ハリス校長
ミラリス魔法学校の昼食時は、様々な学年の学生で、ごった返している。
レインは本来は、人混みは苦手な方だが、弁当を作る気も起きないので毎回、この食堂を利用していた。
ここのオスオスはなんといってもチキンカレー。
その味わいはカレー専門店にも負けず劣らずと言われていた。
レインはチキンカレーを食堂のおばちゃんから受け取り席に着く。
そしてチキンカレーを口へと運んだ。
「うん。相変わらず上手いな」
その専門店にも負けないカレーに舌鼓を打つレイン。
「しかし、エイデン。どうなるんだろう?」
彼はカレーを食べながらエイデンの事を考える。
このまま行くと彼は補習用のテストで赤点を取り最悪退学となってしまう。
出来る事なら、それを防ぎたいのだが。
「でも、まぁ、こればかりは本人の問題だからな〜」
そんな事を考えながらカレーを口へと運ぶレイン。
「美味い! 美味過ぎる。なんだ、この美味いカレーは〜」
彼の耳に「カレーが美味い」と高らかに宣言する声が耳に入った。
確かに、このカレーは美味いけど、そこまで大声で宣言する事か?
声が気になったレインが、声のする方へと視線を移す。
「このカレーは美味過ぎる! シェフを呼んでくれないか?」
「ハリス校長、もう十回目になりますよ。この食堂のシェフを呼ぶの。何回呼ぶつもりですか……」
なんと、その声がした方にはミラリス魔法学校、校長、ハリス校長がいた。
彼はカレーが気に入りシェフを呼ぼうとした所を副校長にたしなめられている。
「ハリス校長じゃないですか!」
レインとハリス校長は入学試験の時に出会った、顔見知りである。
レインは思わず声をかけた。
「おや? その声は、レイン君じゃないですか?」
「お久しぶりです」
「いやはや、久しぶりだね〜」
「校長も食堂で、ご飯ですか?」
「勿論だとも、このチキンカレーの美味さに舌鼓をうっていた所だよ」
「相変わらず、ご飯が好きなんですね」
「食は、私が魔法以外に極めたい道の一つだからね。このチキンカレーは絶品だよ」
そう言ってハリス校長は、また一口カレーを自分の口へと運んだ。
「うーん。素晴しい! このカレーは絶品だ! シェフを呼んでくれないか?」
「校長! 何度シェフを呼ぶつもりですか? 食堂のおばちゃんしか来ませんよ!」
相変わらずの様子のハリス校長。
レインも自分の食事を終える為、カレーを口へと運ぶ。
「あぁ、そうだ。レイン君。君は今、エイデン君の補習に携わっているんだよね?」
「はい。そうですけど、それがどうかしたんです?」
「いや、彼の事は見守っていて欲しい」
「はい?」
「どうやら、私の勘では、彼は、ゆくゆく、大きなトラブルに巻き込まれる」
「大きなトラブル?」
「あぁ私の勘が外れれば、それに越した事はないんだが、ちょっと事件が、事件だからね」
「?」
「まぁ、私としては生徒達が幸福になってくれるのを願うばかりだ。頼んだよ。レイン君」
そう言ってハリス校長は再び、彼を食べ始めた。
エイデンが大きなトラブルに巻き込まれる? 一体、なんだろう?
翌日、いつも通り登校しているレイン。
しかし、昨日の校長が言っていた事が気になる。
トラブルとは一体なんだろう?
「まぁ、あまり考えていても仕方ないか……」
そう思い歩を進めるレイン。
「おい、猫、うぇ~い」
大変だ。レインの視線の先で高校生らしい男が猫をイジメている。
猫を助けないと。そう思ったレインは、猫をイジメている男に声をかける。
「おい! お前……」
「アカンで!」
それより前に響くエイデンの声。
男が彼の方を向いた。
「あぁん! お前なんだよ?」
「お前ら猫イジメてたやろ。アカンぞ!」
「あぁん! 俺は自分より小さくて弱い奴をイジメるのが大好きなんだよ!」
最低過ぎる。
「そんなのは許さへん!」
エイデンは杖を構えた。
「ほう、魔法勝負か。いいぜ。これでも俺は隣町の学校一位の実力……」
「レ・サンダボルト!(雷よ、放て!)」
「ぎゃあああ!」
素早く放ったエイデンの雷魔法。
それをもろにくらい、男は悲鳴を上げた。
「む、まだやるか?」
「ひ、ひぃ、もう猫はイジメねぇ! だから助けてくれ〜」
そう言って男は足早に去って行った。
「おぉ、よしよし。もう大丈夫やからな〜」
エイデンは男にイジメられていた猫を撫でて声をかける。
「エイデン、さっきの魔法、見事でしたね」
「お、レインやないか。お早う」
エイデンはレインに杖を見せた。
「俺は昔から雷魔法が得意なんや。この魔法なら誰でも負けへんで」
「なるほど」
レインから見てもエイデンの実力は確かなものだった。
そして何より、その魔法を自分より弱い者を助ける為に使っている。
エイデン、悪い奴じゃないんだよな〜。




