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クレーム

「どうなっとるんだ、この店は〜!」

 お客の一人が店員を呼び出しクレームを入れている。 

 ドリームスはお客様の満足度百%の店でクレームも少ないらしい。

 そんな中、クレームを入れる人が居るなんて。


「も、申し訳ございません! お客様」

 クレームを入れるお客に店員がペコペコと謝罪をしている。

 一体、どんなクレームが入ったのだろうか?


「この店、ご飯を食べたら満腹になったぞ。どうなっとるんだ!」

 あ、これ客が悪い奴だ。

「この店、美味しくて、ご飯を食べたら満腹になってしまったではないか。どう責任取ってくれる!」

 いや、食べたら満腹になるのは当然だろう。

 お客は店員に完全なイチャモンをつけている。


「も、申し訳ございません。申し訳ございません」

 それに対して平謝りをするしか無い店員。

 店員が不憫でならない。

「ちょっと、宜しいですかな?」

 紳士風の男が店員と客に割って入って来た。

「な、なんだ。貴様は!」

「お客様、当店はファミリーレストラン、お食事をすれば、満腹になるのは当然の事でございます」

 おぉ〜、紳士風の男が正論を言っている。

 頑張れ紳士風の男。


「うるさい! 俺はむしゃくしゃしてるんだ。俺は客だぞ!」

「お客様、私達、ドリームスの店員は、お客様の奴隷ではありません。もし気に入らないのなら、お引き取り願いますか?」

 紳士風の男は、クレーマーに俄然として対応している。

 良いぞ。紳士風の男。


「く、くそぉー、覚えてやがれー」

 紳士風の男に、正論を言われてクレーマーは引き下がるしか無かったらしい。 

 捨て台詞を言って金を払って店を出て行った。

「あ、ありがとうございます!」

「いえいえ、私の方こそ。客なのに出しゃばった真似をして申し訳ない」

 どうやら紳士風の男は、この店の客らしい。

 クレーム処理を終えると、そのままテーブルへと戻った。


「お、お客様、それは無理でございます」

 また別のテーブルで問題発生。

 今度はなんだ?

「え〜、これ、無理なの〜、なんとかならないの〜?」

「お客様、当店ではそのようなサービスはやっては居ません」

 どうやら、別のテーブルでは客が何か無理な注文をしたらしい。

 一体、どんな注文をしたんだ?


「パスタ、茹でないで出してよ〜、ミートソースをかけるだけで良いからさ〜」

 それは無理な注文だろ!

 どうやら、客の方はパスタを茹でないで欲しいという謎の注文をしているらしい。 

 不味いだろ。普通に。


「お、お客様、困ります」

「お願いだよ。パスタ、茹でないで出してよ〜」

 お客の無理な注文に店員が困り果てている。「お客様、ちょっと宜しいですか?」

 そこに現れたのは、再び、紳士風の男。


「あんた、誰〜」

「お客様、当店は衛生上の問題もありますので、パスタを茹でないでお出しする事は出来ないんです」

 またもや正論を言う紳士風の男。

「う、うるさい。俺は客だぞ。良いからパスタは茹でないで出せ!」

 声を荒げて、意地でもパスタを茹でないで出させようとする客。

「お客様、落ち着いて下さい」

 それでも一歩も引こうとしない紳士風の男。

「お客様、ドリームスの店員は、お客様の奴隷ではありません。もし気に入らないのなら、お引き取り願いますか?」

 そして伝家の宝刀、『お引き取り願いますか?』を抜く。

「く、くそっー、覚えてやがれー」

 客の方は、この言葉で諦めたのか、金を払い去って行った。

「あ、ありがとうございます!」


「いえいえ、こちらの方こそ。出しゃばった真似をして申し訳ない」

 驕り高ぶらず紳士風の男は再び席に着いた。

 かっこいいな、紳士風の男。


「え〜、嘘だ。アプリのポイント、貯まったんだよ〜」

 今度はレジの方で何やら揉めている。

 一体、何で揉めているんだろう?

「お客様、それは当店のアプリではありません。マッサージ店のアプリでございます」

 どうやら今度は、客が別の店のアプリを出して揉めているらしい。

「でも、アプリのポイント貯まったんだから、マッサージ一回無料でしょう?」

「ですから、それは当店では無く、マッサージ店に言って下さい」

「え〜、お願いだよ。マッサージしてよ〜」

 客の方はマッサージをして欲しいと言って引き下がらない様子。

 これはなんとかしないと。


「お客様、ちょっと宜しいでしょうか?」

 そこに現れたのは、三度紳士風の男。

「な、なんだ、お前は?」

「お客様、当店はマッサージなどのサービスはやってはおりません。そう言った事はマッサージ店に言って下さい」

 そして、また正論を言う。


「う、うるさい! 俺は客だぞ。マッサージを要求して何が悪い!」

 またもや、客は引き下がろうとしない。

「お客様、ドリームスの店員は、お客様の奴隷ではありません。気に入らないのであれば、お引き取り願いますか?」

 出た〜! 伝家の宝刀、『お引き取り願いますか?』

「く、くそっー、覚えてやがれー」

 これを言われたら、客は引き下がるしか無い。

 金を払い、店を出て行った。


「あ、ありがとうございます。お客様」

「いえいえ、こちらこそ、出しゃばった真似をしてしまい申し訳ない」

 最後まで、紳士風の男は謙虚だった。

「それじゃ、私は、これで」

 そして、颯爽と店を出て行く。


「お客様〜、お支払いを済ませて下さい!」

 どうやら彼は食い逃げ犯の常習だったらしい。

 紳士風の男は警察に捕まった。



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