特別ステージ
「よし、これで行けるぞ」
レインが魔法を放った事で、壁に穴が空いた。これで通れる。
レインは穴を通って外へと出た。
「バレーナフレアアクチュア」
しかしレインが穴を通った直後、テリーがバリア修復の呪文を唱える。
直ぐに穴は閉じてしまった。
「しまった。ジェシカ先輩とエイデンが、まだ中に居るのに……」
「レイン、先に急ぐのですわ!」
ジェシカがレインに声を張り上げる。
「ジェシカ先輩……」
「元々、私はルビーを放っておく訳には行かない。残るつもりでしたわ。ですから急いで」
「俺もやで、ネイサンの事、絶対に止めてや」
「……分かりました」
相手は、かなりの魔術の手練れ。
一筋縄では行かないだろう。
だが、あの三人なら、きっと大丈夫。
レインは皆を信じてネイサンを止める為、特別ステージへと走り出した。
特別ステージへと、たどり着いたレイン。
ステージ上では、ゴードンがスピーチを行っていた。
「今こそ、ゾロール人を、この国から追い出すのです! 彼らは皆、犯罪者で、この国のルールを守らない!」
ゴードンは耳を塞ぎたくなるようなスピーチを展開している。
「そうだ、そうだ!」
「美しいマッセール王国を取り戻すのよ〜」
それを一定数の国民が支持している。
本当に胸糞悪い事実だが、これも現実。
領域国民国家は、やはり人間にとって毒だ。
レインは、強く、そう思った。
「ネイサン、何処にいるんだ?」
スピーチの内容は気になるが、今はゴードンをネイサンから守らないと、戦争になる。
レインは周りを見回してネイサンを探す。
「いた!」
ネイサンは、ステージの端っこで、ゴードンのスピーチを聞いていた。
レインは、ネイサンを目掛けて走り出す。
「!」
ネイサンが、こちらに気付いた。
そしてステージ裏へと走り出した。
「待て、ネイサン」
レインもネイサンを追ってステージ裏へ。
ステージ裏は、広い野原になっており、現在、ゴードンがスピーチをしているからなのか、人がいない。
ネイサンは、何故、こんな場所に来たんだ?
「ネイサン、待て!」
レインが呼び止めるとネイサンは歩みを止めた。
「お前ケロな。俺の事を付け回しているのは」
「えぇ、そうです。ネイサン、今直ぐ操心の呪文を止めて下さい」
「嫌だケロ! この魔法を使って、俺はゾロール人を、この国から追い出すケロ!」
「何故、そのような真似をするのです! 僕達は助け合って生きるべきではないんですか?」
「ふん、ゾロール人は全員犯罪者で、この国のルール守らないケロ」
「そんなゾロール人は、極一部だけです。僕には、そんなゾロール人より貴方達の方が危険に思える」
「うるさいケロ! ゾロール人は、この国から全員、追い出すケロ。それが、この国の為ケロ!」
「ネイサン、貴方は領域国民国家に支配され過ぎている」
「領域国民国家?」
「人間は、国境などなくし、何処で暮らしても良いし、何処に行っても構わない。そう暮らすべきなんです」
「何を言っているケロ?」
「領域国民国家は人間の絶対に守らなければならない自由を奪っている。領域国民国家は無くさなくてはいけないんです」
「お、お前の言っている事は良く分からないケロ!」
「人間は領域国民国家なんて無くして人と人とで生きるべきなんです。国家で人間を決めるなんて間違っています」
「う、うるさいケロ。お前黙れケロ!」
「ネイサン、今からでも遅くはありません。領域国民国家の支配に打ち勝って下さい」
「うううう、うるさいケロ。俺は、俺は悪くないケロ。悪いのはゾロール人ケロ」
ネイサンの様子が可笑しい。
何かを始める気だ。
「ネイサン、僕の話を……」
「お前もゾロール人もまとめて殺してやるケロ。出でよ。スライム!」
ネイサンが、そう言うと空中から巨大なスライムが落ちて来た。
その色は紫で、スライムの中に赤い核のようなものがある。
その姿は、かなり巨大で、グリフォンが自家用車一台分なら、スライムは一棟のマンションといった感じだ。
「な、これは」
「魔法生物園から脱走させたスライムケロ。魔法で更に巨大化させてやったケロ」
スライムはゴロゴロと、うごめいている。
その頭上には、ルビーの父親らしき人物がいた。
「あれは、会長のお父さん」
「ふん、今は、俺の魔法で操られているケロ。このスライムを使い、ゴードンとお前を殺すケロ」
そんな事になれば、マッセール人とゾロール人の関係は悪化するばかり。
このスライム、なんとしても倒さないと。
「そんな事はさせない。レ・ライトフォルス!」
レインが呪文を唱えると杖から光線が放たれる。
そして、それはスライムを貫いた。
「くくく、無駄ケロ」
しかしスライムは無傷。穴を塞いで、元に戻ってしまった。
「く、駄目か」
昔、王宮で本を読んだ事があるがスライムは赤い核の部分を破壊しないと駄目らしい。
レインは、その事を思い出し、呪文を唱える。
「レ・ライトフォルス!」
再び、光線がスライムの、今度は赤い核の部分に向かって放たれる。しかし──。
スライムは赤い核を素早く動かし、レインの魔法を避けてしまった。
レインの光線は虚しくスライムの紫の部分を貫き、直ぐに再生させてしまう。
「く、速い」
どうやったら、あの核に魔法を当てられる?
レインは思考を巡らせた。




