捕まったのは
「は、ここは」
レインは目を覚ました。
天井には電球が輝き、彼はソファーに座らされている。
そしてレインの目の前には全身、グレーのスーツに包まれながら、やたらとツバが広い婦人帽子を被っている女性がいた。
「あら、目覚めたわね」
「ここは、どこです? 皆は、何処にいるんです?」
周りを見渡せば、婦人帽子こそ被っていないものの、スーツを着こなした大人達が机に向かいながら仕事をしていた。
一体、何処なんだ?
「先ず、最初の質問から、お答えするわ。ここは警視庁、魔法犯罪対策部。魔法捜査一課いわゆる警察組織よ」
「け、警察!?」
「えぇ、そうよ」
レインは、ここが警察と聞いて驚く、確かに、全員見た目が厳つい。
「二個目の質問だけど、貴方のお仲間ならべつの部署にいるわ。そこで話を聞いてるの」
「別の部署って、僕達は法に触れるような事は何も……」
「じゃあ、何故、あの男を付けていたの?」
「!」
「普通の高校生は、尾行なんてしないものよ。答えなさい。何故、あの男を尾行していたの?」
「……」
このまま黙っていても、レインは、この場所を脱出出来る事はないだろう。
レインは、これまでの経緯を大人しく話す事にした。
「……操心の呪文、まさか、貴方達みたいな高校生が、それを知っているなんて……」
刑事の女性は絶句したような表情を見せる。
確かに操心の呪文は、王家の人間と一部の人間にしか知られていない魔法である。
レインは王家の人間だから知っていた訳だが、どうやって説明したら良いだろうか。
「答えなさい。何故、貴方は操心の呪文を知っているの?」
うーん。どうやって説明したら良いだろうか?
「僕の本名は、レイン・ヴィシュタルト、ヴィシュタルト王家の人間です。だから操心の呪文を知っていました」
レインは取り敢えず正直に言ってみる事にした。
「は?」
女性の刑事が怪訝な顔つきになる。
「あのね。貴方、レイン様は死んだのよ。冗談も休み休み言いなさい」
うーん。やっぱりこうなるよな。
本当の事を言っても中々信用出来るものではないだろう。
エイデンとジェシカ、そしてルイスには王家の人間しか知らない魔法を見せる事で自分が王家の人間であると納得して貰った。
しかし、こんな場所で魔法を使う訳には行かない。
しょうがない。あの手で行くか。
「では、少し本気を出しますね」
レインは自分の魔力を解放する。
といっても魔法を放つ訳ではない。
レインが魔力を解放すると窓がガタガタと揺れ始め、机の上に置かれたマグカップが揺れ始める。
熟練の術者なら一発で手練れだと分かる、魔力をレインは解放した。
「……分かったわ。分かったから、それを止めなさい」
レインが魔力を少し解放した事により女性の刑事は理解したのか、やめるよう促す。
「これで僕が王家の人間だと分かってもらえましたか? あ、因みに、僕、兄から逃げている状態なので他言はしないで下さいね」
「貴方が手練れの魔術師だとは理解したわ。あれ程の魔力なら操心の呪文を知っていても可笑しくはないでしょう」
どうやら納得はしてくれたらしい。良かった。良かった。
女性の刑事は咳払いをして話を戻す。
「兎に角、あの男には近づかないのが身のためよ。刑事からの忠告ね」
「という事は、あの男は、やはり操心の呪文を使っていて、刑事さんは、捜査しているという事ですか?」
「……まぁ、バレてしまったものはしょうがないわね。その通りよ」
「分かりました。ありがとうございます。では、僕は、もう帰っても大丈夫ですか?」
「えぇ、帰りなさい」
女性刑事の許可が降りてレインは無事に帰る事が出来た。
「いや〜、昨日は大変でしたね」
生徒会室にて、無事に警察から解放されたレイン達は皆と合流を果たしていた。
「はぁ、結構息が詰まりましたわ」
「そうか。俺は楽しかったで」
ルビー達も昨日の事は正直に話す事で、警察に解放されたらしい。
皆が無事で本当に良かった。
「所でレイン、これからどうする?」
ルビーが問いかける。
確かに警察に忠告された以上、これ以上ネイサンに関わるのは、危険過ぎるだろう。
「うーん。ここは警察に任せた方が良いんじゃないですかね」
「え、もう捜査終わりかいな?」
「いや、素人の僕達が関わっても足手まといになる可能性があります。ちゃんと事件が解決するなら、それが一番じゃないですか」
「なるほど、確かにレインの言う通りだな」
「なんだか、私達、無駄足を踏んだ気分ですわね」
「いえ、警察が、ちゃんと動いてると分かっただけでも十分な収穫ですよ」
餅は餅屋。後は警察に任せよう。
「……お茶、用意しました」
レイン達はルイスの淹れた、お茶を飲む事にした。




