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犯人を追いかけて

「うーん。中々居ませんね。画鋲落とし」

 レインは頼んだフライドポテトを摘みながら、画鋲落としが見つから無い事を嘆く。

 この店に来てから一時間が経過したが画鋲落としらしき人物は勿論居ない。

 まぁ、一時間しか見張っていないといえばそうなのだが。


「まだ、ここに来て一時間だぞ。そう簡単には見つから無いだろう」

「まぁ、そうなんですけどね」

 ルビーは、イチゴパフェを堪能している。


「美味いで、美味いで、このハンバーグ、美味いで」

 レインの横にいるエイデンはチーズinハンバーグを食べながら美味いを連呼していた。

「いや、エイデン、出来れば、どう美味いのか表現してくれますか?」

「超美味いねん。兎に角、美味いで。このハンバーグ」

「どうやら、貴方に食レポは難しいみたいですね」

 画鋲落としは何処にいるのだろうか。レインが、そう思った、その時だった。


「きゃ〜! 何、この画鋲〜」

 入り口の方で女性客が悲鳴を上げている。

 その悲鳴はレイン達の耳に入り、彼らは直ぐ様に席を立った。

「大丈夫ですか?」

「えぇ、大丈夫ですけど……」

 女性客は画鋲にいち早く、気付いたらしく怪我は無い。

 床一面には大量の画鋲がバラまかれていた。


「これは……」

「あぁ間違いない。画鋲落としだ」

「犯人、まだ近くにいるんちゃう?」

 エイデンの言う通り、店内を、じっと見張っていた以上、犯人は、まだ近くにいる。


「行きましょう。会長」

「あぁ」

 レインとルビーはいち早く、ドリームスの店を飛び出した。

「会長は左を、僕は右に行きます」

 幸いな事にドリームスの店は左右にしか道は伸びておらず、二手に分かれれば、必ず犯人に当たるはず。

 二人は、二手に分かれダッシュで犯人を追跡した。


「くそっ、何処だ、犯人」

 レインは店を出て、右側の道を全力疾走。

 地図によると、この道を真っ直ぐ五百メートル進んだ先に交差点。

 交差点まで進むと、犯人が何処に進んだのか分からなくなる。

 その前に捕まえないと。

 交差点まで五百メートルあるのだから、きっと捕まえる事は出来るはず。しかし──。


「な、居ない……」

 レインは交差点まで来てしまった。

 交差点から先は道が複雑に入り組んでいて、追いかけるのは不可能だ。

 という事は、後はルビーが追いかけた道に犯人が行っている事を祈るしかないという事になる。


「うーん。会長の方の道に進んだのかな?」

 レインはとりあえず、踵を返して戻る事にした。

「誰も居ないよな、この道……」

 レインは戻りがてら、一応、道に人が居ないか確認する。

「ん!」

 レインの帰り道に人が一人いる。 

 その人物は道の端に設置されているベンチに座りながら新聞を読んでいた。

 もしや、あの男が画鋲落としの犯人?

 犯人にしては、いささか堂々としすぎだが、レインは一応、声をかける事にした。


「あの〜、すいません。ちょっと良いですか?

」   

「なんだい?」

「さっきまで、あそこのドリームスという店舗に居ませんでしたか?」

「行ってないね〜」  

「そうですか。あの、一応、店員さんとか、ここに呼んで確認しても良いですか?」

「あぁ、別に構わないよ」

 男は新聞を読んだまま、その場を一歩も動こうとはしなかった。

 この男が画鋲落としだった場合、この場からは一刻早く逃げたいだろう。

 この男ではないのかな?


「うーん。この人は見覚え無いですね〜」 

 エイデンに連絡し店員さんを呼んで貰った。

 残念ながら、この男の事は見覚えが無いらしい。

 という事は、この男は限り無く白という事になる。


「すいません。お手数をおかけしました」

「いやいや、それより少年、私が何故、この場で新聞を読んでいるか、分かるかい?」

「え、なんでです?」 

 男は、レインの目の前で、ずっと新聞を読んでいる。

 一体、何故?

「それはね、君達のような若者に尊敬されたいからだ」

「はぁ?」

「新聞を読んでいると、なんだか大人っぽいだろう? 私はね、新聞を読み、君達のような若者に尊敬されたい。さぁ、尊敬して良いんだよ!」 


「今時、新聞読んでるからって尊敬する若者、いませんよ」

 今時、珍しい、新聞を読んでいるからって尊敬されると思っている大人。  

 この人、ただの変人だな。

「と、言いつつ尊敬したいんだろう? さぁ、尊敬したまえ! テレビ欄を見ている私を尊敬したまえ!」


「だから無理ですって! しかもテレビ欄かよ!」  

 若者に尊敬されたいが為だけに新聞を読んでいる男は、放っておくとして。

 会長の方は、どうなっただろう? 

 気になったレインはエイデンと一緒にドリームスの店舗に戻る事にした。


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