生徒会長ルビー会長である。

 彼女は自分の仕事に完璧を求めていた。

 ルビーは生徒会長に就任してからも完璧に仕事をこなし、生徒からの評価も勿論高い。

 しかし彼女は、その完璧さを周囲に求めたりはしない。

 あくまで完璧さとは、己自身に課すものであって他人は巻き込まない。

 それが彼女の信条であった。


 そんな完璧さを求めるルビー会長は自分の周りに役員を置いたりはしなかった。

 完璧に仕事をこなすには役員は不要。

 全部自分でやってしまえば良い。

 それが彼女の考え方であった。


 そんなルビーは今日も仕事をこなす為、生徒会室の扉を開く。 

 生徒会室の中にはハリス校長がいた。

「うううん。美味い。美味いぞ。このマルゲリータ、ミザーラのマルゲリータは、やはり素晴らしい」

 彼はマルゲリータに舌鼓をうっている。

「ハリス校長、お早うございます」

「あぁ、お早うルビー君。お邪魔しているよ」

 別に生徒会室は基本的に誰でも出入り自由である。

 ルビーは、いつものように自分の椅子に座った。


「ハリス校長、私に何か用ですか?」

「いやはや、君の働きぶりには大変感謝している。私達、教師陣も、かなり助かっているよ」

「それは、ありがとうございます」

「所でルビー君、君は役員を採用する気はないのかね?」

「役員ですか……」


 正直言って気乗りはしない。

 なにせルビーは仕事を一人でこなすのが好きだからだ。

「あまり無いですね。仕事は、私一人でこなせますし」

「そうか。でもルビー君、役員を採用する事は何も君の仕事を分担し楽になるだけではないよ」

「と、言いますと?」


「君がいざという時、助けてくれる。そんな素晴しい仲間を持つこと、それは君の人生において必要な事だと思うんだ」

「……なるほど」

 確かにハリス校長の言う通りかも知れない。

 自分は何も一人で生きて行くつもりはない。

 いざという時は助けになる人位は欲しいだろう。


「分かりました。少し役員の面接を行いたいと思います」

 ルビーは役員採用の面接を行う事にした。



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