マッセール王国の状況
放課後。ほとんどの授業を寝ていたレインは生徒会室の扉を叩き中へと入った。
ミラリス魔法学校の生徒会室は、結構豪華だ。
ソファーやテレビを完備しているし、戸棚には分厚い本がたくさん置かれいている。
その最奥。最も豪華な机の上で書類仕事をしているのは、完璧超人ルビー生徒会長。
彼女が仕事をしている様は、まるで絵画のように美しかった。
「おはようございます、ルビー生徒会長」
「いや、もう放課後だぞ。君は何をしていたんだ……」
レインは寝ても寝たりないといった様子で自分用の椅子に座り、机で居眠りを始める。
「また、居眠りか。君の授業中の態度は私の耳にも入っているぞ。少しはやる気を出したらどうなんだ?」
「だって、この生徒会、会長が全てやってしまうから、やること無いじゃないですか?」
ルビーは完璧超人で生徒会の仕事は全て一人で彼女が、こなしてしまう。
故に、この生徒会にはルビーとレインしか役員は居ない。といっても彼女は無理をしている訳では無い。
一人で仕事をこなした方が完璧に出来るし、彼女は周りの手伝いを必要としていなかった。
「何か、手伝える事はありますか?」
「いや、書類仕事は、もう終わる。まぁ、読書でもしていてくれ」
レインも無理やり生徒会に入れられたとはいえ、女性一人に仕事を任せるのは気が引ける。
なので、何度も手伝いを申し出たが彼女は断り続けていた。
この一人で仕事をこなすというやり方は彼女の希望なのだった。
「じゃあ、お言葉に甘えて寝まーす」
という事でレインは寝る事にした。
レインは自分の仕事で居眠りを開始して数十分後。おもむろに彼が目を開けると、視線の先に自分のスマホを弄っているルビーの姿が目に入った。
「あれ? 会長、書類仕事は終わったんですか?」
「ん? とっくに終わったよ。今はニュースを見ている」
机の上にはとてつもない量の書類があったはず。
それを一人で、こなすのは。やはりルビー生徒会長は超人だ。
「何か良いニュースありましたか?」
「いや、国王が増税を発表した」
国王が増税を発表。そのニュースにレインは顔をしかめる。
「またですか……」
「国民の生活は苦しいのに、国王は何を考えているんだ?」
「さぁ? 何を考えているんでしょうね?」
「それに献金疑惑の証拠も出揃っているらしい。国民には増税を強いるわりに、自分達の私腹は肥やしている。本当に嫌になるよ」
「……」
マッセール王国は現在の国王が就任してから、経済も何もかも右肩下がりだ。
それでも国王は自分の政策は間違っていたと認めない。
現在も国力は低下し続けている。マッセール王国は危機的状況に陥っていた。
「済まない。少し暗い話をしたな」
「いえ……」
ルビーは椅子から立ち上がり、制服をただした。
「レイン、少し手伝ってくれ」
珍しい、ルビー生徒会長が頼み事だ。
「良いですけど、何をするんです?」
「先生から頼まれていいてな。廊下の電球を変えてほしいとの事なんだ」
レインとルビー、二人は校舎の電球が切れている廊下へとやってきた。
レインは切れている電球の真下に持ってきた脚立を置く。
「なんで、僕たちが、こんな仕事をするんです? 用務員の仕事じゃないんですか?」
「どうやら用務員さんも忙しいらしくてな。手の空いている私達に回ってきたんだ」
そう言ってルビーは電球を持ったまま脚立を昇ろうとする。
「ワワワ、会長、スカートなのに大丈夫なんですか?」
「ん? 下にちゃんと短パンを履いているぞ」
短パンを履いているから大丈夫らしく、ルビーはスイスイ脚立をのぼり、電球を変え始めた。
「脚立が倒れないように見張っていてくれ」
脚立が倒れてはルビー生徒会長が怪我をしてしまう。
レインは脚立が倒れないよう周りを見張る。
とはいえ、ここは学校の廊下。
脚立が倒れるような騒ぎなんて、そうそうおきな……
「どすこい~、相撲部っす」
レインの視線の先。十数人くらいの相撲部が集団で、こちらに向かってきている。
彼らはバイソンの群れのように、こちらに猛突進していた。
不味い! この相撲部が脚立にぶつかったら、一大事だ。
「お前ら、柱っぽいものがあったら、ちゃんと突っ張りしろよー」
「どすこいー!」
しかも部長が柱っぽいものがあったら突っ張りしろよと部員達に指示を出している。
これは不味い。不味いぞ。
ルビー会長は電球を変える事に夢中で、この危機的事態に気づいていない様子だ。
(ここは僕がなんとかしないと)
レインは杖を構えた。
「フローラルペア(床よ、凍れ)」
レインが呪文を唱えると、相撲部の走っている廊下の床が凍り始めた。
「ううう、どすこいー?」
「なんだ、これはどすこいー?」
床が凍り、相撲部はツルツルと滑っていく。
もはや立てなくなった相撲部は恐ろしくはない。
そのまま脚立を通り過ぎていった、
「ふー、危なかった」
レインは額の汗を拭う。
ここは学校の廊下。もう脚立を倒れさすようなトラブルなんて起きないはず。
レインが安心した。その時だった。




