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カフェに行こう

「やはり、そうか」

「む、レイン、何か分かったのか?」

「やはり兄は操心の呪文を外に持ち出していました。ネイサンとかいう人物に渡してしまったみたいです」

「そうか。それは厄介だな、で、どうする?レイン」


「操心の呪文を、このまま放置している訳にはいきません。あの呪文には重大な欠陥があるんです」

「欠陥?」

「操心の呪文を使った術者は、いずれ五感を失います。恐らく兄はネイサンという人物に、この事を伝えていないはずです」

「五感を失う。それは恐ろしいですわね」

「えぇ、だから、この呪文は便利だけど、本来誰も使いたがらない呪文なんです。それを、こんな事に使って良いはずがありません。一刻も早く止めないと」

 しかし、どうやって止める。  

 情報はネイサンという名前の人物に魔法を手渡したという事だけだ。  

 それだけで本人を特定するのは大分厳しい。


「……ジェシカ様」

「うん?どうしたの、ルイス」

「……実は、先程、テレビに出ていた操られている男性、ジェシカ様のSNSをフォローしています」

「! ルイス、それは本当なの?」

「……えぇ、こちらを、ご覧ください」

 ルイスはスマホを取り出しジェシカのスイッターのフォロワー欄を見せた。 

 確かに、先程テレビに映っていた男性ハリソンがジェシカをフォローしている。

 ハリソンはアイコンを自分の顔にしているから、かなりわかりやすい。


「ほう、有名人やな。ジェシカ」

「まぁ、私はデリシャスフーズカンパニーの社長の娘ですからね」

「このハリソンをジェシカが、フォローしかえせば、色々とやり取りが出来るな」

「早速、やってみますわ」

「でも、この男、捕まっているんちゃうん?」

「いえ、テレビでは記憶が曖昧な事と、何らかの魔術をかけられた可能性があるとして、釈放されたと出てます」

「頼んだぞ。ジェシカ」

 ジェシカはハリソンをフォローし返して色々とDMで、やり取りをしてみる。


「む、返事が返ってきましたわ」

「なんて、返ってきたんや?」

「カフェで会って色々と、お話ししてくれるそうですわ」

「よし、全員で行くか」

 レイン達は、この操心の呪文で操られた可能性のある男に会う事にした。

 テレビでは報道が、流れている。


「え〜、昨晩、魔法生物動物園で、大型のスライムが脱走したもよう〜」

 自分達には関係ないと思いレインはテレビを消した。


「この近くのカフェで待ち合わせですわ〜」

 レイン達はSNSで待ち合わせをしたハリソンとの待ち合わせ場所に、たどり着く。


「ふむ、しかしカフェは三軒あるぞ。どのカフェだ」

 たどり着いた場所には三軒のカフェが横並びで建っていた。

 一体、どのカフェにハリソンが居るのだろう?

「入ってみれば分かるんちゃうん?」

 エイデンは、いそいそと一番左側のカフェに入って行った。

「あ、エイデン、ちょっと待って下さい」

 それを追いかけるように三人とも左側のカフェに入る。


「いらっしゃいませ〜」  

 レイン達は黒いエプロンをした店員に出迎えられる。

 カフェの中は木目調を基調としたお洒落なカフェで、丸いテーブルや椅子が置いてある。

 美味しそうなコーヒーの匂いを漂わせ、客は、そんなにいない。そんなカフェだった。

「あの〜、ここにハリソンという人はいらっしゃいませんでしたか?」

 ジェシカが店員に問いかけた。


「ハリソン? どういった方ですか?」

 流石の店員も一人一人把握はしてないらしい。

「いえ、自分達で探しますわ」

 確かに自分達で探した方が早そうだ。

 レイン達は店内を見渡す。


「うーん。ハリソンさんは居ませんね」

「別の店ちゃう?」

 レインは更に、店内の奥へと入って行く。


「お客様、何か、ご注文はございますか?」

「あぁ、僕達、ちょっと待ち合わせをしているだけなんです。大丈夫です」

 この店じゃなかったら、何か注文をしても無駄に時間を過ごすだけだ。

 レインは店員の接客を丁重に断る。


「はぁ、うちの商品を、お客様は、お気に召さない。そういう事なんですね」

「いえ、そういう訳じゃないですよ。ちょっと待ち合わせをしているだけなんで、別の人に聞いた方が良いですよって意味です」

 なんか引き下がってきたので、更に丁重に断るレイン。


「と、言いつつ商品がお気に召さなかった。そうでしょう?」

「違いますって! なんかネガティブだな。あなた」

「は、申し訳ございません。当店、ネガティブが売りのカフェでございまして」


「ネガティブが売りのカフェ? なんですか? それ」

「当店はネガティブカフェと言いまして、店員もお客様も兎に角、ネガティブなんです」 

「いや、聞いても分かりませんが……」

「はぁ、申し訳ございません。私の説明ゴミですよね。お客様のお耳を汚してしまって申し訳ございません」

「いや、確かにネガティブだな! なんか分かって来たぞ」 

 ネガティブカフェとは初めて聞く。

 そんな店、儲かるのだろうか?


「お客様、当店のメニューだけでも説明して良いでしょうか?」

「いや、まぁ、それくらいは良いですけど……」

「こちら、飲んだら死にたくなるコーヒーでございます」

「いや、誰が頼むんだよ!」


「こちら、ゴミみたいな店員が作ったゴミチーズケーキでございます」

「食べ物にゴミとか使っちゃ駄目ですよ!」

「こちら首吊り用の縄で、作ったプリンでございます」

「プリンに縄、要らなくない? 後、度を越してネガティブだな!」

 どうやら、このカフェは本当にネガティブらしい。

 このままでは自分もネガティブになりそうだ。


「店員さん。この死にたくなるコーヒーを下さい」

 客の一人が店員に注文している。

「はぁ〜、客から注文が入った。でも本当に注文が入ったのかしら。きっと私を傷つける為に嘘の注文をしたのじゃないかしら。じゃあ傷つかない為に、品物は作らないようにしないと〜」

「いや、作れよ! お客さん、困るでしょ!」

「はぁ〜、僕みたいな、クソ客が商品を注文するなんて、おこがましいかな。やっぱりキャンセルしよう」

「お客さん、あんたもか!」


 恐るべしネガティブカフェ。

 こんな所早く出ないと。


「あぁ〜、お客様、やっぱりお気に召しませんかったか。でしたら謝ります〜」

「いえ、大丈夫です。さようなら〜」

 レインは急いで店を出る事にした。


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