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捕まったアンドリュー

「待ってろよ。今、助けるで!」

 エイデンは、廊下を『廊下を走らないで』という張り紙を無視して全力疾走していた。

 目的は、校長室へ向かう事。

 彼の頭の中は今、アンドリューの事で一杯だった。


「アンドリューは、校長に呼び出される事なんてしてへん! 何かの間違いや」

 アンドリューは至って真面目な生徒である。

 問題も起こさず、先生からの評判も良い。

 そんな彼が校長室に呼び出されるなんて何かの間違いである。

 ここは彼の友人である自分が一肌脱がないと。

 そう決心し、エイデンは校長室の扉を叩いた。


「邪魔するで! 校長。アンドリューを呼び出したって何かの間違いや……ろ?」

 校長室は異様な緊張感に包まれている。  

 何故なら、その場には、ハリス校長と呼び出されたアンドリュー。

 それだけではない、警察が数名立ち合っていたからだ。

「やぁ、エイデン君。来ると思っていたよ」 

「校長、これは、どういう事や? なんで、校長室に警察が居るんや?」

「……まぁ、ちょっと訳ありでね」


「訳ありって、なんや! これやとアンドリューか何かしたみたいやないか!」

 この状況、ハリス校長がアンドリューを警察に明け渡そうとしている状況に見えなくもない。

 アンドリューは悪い奴ではない、むしろ良い奴だ。

 そんなアンドリューが警察の世話になる事なんて……


「……エイデン君、君は開示請求という言葉は分かるかい?」

「開示請求? なんや、それ?」

「アンドリュー君、彼はSNSに悪口を書いてしまったんだよ。それで相手方から訴えられてしまっている」

「SNSに悪口を書いた? そんなんで警察に捕まってしまうんかい?」

「悪質な場合は罰金などが発生する。彼は、そのパターンに当てはまる」

 そしてハリス校長は、一旦間を置いて会話を続ける。


「アンドリュー君は、ゾロール人に対して差別ととれる発言をしてしまっていた。ゾロール人は人間じゃないの。害虫だから追い出せだの。その書き込みの内容は相当酷かったらしい」

「……」

「その事をゾロール人の作家にたしなめられた。その時にネット上で口論になってね。相手方に殺害予告までしてしまったらしい」

「……そんな……」

 アンドリューが殺害予告? そんな馬鹿な……。


「今、警察に事情聴取をしてもらっている所なんだよ」

「そんな……殺害予告なんて、嘘やろアンドリュー?」  

 アンドリューは沈黙を貫いている。

 しかしエイデンから目を逸らしたまま、合わせようとはしてくれない。

 なんとなく肯定しているようにおもえた。


「では、私達は、これで」

「えぇ、ありがとうございます」

 ハリス校長に促され、警察達が退室する。

「エイデン君、アンドリュー君と話をして下さい」

「……」

「彼に今、必要なのは友人の言葉です。頼みましたよ」


「なぁ、アンドリュー、なんで、そんな事をしてしまったんや?」

 エイデンとアンドリュー。校長室から退室した二人は廊下を歩いている。

「殺害予告なんて、SNSでしたらアカン。そんなの俺でも分かるで」

「……」 

 アンドリューは沈黙を貫いている。


「なぁ、アンドリュー、なんか喋ってや」

「……ストレスが溜まってたんだよ」

「ストレスって、どんなにストレスが溜まってても、やって良い事と悪い事が……」

「うるさいな!」

 突然、大声を上げるアンドリュー。


「アンドリュー、どうしたんや?」

「俺は、ストレスが溜まってたんだ。だから、ゾロール人をネットで叩いてた。なんか文句あんのかよ!」

「いや、アンドリュー、落ち着いてや」

「こんな状況で落ち着いてられるか! 俺は親になんて説明したら良い? 退学だって確実だぞ?」

「そ、そんな事言われてもやな」

 アンドリューの豹変。エイデンは困惑するばかりだった。


「くそっ、クソッ。ゾロールが悪いんだ! あいつらさえ居なければ、居なければ!」

「アンドリュー、それは違うで」

 エイデンはアンドリューをなんとか宥めようとするが、あまり効果が無い。


「悪口を書いた、お前が悪いんや。先ずは、その事を認めないと……」

「うるさいっ! 俺に指図するな!」

「アンドリュー……」


「そうだ。エイデン、お前、ハリス校長の弱みを握ってこい」

「はぁ、なんや急に?」

「何でも良いからハリス校長の弱みを握れば、俺は退学くらいは免れかも知れないだろう?」

「アンドリュー、お前何を言っているか。自分で分かってるんか?」

「俺は本気さ。エイデン、お前がハリス校長の弱みを握ってこなければ、俺はお前がテストをカンニングしようとしていた事をバラしてやる!」

「アンドリュー……もう、むちゃくちゃやで……」

 追い詰められたアンドリューは、エイデンにハリス校長の弱みを握るよう命令して来た。

 出来なければ、テストのカンニングをバラされる。つまり二人共退学となる。


「良いか! エイデン、ハリス校長の弱みを握るんだ! じゃないとお前も退学だからな!」

「アンドリュー……」


 その後、エイデンは一晩中、アンドリューの事を考えた。

 アンドリューのやった事は、勿論悪い事。  しかし、彼の事を見捨てられずにいる。

 彼に協力しないと自分も退学。

 だからといって協力する訳には……。


「ううう。どうしたらええんや……」

 ベッドの中でエイデンは、悩みに悩んでいた。



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