社長令嬢の野望
ジェシカ・ローズは社長令嬢である。
彼女の父親が経営する会社、『デリシャスフーズカンパニー』はファミレス界の革命であった。
その味は、ファミレスを越え、高級フレンチレストランを越えたと言われる程の美味であり、家族連れや、名だたる美食家、モシュハンガイドの審査員さえも唸るほどと言われている。
「へー、そんな有名人なんですか。ジェシカ先輩」
「レイン。一個上とはいえ、君はもう少し生徒に関心を持った方が良いぞ……」
突如現れた社長令嬢ジェシカ・ローズの説明をルビーから受けるレイン。
「ふふふ。私、まだ社長令嬢ですが、ゆくゆくは父の会社を継ぐつもりですわ」
「で、その将来の女社長が何故、僕の夢に協力してくれるんです?」
「ふふふ、良くぞ。聞いて下さいましたわ。ルイス、セットなさい!」
ジェシカに言われ、ルイスがプロジェクターをセットする。
生徒会室の壁一面に映像が写し出された。
その映像には、可愛らしい赤ちゃんが映っている。
「あぁ〜、これは私の赤ちゃんの頃の映像じゃないですか、そんなものを映せと命じた訳ではありません!」
どうやら赤ちゃんの映像は本題とは関係ないらしい。
プロジェクターが作動し、映像が移り変わった。
そこにはマッセール王国の地図が描かれている。
「ありがたい事に私達、デリシャスフーズカンパニーの経営するファミリーレストランは全国に四千を越え、マッセール王国のトップ、名前を知らない者は居ないと言われていますわ」
今度は世界地図へと映像が移り変わった。
「しかし! 私達の目標は、こんなものではございません。ゆくゆくはデリシャスフーズカンパニーは世界進出し、世界中のファミリーレストランの中でトップを目指すつもりですわ」
「せ、世界一」
「そ、壮大な目標ですね」
「デリシャスフーズの味を世界中にお届けする。それが、ジェシカ・ローズ、そして従業員一同の願い。分かって頂けましたかしら」
そこで映像は終わった。
ルイスが電気を付け、生徒会室に明かりが灯る。
「な、なるほど、ジェシカ先輩は、世界でトップのファミリーレストランを目指しているんですね」
「そうなんです。しかし、それには一つ大きな障害がございますの」
「? なんです」
「国境ですわ。領域国民国家のせいで、商売をするにもパスポートやらビザやら色々なお金と時間が取られて、私とスタッフは大変な目にあっていますの」
「まぁ、国によっては永住ビザ、凄いお金がいるらしいですからね」
「そうなのです! ただ商売をしたいだけなのに、こんなにもお金と時間が取られるのは可笑しい! それなら、いっその事、領域国民国家なんて無くしてしまえ。そう思った次第ですわ」
「な、なるほど……」
「貴方、レインと申しましたわね?」
「は、はい」
「さっきも言いましたけど、貴方の夢に私も協力させて貰えないかしら?」
「す、凄い。ジェシカ先輩、魔法の実技も筆記も素晴しい成績を修めているじゃないですか」
レインはルビー会長に言って、タブレットを使い、ジェシカの成績を確認する。
彼女の成績はオール五全てにおいてトップクラスの成績を収めており、学年順位のトップ十に入っている。
ちなみにルイスの方は魔法は、あまり使えず、あくまでジェシカの手伝いをするメイドと言った感じだ。
「当然ですわ。私はゆくゆく、デリシャスフーズカンパニーのトップに立つ女。この学校の成績位、良いものを修めるのは当然ですの」
この成績とレインの夢に協力してくれるという心意気。
彼女を仲間に入れても大丈夫じゃないだろうか。
「で、私を仲間には入れて下さるの?」
「はい。では、宜しく、お願いします」
レインはジェシカを仲間に入れる事にした。
「おぉ、仲間が増えたで。めでたいな〜」
「オホホ。私の実力があれば当然ですわ」
ジェシカは笑いを浮かべている。
「……!」
一方のルイスはスマホをいじり、何かに気付いた様子。
「……ジェシカ」
そして、ジェシカに、そっと耳打ちした。
「なるほど、直ぐに向かいますわ」
「うん? どうかしたのか? ジェシカ」
ルビーが問いかける。
「いや、仲間に入れてもらって直ぐで悪いのですけど、私やる事が出来ましたの」
「やる事? なんや?」
「実は、今、私達は画鋲落としの犯人を探しておりますの」
「画鋲落とし?」
「画鋲落としは、私達の新しく出来た店で大量の画鋲を落としていく。悪い奴ですわ」
「そういえば、少しニュースでやってたな」
そうなんだ。知らなかった。
「大量の画鋲を落としていくから従業員もお客様も大変迷惑しておりますわ。私は、なんとしても、その犯人を捕まえたいんですの」
「と、いう事は、今の連絡は何か犯人に繋がる手がかりが出て来たという事か?」
「いえ、また画鋲落としの犯人が出たという知らせだけですわ。でも私、その店を確認したいんですの」
ジェシカは生徒会室の扉を開けた。
「と、いう訳で、暫く私は留守になる予定ですから、何かあっても協力は出来ませんわ。それでは、皆さん。ごきげんよう〜」
そして嵐のように去って行った。




